学生
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「セブルス!!!大丈夫?!ごめんなさい!!」
「どうしました?!」
先生が慌てた様子で僕達に走り寄ってきた。
「私がセブルスの足を踏んでしまって…医務室に連れて行きます!」
「…先輩…大丈夫です。ほんとに気にしないで…っ…」
僕は足首を押さえて辛そうな顔をする。
「ほんとにごめんね。ほら、立てる?
先生、お騒がせしてすいません!練習を続けてください。」
名無し先輩は申し訳なさそうな顔でそう言うと、僕の肩を抱いて歩き出した。
僕も大げさに足を引きずるように前に進む。
途中背後から呼び止められないかとハラハラしたが、無事教室のドアが閉まった。
「……。」
「……。」
僕らは顔を見合わせると猛ダッシュで廊下を駆け抜けた。
目指すは校舎の裏。
誰も来ない寂れた噴水の庭。
最近シリウス・ブラックから逃げていた先輩が偶然見つけた場所だ。
庭のアーチに花はなく、今日も緑色の蔦が荒れ放題に巻き付いている。
噴水はもちろん枯れていて水は一滴も出ていない。
朽ちたベンチが二つ。
ご丁寧に一つは真ん中に穴が開いている。
僕らはもう一つかろうじて無事なほうのベンチに座って息を整えた。
「…あはははは!」
「…ふふ…」
「セブルス、君演技がうまいね!」
「…先輩は少し大げさすぎたのでは?
バレそうで冷や冷やしました。」
何を?!と先輩が肘で僕をつつく。
「はぁ…無事に抜け出せて助かった助かった!
終わる時間までだいぶあるからここで昼寝でもしましょ。」
名無し先輩が僕の肩に頭を乗せてくる。
先輩の甘い香りにびっくりして僕は思わず体を左にずらした。
「リリーだったら喜んで肩貸すくせにぃ!」
ずるっとずっこけた先輩が笑いながら僕に文句を言う。
慌てて僕は話題を変える。
「どうしてサボったんですか?」
「君が嫌そうな顔してたから!」
「はぁ?!僕の為ですか?!」
先輩はちょっと困った顔をした後、ぼそっと僕に呟く。
「……。あー…私…ダンス無理……」
何でもそつなくこなす名無し先輩にも苦手なものがあるのか。
僕はびっくりして先輩の顔を見る。
「……盆踊りしかしたことない……」
「盆踊り?何ですか?それ。」
「日本の祭りの踊りよ!知らない?!」
「知りませんよ!」
ピョンっとベンチから飛び上がった先輩が僕の前で奇妙な動きをし始めた。
両手を体の斜め上に挙げて、それを左右に振りながら謎の旋律を奏で始めた。
動かすのは主に上半身だけで、下半身はそのままぐるぐると僕の前を回る。
「…~ヤーットナーソレヨイヨイヨイ」
ピタっと静止して僕を見る。
「あ…あはは…はははははっ!!!!」
失礼だけれど僕を見た先輩が面白すぎて声を出して笑ってしまった。
名無し先輩の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
「こら!そこ!笑いすぎっ!!!!
日本の祭りでちゃんと浴衣着て音頭に合わせて踊ったらかっこいいんだぞ?!」
そう言いながら、自分のツボにも入ったらしくゲラゲラ笑いだした。
涙まで流している。
「まさかここで盆踊り踊るとは思わなかったわ!あはははっ」
僕の横に戻ってきた先輩がそう言って涙をぬぐう。
「盆踊りは一人で踊るんですか?」
笑いが落ち着いた僕も先輩に尋ねる。
「みんなでだけどね。踊るのはひとりよ。みんなで和になって回るのよ。
ここのダンスパーティーみたいに男女がくっついて踊るなんて日本ではあんまりないわね。」
「僕はここの魔法使いだけど、ダンスはあまり好きじゃありません。」
「ドレス着て糞真面目な顔してベタベタするのはどうも苦手よ。」
ウゲッと表情を変えておどける姿が名無し先輩らしい。
こんなに綺麗で男子の憧れの的だというのに、本人は全く自覚がない。
きっとダンスパーティーで誰よりも輝けるはずなのに。