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上機嫌で競技場に入ってきたポッター先輩の顔を見るとセブルス先輩は散々な目にあったんだろうと想像がつく。
応援席からスリザリンを潰せ!と心底楽しそうな兄の声が飛んできてから、それを振り払うように僕は勢いよく空に飛び上がった。
練習後はいつも疲れていて食欲がわかない。
簡単にサラダで済ませておくか…そんなことを思いながら大広間へと歩いて行く。
もう大半の生徒は夕食を食べているのだろう。
着替えていたら遅くなってしまった僕は一人誰もいない廊下を歩いていた。
「元気だしなよ。」
聞き覚えのある声が聞こえて、僕は足を止めた。
曲がり角の向こう、石のベンチに誰かが腰かけている。
「ほら、今日は私とお揃いだよ?」
…あれは名無し先輩じゃないだろうか?
好奇心をそそられた僕は音を立てないよう、そっとベンチに近づいた。
ベンチには名無し先輩とセブルス先輩が座っている。
医務室に行ったのだろうか?
名無し先輩は右頬に大きなガーゼを付けている。
それを指さして楽しそうに笑う。
「私はこっちで、セブルスはこっち!」
「痛っ!!つつかないでください!!」
「ほら!元気出た!あははは」
ポッターにやられたのだろう。
セブルス先輩の左頬にも大きなガーゼが張り付いていた。
「トイレットペーパーもやられたんだって…?」
「……。」
「私もトイレでスカートの裾がパンツに入ってて、それで半日過ごしたことあるわよ。
しかもそれをルシウス先輩に指摘された……。」
「……プッ。ルシウス先輩が気の毒すぎます。」
「あー!何それぇ?!ちゃんとお気に入りの可愛いパンツ履いてたもん!」
そんなの聞きたくありませんとセブルス先輩が耳を押さえる。
名無し先輩は楽しそうにセブルス先輩にもたれかかった。
「ところで、顔の傷はすぐ治るんですか?」
「ああ、これ。大げさすぎるのよね。もう治ってるわよ!」
セブルス先輩が名無し先輩を心配そうに見つめている。
いつも下ばかり向いて、他人に無関心なセブルス先輩が誰かを気にかけることがあるんだな。
「セブルスとお揃いだからつけてるだけ。」
名無し先輩が突然セブルス先輩に詰め寄った。
二人の距離がぐっと縮まる。
慌ててセブルス先輩は身を引くと、名無し先輩の顔面を手のひらで押し戻す。
「せ…制服は元に戻したんですか?」
「肩が丸見えのほうがセクシーだから左肩も破っちゃった!」
「………。」
「そのジト目、やめてもらえませんか?
嘘嘘、ちゃんと直しましたよ。」
名無し先輩はポケットからキャンディーを取り出し包みを開けると強引にセブルス先輩の口に一粒放り込んでから自分の口にも放り込んだ。
二人の間につかの間の沈黙が走る。
「無茶しないでくださいね。」
「んっ?」
空を見ていた名無し先輩がセブルス先輩のほうを見る。
「僕に心配かけないでください。」
そう言いながら、セブルス先輩が優しい笑顔を名無し先輩に向けてそっと髪を撫ぜた。
「!!!」
物陰に隠れていた僕の心臓が跳ね上がった。
二人は付き合っているんだろうか?
いつも暗くて笑顔一つ見せないセブルス先輩が笑った!
しかも、すごく…ものすごくいい男に見える!!
月光を浴びたベンチに座る美しい名無し先輩とセブルス先輩がお似合いすぎて思わず見惚れてしまった。
「…君も私に心配かけるんじゃありません!
君を困らせていいのは私だけなんだから!!!」
ムードをぶち壊すように名無し先輩がセブルス先輩の頭をつかんでわしゃわしゃと長い髪を混ぜる。
「ちょっ!痛っ!!!先輩!!!やめてくださいっ!!!」
「あははははは!!!」
楽しそうに笑い声をあげる名無し先輩がふと見せた優しい眼差し。
セブルス先輩を愛おしそうに見つめる瞳。
僕は高鳴る心臓を押さえながら、そっとその場を離れた。