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僕には最近気になる人がいる。
ズボンの裾から長い長いトイレットペーパーが廊下に伸びていた。
すれ違う生徒達はそれを見てクスクス笑う。
当の本人はみんな何がそんなにおかしいのか、笑われているのは自分なのだろうかと困惑と羞恥の表情を浮かべ足早に歩いている。
誰も彼に指摘するものはいない。
貴方のズボンの裾にトイレットペーパーがついていますよ。
それをさっきからずっと引きずって歩いているんですよ。
これを辿れば貴方がどこから来てどこに行くのかが一目瞭然ですね…と。
同じスリザリンの先輩として、僕は彼を恥ずかしいと思う。
闇の呪文に詳しいのは認めているけれどいつも暗くて、いじけて、同じスリザリン生からもいじめられ浮いている。
もっと僕をイライラさせるのは、グリフィンドールのシリウス・ブラックにいじられている姿を見る時だ。
一家の面汚し。
グリフィンドールの美しい僕の兄。
昼食後、クディッチ競技場に向かう途中人だかりを見つけた。
野次馬根性を出した僕が馬鹿だった。
人だかりの中心にジェームズ・ポッターとセブルス先輩がにらみ合っていた。
傍の大木に兄がニヤニヤ笑いながらもたれかかっている。
最悪だ……見なかったことにして退散しよう……
「トイレットペーパー君。こんなところで俺たちに絡んでいないでトイレに戻れよ。」
「黙れ…僕にかまうなと言っただろう。」
セブルス先輩の言う通り、そんな男放っておけよ、ジェームズ・ポッター。
クディッチのほうが大切だろう?
「絡んでくるのはそっちじゃないか。長いトイレットペーパーみたいにね。」
木陰から兄の美しく冷たい声が飛んでくる。
どこまで子供なんだろう、あの人は。
あの兄が大人になる日は永遠にこないだろうね。
僕は大きなため息をついてその場を立ち去ろうと足を踏み出した。
背後でヤレだのイイゾだの、馬鹿たちの声が聞こえていたけれど全部無視して空を見上げる。
ああ、今日はいい天気だ。風も気持ちいい。
競技場に続く坂道は花が咲き、蝶や鳥も飛んでいる。
「ああ!めちゃくちゃハードだった!!!」
「見て、制服破れた!あはははは!!」
目の前からにぎやかにスリザリンの先輩達がやってきた。
スリザリンだけじゃなく、学校中の男子に人気のある女子の先輩の集団だ。
魔法生物飼育学の帰りだろうか。
その中の一人、名無し先輩が僕に気づいて笑顔を向けた。
「レギュラスじゃない!今から練習?!」
そう言いながら僕の前に小走りで寄ってくる。
目の前に来た先輩の制服の右側が肩から下に向けて裂けてしまっている。
先輩の細くて白い肩がむき出しになっていて僕はドキリとする。
「名無し先輩、その服どうしました?」
「ああ。木の上までボウトラックルを追いかけて行ったら引っかかってそのまま下に墜落。」
わはははと元気に笑う先輩の右頬に擦り傷がある。
よく見ると右膝も擦れてしまってうっすら血が滲んでいた。
「でも最後はボウトラックルが沢山私の所に寄ってきてくれたんだよ。可愛かった!」
名無し、先行くよぉと先輩達の声がして、さり先輩はハーイと大きな返事をする。
「よく見ると傷だらけですね。医務室に行かれたほうがいいですよ。」
「おっけーおっけー!今日はグリフィンドールとの練習試合?」
「そうですね。」
「練習でも何でも負けないでね!特にポッターにスニッチを取らせちゃ駄目よ?」
先輩が大きな目で僕の顔を覗き込む。
「そのつもりですが…ポッター先輩は来るのかどうか…」
「…?何故?」
「向こうでセブルス先輩とまた喧嘩していたので…僕の兄も一緒に…」
名無し先輩は僕の背後を見ると困ったねぇ…と苦笑いした。
「帰り道でまだやってたらポッターに早く競技場に行くように声かけるね。
グリフィンドールのイケメン君もレギュラスみたいに大人になって欲しいもんだわ。」
そう言って先輩は僕の背中をポンっと叩くと颯爽と横を通り過ぎて行った。