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全くあの人は!!
なんて危ないことをするんだ?!
途中で魔法薬が切れでもしたらどうするつもりだろう。
僕は空を見つめながら気が気でない。
この時ばかりはポッターが早くスニッチを捕まえてゲームが終わってくれることを心底祈った。
そんな僕の気も知らず、先輩は敵を交わし体当たりし、ガンガン点数を入れて行く。
日本のクディッチチームは凄いんだから!といつか話していた先輩の言葉が浮かぶ。
先輩のお兄さんや親友もクディッチの選手だと言っていたから、先輩も一緒に練習していたのだろうか?
その時、甲高いホイッスルの音が競技場に鳴り響き試合が終わった。
ジェームズ・ポッターが高らかにスニッチを掲げた。
箒に乗った先輩がアリス先輩の元に行こうとこちらにやって来て僕に気がついた。
「セブルス!!応援しに来てくれたの?!」
爽やかな笑顔を浮かべる先輩の頬に擦り傷がある。
「先輩!!!いったいこれはどう言うことですか!!!」
鬼のような形相の僕を見て、先輩が苦笑いした。
「早く箒から降りてください!!!」
名無し先輩はバツの悪そうな顔をするとスリザリンチームに箒を返して競技場を走ってこちらにやってくる。
先輩の走る姿に女子達が色めき立っている。
あんな人いた?あれは誰?
あんなに目立って…本当に困った人だ。
「アリス、先に帰ってて。」
そう言うと名無し先輩は僕の肩を抱いて歩き出した。
「…セブルス、そんな怖い顔しないで。」
ニカッと笑う先輩の右頬に赤いミミズ腫れが二本走っていた。
「ポッターのチームに勝ってセブルスに報告したかったのに残念!
せめてポッターを箒から落としてやれたらな…セブルスごめんね。
でもなかなかカッコよかったでしょ?」
「……。」
綺麗な顔に傷を作ってまでポッターに勝って欲しくない。
僕を喜ばせる為に危険な行為なんてして欲しくない!
僕は不機嫌な顔で先輩を睨んだ。
「…何?!…私、汗臭い?!
一緒にお風呂入ろっか!」
「何言ってるんですかっ!!!」
慌てて先輩の腕の中から飛び退いた。
「だって今私は男だよ?
女風呂には入れないでしょ。
私はいいけど、女の子達がね。」
ふふふと楽しそうに笑う。
「後輩よ、先輩の背中を流してくれたまえ。」
「嫌です。僕が襲われます。」
「……。言うじゃないか…。」
急に視界が学校から空に変わる。
芝生の上にドサっと寝かされて、僕の体を先輩の体が覆った。
「…せっ…先輩っ…」
目を細めて僕を見つめる名無し先輩の首筋に一筋の汗が滴る。
汗は上下する喉仏をゆっくりと降りていき、鎖骨と平たい胸の中に消えていった。
「…知らないのかな?女子はこう言う世界が好きなこと…」
名無し先輩の太ももが僕の両足を割って入ってくる。
強い力で手首を掴まれて芝生に押し付けられた。
「じょ…冗談やめてください…」
起き上がろうとしたら、凄い力で押し付けられていて体が動かない。
あの柔らかくて小柄な先輩の力を想像していた僕は急に怖くなった。
「…冗談だと思う?」
サラサラした先輩の髪からいい香りがする。
「先輩、これ以上近づいたら呪いますよ?」
「…呪えばいいじゃないか。」
そう言いながらスローモーションで先輩の美しい顔が僕に近づいて…
「…プッ…あはははは!!!!
なーんてね!あー!面白かった!BLごっこ!」
名無し先輩がパッと両手を離して上半身を上げた。
「思ったより力があるってクディッチでわかったから押さえつけて怖がらせてやりました!…許してね?」
先輩がホラっと手を掴んでグイッと体を起こしてくれる。
呆然としている僕の背中と髪の芝を払いながら背の高い先輩が僕を見下ろし優しく微笑む。
…早く元の先輩に戻って欲しい。
可愛くて優しくて、柔らかくて小さくて元気いっぱいで、僕をいつも上目遣いに見つめる名無し先輩に…
僕は美しい男の先輩を見上げながら急に寂しくなる。
その時だった。
「おい!お前ら!!!」
先輩の背後からブラックとそれを止めようとするルーピンが走り寄ってきた。
名無し先輩も後ろを振り返る。
ブラックとルーピンは振り返った先輩を見てびっくりした顔で足を止めた。
「君たち、何か用?」
先輩が二人に話しかける。
「…スリザリンの先輩ですか?」
名無し先輩とブラックが向かい合うと異様な雰囲気になった。
背の高い美しい男が二人。
一人はニコニコと楽しそうに微笑み、一人は怒ったように相手を睨んでいる。
ルーピンが不安そうな目で僕をチラ見する。
「いきなり試合に乱入してきて、ジェームズに絡んでましたよね?」
「そうだったかな?…セブルス、そうだった?」
先輩が僕に話を振ってくる。
「知りません。見てませんから。」
僕は素っ気なく言い放った。
「…初めてお目にかかりましたが、本当にここの生徒ですか…?」
遠慮がちにルーピンが口を開いた。
「君はリーマス・ルーピン。
栗色の髪と顔の傷が可愛い。」
リーマスがギョッとする。
「君はシリウス・ブラック。
グリフィンドールいちのイケメン。
生意気な所がチャームポイントだね。」
名無し先輩がウエーブがかったブラックの前髪をそっと触ると、ブラックが慌てて一歩下がった。
「後ずさること無いじゃないか。
いつも私を追い回すくせに。」
そう言った途端、先輩がブラックの腰を強い力で引き寄せた。
ブラックは突然のことにバランスを崩し先輩の肩に顔を乗せるように倒れこんだ。
「…自分が引き寄せられる気分はどんな感じ?イケメンくん?」
耳元で先輩が囁くと、ブラックが先輩を突き飛ばし弾ける様に体を剥がした。
びっくりしたその表情は耳まで真っ赤で訳がわからないと言った顔だ。
僕は吹き出しそうになるのを堪えて俯いた。
「さぁ、セブルス帰ろう。」
先輩が僕の肩を抱いて歩き出した。
ブラックとルーピンはその場で固まったまま一歩も動こうとしなかった。
「最高でしたね、ブラックの顔。」
僕は込み上げる笑いを隠せずニヤニヤした。
「ドン引きしてたよね!」
先輩も大ウケしている。
ひとしきり笑った後、先輩の顔を見たら優しい笑顔の先輩と目が合った。
「セブルスが笑ってくれて良かった。」
女の名無し先輩の笑顔と男の名無し先輩の笑顔が重なった。
「セブルス、目閉じてみ?」
「何ですか?急に。」
「いいからいいから。」
目を閉じると甘いりんごみたいな香りが僕の鼻をくすぐった。
僕の頬に一瞬だけ先輩の柔らかい唇が触れた気がした。
びっくりして目を開けると、先輩が僕の目の前から消えていた。
「…残念。薬が切れちゃったみたい…」
下を向いたら可愛らしい名無し先輩の顔が僕を見上げている。
「もうちょっと男でやってみたいことあったのになぁ~…残念だなぁ。
また薬作ってくれる?」
悪戯っぽい笑顔で先輩が笑うから、僕は今先輩が何をしたのか聞きそびれた。
「もう二度と無理ですね。
…あれ、失敗作だったので。」
うそぉ!!!まじで怖いんですけど!!と騒ぎながら先輩は僕の腕をバシバシ叩く。
…僕の頬に先輩が触れた時…あの唇はどちらの先輩だったのだろう…
「セブルス、お腹空いた!食堂まで競争!」
「お先にどうぞ!」
無邪気に笑う先輩を見ながら僕はもう二度とあんな薬はごめんだと安堵のため息を漏らした。
**********
「…シリウス…僕が思うにあれ、名無し先輩じゃないかな。」
リーマスに言われシリウスはカボチャジュースを吹き出した。
「名無し先輩の匂いしたんだ…」
「…マジかよ…」
「うん。マジ。」
「…男の先輩も…イケる…」
「マジ?!」