学生
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大鍋から嫌な煙が上がる。
本来なら赤色の煙が上がるはずが青い煙で僕はむせ返る。
僕としたことが…
正確に軽量したはずなのに何処を間違えたんだろう。
煙が消えて鍋を覗くと中身は意外に澄み渡った液体だ。
スプーンですくってみたら、とろりとした琥珀色の液体で香りもまぁ…悪くはない。
味は…?
いや、自分ではやめておこう。
全部捨ててしまうのももったいない気がして、傍に転がっていた瓶になみなみ詰めてポケットに入れた。
「セブルスいる?!」
バンッ!!!と部屋のドアが開いて名無し先輩が顔を覗かせた。
マルシベールとエイブリーが慌てて本を枕の下に隠す。
「隠すな隠すな!後で先輩にも見せないさい。」
名無し先輩は笑いながらズカズカと部屋に入ってくる。
「どうやって入ったんですか?!
女子は簡単に入れないでしょ?!男子の部屋に!!!」
「私は入れるのよ。顔パスよ。」
やましいことは無い僕も慌てて椅子から立ち上がった。
内面はどうであれ外見の美しい女性が入って来て部屋が心なしか明るくなる。
ナイトウェアなのか、ロンTにショートパンツ、スリザリンの緑色靴下を履いている。
甘い香りが先輩の後を追ってきて、僕らは赤面した。
「お願いがあるんだけど制服貸してくんない?!」
「はぁ?!」
「ちょっと悪いことしようと思って…。
女の格好じゃ私ってバレるじゃない?
君たちのでもいいんだけど…」
そう言いながら先輩がマルシベールとエイブリーを見る。
「冗談言ってないで出て行ってください!!!」
「冗談じゃないわよ!!
貸してくれるまでここ動かない!!」
先輩は僕のベッドにダイブして枕を抱きしめた。
「ほれ、二人ともそこに隠してる本貸しなさい!」
悪い顔の先輩にいつも僕をいじってばかりの二人はタジタジになっている。
「いや、これは流石に見せられません…」
「女性が見たらダメな奴です!」
「…見せてくれたら日本から取り寄せてあげましょうか?
…こっちからだと洋物になるのかしら…ふふふ…」
二人の喉がゴクリと鳴る。
名無し先輩はうつ伏せで僕の枕を胸の下に挟み込んで足をパタパタさせている。
胸の下の枕とショートパンツからでた長い足にドキドキして目のやり場に困る。
「セブルス、何かお菓子ちょうだい!」
「そんなもの無いし、ベッドが汚れます!今すぐどいてください!!!」
「失礼ねぇ!さっきシャワーしたわよ。
なんなら横に来て確認してみ?!ほら。」
ちょいちょいと手をこまねいてベッドの端を開ける仕草が悔しいほど可愛らしい。
「二人はお菓子持ってる?
隠してる本、アクシオぉ!」
いきなり杖を出して先輩が呪文を唱えると、僕のベッドにいかがわしい本が引き寄せられた。
「ふーん。結構普通が好きなのね…」
肌色の表紙を見ながら先輩が言う。
「ちょっ、先輩勘弁してください!」
「返してくださいよ!」
僕は真っ赤になって先輩に何か言おうと思ったら一足早く呪文が飛んできた。
「セブルス、インペディメンタ…
それから食べられるものアクシオ!」
体が固まって何も言えない僕の目の前を小瓶が飛んでいく。
あれは、たしか…?!
そうだ!この前失敗した魔法薬じゃないか?
存在をすっかり忘れて、机の引き出しに入れっぱなしだった!
まずい!!!
先輩の前にはいろんな場所からお菓子やジュースが集まっていく。
「男子の部屋ってお菓子が少ないのね。
女子の部屋には山ほどあるわよ。」
パラパラと雑誌をめくりながら先輩がお菓子に手を伸ばす。
「…この本返すわ。
もっとえげつないの今度あげる。」
エイブリーとマルシベールは顔色を変えて焦っている。
「あ、可愛いジュースめっけ。」
「んっ!!!」
名無し先輩、それはダメだ!
ポンっとコルクの抜ける音がして、先輩の喉がコクリといい音を立てた。
「…ウゲッ。見た目と匂いはいいのに味がヤバイ…。これ何?!」
その時僕の呪文が解ける。
「先輩!!!それ!!!」
「!!!!」
突然先輩がもんどりうって、ベッドがら転げ落ちた。
僕ら三人がいる場所と反対にドスンと盛大な音を立てて姿を消す。
「「「名無し先輩!!!」」」
………。
沈黙が走って先輩は何も言わない。
「おい…お前何飲ませたんだよ?!」
「……失敗した魔法薬。用途不明…」
真っ青になって僕らは恐ろしくて身動きができない。
「痛っ…」
ギシッとベッドに腕が伸びる。
それから上半身、下半身、全身の順にベッドの傍から立ち上がった先輩を見て僕らはポカンと口を開けた。
「…あれ、声が…」
先輩が喉に手をやってから、俯く。
「えっ?!嘘!お気に入りのTシャツがっ!」
Tシャツはピチピチに体にフィットしてお臍が見えてしまっている。
ショートパンツからはさっきまでの柔らかそうな白い足ではなく、男性の筋肉質な足が突き出ていた。
いつもの先輩より30センチは背が高いだろうか。
「名無し先輩男になってる!!!」
驚いた顔で僕らを見た先輩の顔に僕らは固まった。
物凄い美男子だ。
「…男子になる薬飲ませたの?」
どこか先輩の面影を残す、目の前の美しい男性に僕らはただただ驚愕していた。