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セブルスside
夏休み、名無し先輩に彼氏ができたらしい。
話の出どころはエイブリーとマルシベール
だ。
二人もあの時、名無し先輩の左薬指に気がついたらしい。
僕は先輩をジッと観察する。
彼氏ができた先輩に変わったところは無い。
昼食の時は背後から僕のかぼちゃジュースを奪い取って飲み干すし、薬学の教科書を開いたら僕の頭から薬草が生えたイラストを描いた手紙が挟まっていた。
ご丁寧に『シルバーリング、誰にもらったでしょうか?』のメッセージつきだ。
僕が見つめていると、先輩も僕を見た。
ニコッと笑って呑気に手を振ってくる。
恋人がいるのにこの態度は何だ!
僕はフイッと視線を逸らした。
勘違いしないで欲しい。
拗ねてるわけじゃない。
嫉妬もしていない。
片思いの相手にやっと想いが通じたのか…
よかったじゃないか…
先輩の口ぶりじゃ、相手のことを凄く好きな感じだったもんな。
先輩の相手に申し訳ないから今後は必要以上に仲良くしないんだ。
図書館でひとり本を読んでいると、先輩の事ばかり考えてしまう。
文字が滑って目から、頭から消えていく。
いつもわざと隣の席を開けているのは先輩が突然現れるからだ。
今日は来ないんだろうか?
…いや、もう永遠に来ないのかもしれない。
僕は半ばヤケクソ気味に本を閉じた。
やめだ、やめ!
本を元に戻すと図書室から出た僕は、長い廊下を足早に歩いた。
「俺、マジでショックです。
夏休みですか?どんな奴ですか?」
ふと廊下の曲がり角から聞いたことのある声がして僕は立ち止まった。
「えっ?…ああ!これ!あははは!」
名無し先輩とブラックの声じゃないか?!
探偵のようにぴたりと壁に背をつけて僕は気配を消し聞き耳を立てる。
「これ、彼氏からもらったとかじゃないよ。」
何っ?!
今何て言った??
「それ嘘じゃないですよね?!」
表情は見えないけれど笑っているんだろう。
ブラックの声が嬉しそうだ。
「名無し先輩、俺これからも先輩を追いかけます!」
「あははは。君なら女の子選び放題なのに何で私なの?まぁ、頑張ってね~。
図書館行くからそこどいて。」
僕は慌てて踵を返すと図書館にダッシュした。
椅子に座って息を整えながら本を開く。
落ち着け、セブルス。
少しして、ふわっと甘いシナモンとりんごの香りがする。
ツンツンと腕を突かれる。
こんなことする人は一人しかいない。
「…読書の邪魔しないでください。」
読書に没頭する風を装いつつチラッと横を見ると先輩が笑っている。
嬉しいのに腹が立つ。
そんな想いはお構いなしに、僕の右半身に左半身をぴったりくっつけて本を覗き込みながら先輩が囁いた。
「ずっと機嫌悪いけどどうしたのよ?」
僕の顔を見てニヤニヤ笑いを浮かべる先輩。
「手紙に書いた答えわかった?
これ、誰にもらったでしょうか?」
そう言うとわざとらしく左手を見せてくる。
今日一日、僕はシルバーリングのせいで気が散って授業が手につかなかったんだぞ!
名無し先輩が両思いになれてよかったって応援するつもりが、イライラして頭の中がぐちゃぐちゃになったんだからな!!
人の気も知らないで、一体なんなんだ!!
僕は先輩の左手首を強く掴むと図書館を飛び出した。