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誰もいない教室。
ここは僕だけの秘密の場所だ。
今日も読みかけの本を持ち込んで読書に没頭する。
どれくらいの時間が経っただろうか。
僕は顔を上げて首のストレッチをしながら窓の外を眺めた。
その時、ガラスに映る僕の背後、教室の右後ろがゆらりと揺れた。
「よっ。天才くん。」
びっくりして振り返った僕に、寝癖をつけた人物が手を上げる。
「名無し先輩…いつからいたんですか。」
「君が歌いながら入ってきた時から。」
「…歌ってません。」
名無し先輩はいつもの調子で僕をからかって楽しそうに笑う。
先輩は椅子から立ち上がるとふわふわと僕の方に歩いてきた。
第二ボタンまで開けた胸元、緩く結んだネクタイ、シャツの袖は何度か折り返し短めのスカートで、くるぶしまでの短い黒ソックスを履いている。
何度も寮監に注意されているらしいが、先輩がきちっと制服を着こなしている姿は見たことがない。
「はい、あげる。」
僕の横に体を寄せて座った先輩がミントキャンディを僕の本の上に置いた。
先輩もキャンディの包みを解いて、パクっと口に入れる。
「シャンプーの香りかな?いいね。」
先輩がクンクンと僕に近づき鼻を鳴らす。
「…ふざけないでください。」
先輩から甘い香りがして、僕は少しお尻を左に動かした。
先輩は笑いながら僕を追うように左に詰めてくる。
僕の右太ももと先輩の左太ももがくっついて、じわりと暖かい。
今日は何読んでるの?と先輩が本を覗き込むから僕の顔面に先輩の横顔が迫ってきた。
僕は体をのけぞらせる。
髪を耳にかけて、金のフープピアスをしている先輩のキレイな横顔がすぐ近くにあって、僕はリリーが好きなはずなのにドキリとしてしまう。
「またぁ。こんな本読んで。…嫌いじゃないけどさ。」
そう笑いながら、くるっと先輩が僕の顔を見た。
その距離が近すぎて、僕は固まった。
先輩の大きくて黒い瞳に僕の顔が映る。
きめ細やかな肌や、艶々の黒髪、目だけ大きな整った顔。
名無し先輩はスリザリンの男子が女子の話をするとかならず名前が挙がる。
本人は自覚がないようだけれど、かなり人気がある。
僕の前ではいつもふざけた態度を取る先輩も、こうして意識して間近に見るととても美しい。
先輩が僕の瞳をまっすぐ見つめて微笑む。
柔らかな、それでいて妖艶な笑みに僕の頬が一瞬にして熱くなった。
耳まで真っ赤になって熱を持ち始める。
急に先輩が少し顔を傾けて、僕の唇を見つめた。
僕の喉がゴクリと音を立てる。
先輩の桜色の唇はぷっくりしていて、とても柔らかそうだ。
ちょっと待て。
この人は僕に何をするつもりなんだ?
「せっ…先輩っ…」
名無し先輩の顔がゆっくり僕に近づく。
僕はぎゅっと目を閉じた。
自分の心臓の音が耳の奥に鳴り響く。
ファーストキスはリリーとするつもりだったのに、名無し先輩としてしまうのだろうか?
いや…でもそれも悪くない…
あれ、僕は先輩が好きなんだろうか?
……まぁ、嫌いではない…
ふがっ?!
先輩の笑い声と、鼻にむぎゅっと違和感を感じて僕は目を開けた。
名無し先輩が僕の鼻を摘まんで楽しそうに笑っている。
「何するんですか?!」
僕は先輩の手を払いのけて、そう叫んだ。
「ごめんごめん、つい可愛くて。」
名無し先輩は椅子から立ち上がった。
「…私としたかった?」
「誰があなたとしたいんですか!」
「…何を?」
「…っ!!!」
あはははとまた笑って、先輩は僕に背を向けた。
「…君のファーストキスは…あの子としなきゃね。」
先輩が振り返って、少しだけ微笑んだ。
じゃまたね、天才君と手をひらひらさせて先輩は教室を出ていった。
僕はポカンとした表情で一人教室に残された。
後には先輩の甘い香りが残っているだけだ。
ここは僕だけの秘密の場所だ。
今日も読みかけの本を持ち込んで読書に没頭する。
どれくらいの時間が経っただろうか。
僕は顔を上げて首のストレッチをしながら窓の外を眺めた。
その時、ガラスに映る僕の背後、教室の右後ろがゆらりと揺れた。
「よっ。天才くん。」
びっくりして振り返った僕に、寝癖をつけた人物が手を上げる。
「名無し先輩…いつからいたんですか。」
「君が歌いながら入ってきた時から。」
「…歌ってません。」
名無し先輩はいつもの調子で僕をからかって楽しそうに笑う。
先輩は椅子から立ち上がるとふわふわと僕の方に歩いてきた。
第二ボタンまで開けた胸元、緩く結んだネクタイ、シャツの袖は何度か折り返し短めのスカートで、くるぶしまでの短い黒ソックスを履いている。
何度も寮監に注意されているらしいが、先輩がきちっと制服を着こなしている姿は見たことがない。
「はい、あげる。」
僕の横に体を寄せて座った先輩がミントキャンディを僕の本の上に置いた。
先輩もキャンディの包みを解いて、パクっと口に入れる。
「シャンプーの香りかな?いいね。」
先輩がクンクンと僕に近づき鼻を鳴らす。
「…ふざけないでください。」
先輩から甘い香りがして、僕は少しお尻を左に動かした。
先輩は笑いながら僕を追うように左に詰めてくる。
僕の右太ももと先輩の左太ももがくっついて、じわりと暖かい。
今日は何読んでるの?と先輩が本を覗き込むから僕の顔面に先輩の横顔が迫ってきた。
僕は体をのけぞらせる。
髪を耳にかけて、金のフープピアスをしている先輩のキレイな横顔がすぐ近くにあって、僕はリリーが好きなはずなのにドキリとしてしまう。
「またぁ。こんな本読んで。…嫌いじゃないけどさ。」
そう笑いながら、くるっと先輩が僕の顔を見た。
その距離が近すぎて、僕は固まった。
先輩の大きくて黒い瞳に僕の顔が映る。
きめ細やかな肌や、艶々の黒髪、目だけ大きな整った顔。
名無し先輩はスリザリンの男子が女子の話をするとかならず名前が挙がる。
本人は自覚がないようだけれど、かなり人気がある。
僕の前ではいつもふざけた態度を取る先輩も、こうして意識して間近に見るととても美しい。
先輩が僕の瞳をまっすぐ見つめて微笑む。
柔らかな、それでいて妖艶な笑みに僕の頬が一瞬にして熱くなった。
耳まで真っ赤になって熱を持ち始める。
急に先輩が少し顔を傾けて、僕の唇を見つめた。
僕の喉がゴクリと音を立てる。
先輩の桜色の唇はぷっくりしていて、とても柔らかそうだ。
ちょっと待て。
この人は僕に何をするつもりなんだ?
「せっ…先輩っ…」
名無し先輩の顔がゆっくり僕に近づく。
僕はぎゅっと目を閉じた。
自分の心臓の音が耳の奥に鳴り響く。
ファーストキスはリリーとするつもりだったのに、名無し先輩としてしまうのだろうか?
いや…でもそれも悪くない…
あれ、僕は先輩が好きなんだろうか?
……まぁ、嫌いではない…
ふがっ?!
先輩の笑い声と、鼻にむぎゅっと違和感を感じて僕は目を開けた。
名無し先輩が僕の鼻を摘まんで楽しそうに笑っている。
「何するんですか?!」
僕は先輩の手を払いのけて、そう叫んだ。
「ごめんごめん、つい可愛くて。」
名無し先輩は椅子から立ち上がった。
「…私としたかった?」
「誰があなたとしたいんですか!」
「…何を?」
「…っ!!!」
あはははとまた笑って、先輩は僕に背を向けた。
「…君のファーストキスは…あの子としなきゃね。」
先輩が振り返って、少しだけ微笑んだ。
じゃまたね、天才君と手をひらひらさせて先輩は教室を出ていった。
僕はポカンとした表情で一人教室に残された。
後には先輩の甘い香りが残っているだけだ。
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