第2幕
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気付けば、国木田は見慣れた己の机に突っ伏していた。
「……ここは」
疑いようもない。武装探偵社だ。なぜ自分は机に突っ伏していたのだろう。確か、そう、クリスの元へ話をしに言って、そこで狂乱した彼女の攻撃を正面から受けて、そして。
――おーや国木田ァ、目が覚めたのかい? これから三回目だ、準備はできているんだろう?
思い出した。
医務室に運ばれ、そして与謝野の治療を受けたのだ。何回受けたのかは記憶にない。記憶が途中から消えている。あまりの衝撃のせいか、医務室を出て自分の机に突っ伏すまでの記憶すらない。
「く、国木田さん、大丈夫ですか……?」
敦が声をかけてくる。それは外傷から復帰した相手への言葉ではなく、与謝野の治療から復帰した相手への気遣いだった。答えず、上体を真っ直ぐに起こして眼鏡をかける。
「……何か仕事はないか」
「え」
「仕事だ。先程の出来事を頭から抹消するには仕事が一番だ」
というか何でも良いので何かに没頭したい。
敦はわたわたと周囲を見回した。が、そんなところに仕事が転がっているわけもない。そもそも新入社員である敦にそれを求めたのが間違いだったか。ため息と共に眼鏡を押し上げる。
「対ギルドの作戦はどうなった」
「あ、はい、えーっと、乱歩さんと太宰さんが奥で作戦を立案し終わったところで、それで」
「決まったのか」
「そうだよ」
答えたのは敦ではなかった。
探偵社の出入り口の扉が開かれた先で、太宰が立っている。
「やあ国木田君、元気?」
「嫌味はやめろ太宰」
「嫌だなあ、本気だよ私。いつでも本気」
「あからさまな嘘もやめろ、反応に困る」
「酷ーい。というか冗談じゃなく本当にかなりまずい状態だったのだよ? それこそ口で説明できないほどに」
「わかっている」
わかっていた。身を切る刃の煌めきを、体を走る無数の痛みを、覚えている。
それでも、手放すことはできなかった。
「わかっている、か」
どこか満足げに呟いた太宰はそっと出入り口の片側へ寄った。後ろから来る人のために道を譲ったかのようなその動きに違和感を覚える。
疑問はすぐに解決した。
「ほら、やはり国木田君はそう言ったでしょう?」
太宰の背後から人影が現れる。
亜麻色の髪、白い肌、動きやすさを重視した簡素な服、そして。
「……国木田さん」
青に緑の混じった、目。
「……クリス」
名を呼べば、彼女は苦しげに目を伏せた。