第2幕
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***
太宰はソファの上でだらりと横になっていた。長い手足は収まることなく宙にはみ出ている。が、それを気にする彼ではない。
特に今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
「あーだるい」
がじがじと齧っていたバナナの皮が苦い。怠すぎて動きたくない。動けることは動けるし、そろそろ密会の手筈を整えるための行動を再開すべきなのだが、しかし今後を思うと嫌で嫌で仕方がない。
「あーだるい。だるすぎて死にそう」
ここで誰かしら「なら良かったじゃん」的なことを言ってくるのがこの探偵社という場所なのだが。
「……この唐変木が、元……?」
この場にいる唯一の探偵社員である国木田は事実に衝撃を受けて床に倒れ込んだまま動けないでいる。
「……七十万もの賞金が賭けられた、貴様の前職が、あの……?」
「うん、元ポートマフィアだよ」
「やめろもうそれを言うな……!」
「うん、元ポートマフィアだよ」
「う、胃がキリキリと……!」
「うん、元ポートマフィアだよ」
「わかったから黙れ唐変木!」
耐えかねた国木田が立ち上がるなり怒鳴りつけた。「あ、国木田君が立った!」と底抜けの明るい声で言えばその顔はさらに怒りに染まる。面白い。
「なぜ元ポートマフィアがここに……いやそれより、俺以外は皆知っているとは何故だ!」
「うーん、話すのさえだるい。だるだるー」
「誤魔化すな!」
これが楽しみだったから国木田にだけ黙っていた、と言ったらさらに怒られそうだ。
太宰にぎゃんぎゃんと吠えていた国木田は、ふと腕の時計にちらりと目を落とした。いつもの癖のような流れるその所作の後、ふと呟く。
「……密会、か」
「緊張するかい?」
「わからん。前例がないからな、その時どのようになるのかすら全く想像がつかん」
「そうだね、前例がない」
けれど必要なことだった。現状打破のために敦が考えた、対ギルドに向けた至極の一手。誰も思いつかなかったであろうその案を彼が考えつき、福沢に進言した。
きっと以前の敦ならできなかった。ポートマフィアを、芥川を強く疎んでいた敦だが、今や「誰かを守る」ということを理解し、それを選択した。
それを成長と呼ばずに何と表現するものか。
「前例など慣習を守るための口実に過ぎないよ。日々は新しく紡がれている。昔を繰り返すのが一般的な紡ぎ方だけれども、新しい織り方を挟むのも美しい布を作り上げる方法の一つ。私達はそうやって、いつか身に纏うであろうその布を織り上げていけば良い」
けれど、と太宰は国木田を一瞥する。彼が昨日対峙したという少女を思い出す。
――彼女のような存在には、そういった美しさはないのだろう。
それを口にしないまま、「何だ」と問うてきた同僚に太宰はへらりと笑ってみせる。
「いいや、何も」