第2幕
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
現場が落ち着きクリスが着替え終わったところに谷崎が来た。詳しい経緯を谷崎に話を聞いたところによると、鬼気迫った国木田が警備員を怯えさせつつ監視カメラの映像を見せろと迫り自ら不審人物を洗い出したのだという。ブレーカーを落とした共犯者がいたが国木田により簡単に自白したらしい。お粗末な展開だ。
「しかも犯人の人、僕達が受けた依頼人の甥っ子だったんだよね」
現場検証の終わらない部屋の片隅でテーブルを囲み、谷崎が穏やかに話してくれる。その表情は事件の被害者としてのクリスを気遣ってくれているのがよくわかった。彼もまた、他の社員と同じく心優しい。クリスに対して一般市民にするように接してくれる。
全てクリスが仕組んだものだとは思いもしていないのだ。
あの男の家族構成はこのパーティに参加する前から知っていた。だからこその、今回の騒動。彼らはそれに気付くことなく、クリスが偶然巻き込まれ、偶然自分達の仕事が丸く収まったのだと思っている。それで良い。全てを偶然だと思っているのならば、彼らはクリスを疑わず、根拠なく信用してくる。そして。
――いつかこの事実が彼らに伝わった時、きっと彼らは今とは真逆の表情をクリスに向けてくるのだろう。
当然だ。そういう対応をされるようなことをクリスは彼らにしている。そんな未来に対する感情はない。あってはならない。
「ふん、良い気味だ。探偵社を利用したのだからな」
機嫌が悪そうに国木田が言う。
「足場崩しごときに乱歩さんの貴重な力を使っていただかなくて済んだ」
「……あの話真面目に受け取ってたんですか」
「……そんなわけがないだろう」
「そ、そうですよね」
「当然だ。当然に決まっている」
何はともあれ、無事に事は済んだらしい。「ありがとうございました」とクリスは人の良い笑顔で二人を見た。
「お二人とも凄いですね、二つも事件を解決してしまうなんて」
「いや、ボクは全然。凄いのは国木田さんだよ。ボクは指示に従ってただけだし」
谷崎の謙遜に対し、国木田はそっぽを向いて否を示した。照れ隠しだろうか。けれど、きっと言葉にせずとも、谷崎に感謝していることはあるのだろう。互いを思い遣る素晴らしい関係。
利用するには適しすぎている。
それ以外の感想など、抱くはずもない。はずがないのだ。だから、この胸に宿った罪悪感は、寂しさは。
――錯覚なのだと、信じたかった。