第3幕
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***
――パン!
最後の一発を撃ち、クリスは両腕を緩めた。的の全てが床に伏し、訓練終了のブザーが射撃場に鳴り響く。ちら、と横の壁に表示されたスコアボードを見た。
敵撃退率は百、けれど急所への的中率は九十二。
「……数人外したか」
さすがに動く的への両手撃ちは的中率が下がるようだ。残念だがこれが今の実力、改良すべき点は多い。
的場に背を向け、扉を開けて射撃場を出る。腰に手を当てた国木田と呆然とした敦がクリスを出迎えた。
「……クリスさんって何でもできるんですね」
敦が目を瞬かせながら呟くように言う。その言葉に笑顔を返した。
「死なないために練習しましたから。練習すれば敦さんにもできますよ」
「いやいやいやいや、あれはさすがに僕にはとても」
「大丈夫ですよ、敦さんは虎の異能力者だから、空間把握は得意なはずです。わたしは肌の感覚ですけど、敦さんなら銃弾を見ることもできると思いますし」
「じゅ、銃弾を見る……?」
何を言っているんだ、と言いたげな敦ににっこりと笑みを深める。彼は自分を過小評価する傾向があるが、おそらくコツに気付けば成長は早い。でなければあのフィッツジェラルドを倒すなどということができるわけがないのだ。
あの男の強さは身に染みてわかっている。だからこそ、敦の本当の強さも理解できていた。
「あ、今度競争しましょう! どちらがどれだけ的を倒せるか!」
「なななな何を言ってるんですか! あれを見せられた後に競争なんて無理ですよ!」
わたわたと敦は両手を振り回して否定する。その動きが面白くて、思わず笑った。
「じゃあ敦さんの異能とわたしの銃撃で戦う、というのはどうです? わたし、敦さんの異能をちゃんと見たことがないんですよね」
「いやいやいやいやますます無理ですって! 怪我させたらどうすれば良いんですか!」
「あれ、もう勝つ気満々なんです?」
「そうじゃなくて!」
「あまり敦を困らせるな、クリス」
後輩を見兼ねた国木田が頭を掻きつつ口を挟む。からかうのはここまでか。国木田へと肩を竦めてみせた。
「それが良いのに」
「……あなたまで俺の胃腸を苦しめないでくれ」
「……へ?」
国木田が大きくため息をつき、敦がぱちぱちと目を瞬かせる。二人の予想通りの様子に、クリスは声を上げて笑った。