第2幕-続
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夜。
クリスは立ち上がり、部屋の電気を消した。机を挟んでいた国木田は床に倒れ込み、寝息を立てている。
飲み干された二つの湯呑みを一瞥し、クリスはカラリと窓を開けた。冷たい夜風が吹き込んでくる。正面には細くなった月。
良い夜だ。
「……ごめんなさい、国木田さん」
振り返り、その寝姿に微笑む。
「あなたには関係のない事件だから……こうでもしないと、あなたはまたわたしのために何かをしようとするだろうから。今夜はぐっすり眠ってくださいね」
そして、窓の外へと目を移す。手を伸ばし、呟く。
「【テンペスト】」
呼ぶように唱えたそれに応えるように、風が方向を変える。窓枠を飛び越え、空中の薄氷に着地。そっと窓を閉める。
「行こう、赤き獣がいた場所へ」
ふわりと薄氷から地面へと降り立ち、足が地を捕らえると同時に跳躍、突風に乗って上空へ。街を見下ろすほどに高く舞い上がる。
「赤き獣」という単語が差しているのは連続猟奇殺人事件の被害者だ。人としての形を失い、己の赤に身を染めたもの。
事件の被害者が発見された場所は調べてある。
「まずは……公園か」
体を押し上げる力が消え、降下が始まる。風が頰と耳を掠めていく。宙へ薄氷を生成し、それに着地すると同時に再び跳躍。
クリスの姿は夜の空に消えていく。
***
――同じ頃。
太宰は一人、探偵社のソファに寝転がっていた。
「あれ、珍しいですね太宰さん」
遅番だった賢治がその姿を見て目を丸くする。
「どうしたんですか? こんな時間まで探偵社にいるなんて」
「予感だよ」
「予感、ですか?」
「うん」
頷き、太宰は昼寝を楽しむかのように目を閉じる。
「――今夜、何かが起こるっていう予感さ」