短編、中編集

「ごふ、おぇ」
胃から何かせり上がってくる物を感じ喉の異物感を出す為に黒の袋に吐く。口から出たのは白い小さな花が一塊になっていた。
「…何だろこれ」
そんなに長いこと考えてはいないと思うが阿久根が俺を探していたようだった。俺は嫌悪の感情を隠そうともせず阿久根を見た。
「…それは多分ガマズミだな」
携帯と花を交互に見ながら言う。
「花言葉は、私を見て、私を無視しないでか。生徒会室にいた人で花言葉が当てはまるのは」
「黙れ」
右手をライオンの足に変え攻撃するが避けられる。
「ごふぉえ、ごほ、ごぼおえぇ」
袋に吐いた花を見た瞬間両手足をチーターの足に変え走り出した。
阿久根が俺の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

校舎裏で壁を背にし腰を下ろす。袋開け中の花を確認する。吐いた花はマリーゴールド、赤色のシクラメン、黄色の薔薇、赤色のヒヤシンスだった。わざわざ携帯で調べなくたって分かる中学の頃から毎日吐いた花だから。
袋をクシャッと強く握りため息を吐く。
『未〜国ちゃん』
「⁈く、球磨川様!」
心臓が飛び跳ね鼓動が速くなるのを感じた。それと同時に吐き気がやってきた。吐き出さないようにと口を手で覆うが球磨川様に名前を呼ばれその手を掴まれる。
あ、
「ごっ、おぇごぶげぇ」
地面にピンク色の胡蝶蘭、赤色の薔薇、赤色の菊が吐き出された。
ど、どうしよう。き、嫌われてしまう。嫌われたくない!
慌てて地面に落ちた花を袋に入れる。胡蝶蘭を掴もうするとスルッと球磨川様に拾われしまった。頭が真っ白になる。
『ごふっ』
球磨川様が吐き出した花はピンク色のような紫色のような花だった。
『ねえ未国ちゃん』
「…はい」
「俺はね未国ちゃんが好きだよ」
え、
大嘘憑きオールフィクションでなかったことにしたくないくらいにね』
『でも未国ちゃんが俺以外が好きな悪い子の未国ちゃんには使うね』
球磨川様の手が伸びて来る。
「あの、球磨川様。誤解されているようなので言わせていただきます」
手が俺の頭に触れるか触れないかぐらいで止まる。
「烏滸がましいですが、俺も球磨川様が、好き、です」
『ごふっ』「おぇ」
球磨川様と俺の口から白銀の百合が吐き出された。

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ガマズミ:結合、私を見て、私を無視しないで
赤色のシクラメン:嫉妬
黄色のバラ:愛情の薄らぎ、嫉妬、友情
マリーゴールド:嫉妬、絶望、悲しみ
ピンク色の胡蝶蘭:あなたを愛しています
赤色のバラ:あなたを愛してます、愛情、美、情熱、熱烈な恋
赤色の菊:あなたを愛しています

球磨川が吐いた花
イカリソウ:君を離さない、旅立ち
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