2025/11月(1~6)

 ツルギバナナの管理を任せてる倉庫番は、主君と従者というだけでなく、博打の友だ。
 暇になったら賽の目と籐の籠を携えてひょっこりと顔を出し、「また来たんですか」と形ばかりは諫めてくる彼奴と賭けをする。
「今日は何を賭ける? 俺様は腹が減ってるからな、無難にツルギバナナを所望するぜ」
「私も決まっていますよ。ここ最近と同じく、あれを所望したいと思います」
 座り込みながら告げられた内容に、俺様は「あれか・・・」と唸った。
 俺たちの賭け物は、その都度の欲しい物が挙げられる。金なんてものは丁半の王道だろうが、そんなのは野暮極まりないだろう。そもそもイーガは万年金欠集団で、懐を弄っても緑石すら転がらず、埃ばかりがぽろぽろ落ちてくる団員から金を巻き上げようって男は、総長の器じゃねえと思ってる。
 ただ、ここ暫く彼奴の賭け物が偏りすぎていて、正直「またか」と閉口したのが事実であった。
「お前、飽きねえな~。別にそこまで面白いもんでもねえだろうに」
「いいんです、私はハマってるので」
 むっつりとした声で言うものだから、俺様も「わーったわーった」と呆れ調子で賽を振る。
 バンッ、と籠を床に伏せ、彼女のすましたイーガの瞳に迫った。
「丁か、半か!?」
「丁で」
 すっと気取ったように伸びる背筋の割に、ぎゅっと握られた拳。それを見ると、いつも総長の器が顔を覗いちまうわけだ。



「──ほら、来いよ」
 バナナ倉庫の一角に座ってあいつを見上げると、失礼しますと断りながら傍に腰を下ろしてきた。
 それから、ゆっくりと俺様の太ももに頭を乗せる。
 あいつが欲したのは、俺様の膝枕。仮面も頭巾も外した素の顔で、ほぉ・・・っと息を吐く。ここ最近はずっとこの調子だが、この満足そうな顔と言ったら。
「・・・飽きない意味が分からねえ」
「飽きませんよ、コーガ様はご自分の膝枕がどれほど素晴らしいのか、お分かりになっていないのです」
「分かるかっ、自分でできるわけでもなし」
「でしょう?であれば、意味が分からないなどと、人が堪能しているところに茶々を入れるべきではありませんよ」
「お前なぁ」
たぷ、とした腹肉に擦り寄ってきて、倉庫番はうっそりと瞼を細める。
「また明日も同じものを賭けるつもりです」
 守るべき団員の、こうまで楽しげな表情を見せられちゃあなあ。
 「明日も」なんて厚かましい団員に、総長の器たる俺様は、「へいへい」と頭を掻くのであった。
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