2026/1月(38~67)

イーガという集団は甘党ばかりの所為なのか、酒好き団員の肩身が微妙に狭い。同じ嗜好品であろうに、ツルギバナナをワハワハ言いながら食ってる輩と、酒を酌み交わしてワハワハ言ってる輩であれば、明らかに後者への当たりが強くなるから不思議である。「無駄なもんに金使いやがって」「声がデカくてうるせえ」と通りすがりに嫌味を言われ、「ちょっと待て」と取っ組み合いになったこともあるほどだ。そして余計に、酒飲みの立場が危うくなった。
であるからして、酒の楽しみを倍増させる肴の調達にはよほど苦労している。なんせアジトには余分な資源などなく、全団員に滞りなく準備されているものといえばツルギバナナくらいなものだ。肉の切れ端でもちょろまかして焼ければ良いのだが、そんなことしようものなら腹を空かした野獣のような団員達の鼻をくすぐり、たちまち俺は磔にされてしまうだろう。俺はイーガの食材調達を任されている補給班。部下に顔向けできないことはするべきではない、と思えるくらいには理性があるつもりだ。
部下に文句を言われないやり方で肴を得る必要があった。しかしバナナは米の酒との相性が悪く、ゲルド辺りで豊富に取れるヒンヤリメロンやビリビリフルーツも左に同じだ。夕餉の米を握り飯にして夜にこっそり酒と合わせたこともあるが、米を原材料とした酒に米を合わせている事実に俺は何してるんだ?という気になったし、そもそも相性が良いものでもなくて早々にやめた。
苦労に苦労を重ねた俺は、ついに理想的なものを見つける。それを掘り当てたとき「こんなところに俺の求めていたものがあったなんて」と棚からバナナでも降ってきたようだった。サファイアやダイヤモンドと比べても遜色なく思えて太陽に掲げると、日に透けるそれは本当に宝石のようじゃないか。
アジトに持ち帰った晩。早速試すと、辛口の米酒と相性も悪くない。今までの苦労が走馬灯のように流れ、その度に俺は酒を舐めて感慨に耽った。
あまりの感動ぶりに、思わず補給班の部下に「聞いてくれ!」と持ち掛けてしまったくらいだ。
「ついにちょうど良い肴を見つけたんだ! 苦節ウン年が果たされたぞ!」
「えっ、そうなんですか? 何を見つけたんです?」
俺は懐に忍ばせていた桃色のかけらを取り出した。
「岩塩だ!!他のやつらからも文句が出ないし、簡単に手に入る!しかも舐めても舐めても全然減らないんだ、最高のつまみだろ!」
「うわ、かわいそう」
「はったおすぞお前」
甘党である部下の胸倉は「まあまあ」と割り込んできた他団員によって掴まず終いとなった。

さて、この岩塩との関係は暫く続いたのだが、それを知る者は決して多くない。
俺が岩塩より素晴らしい肴と一生の伴侶に出会うのは、これからもう少し後の話である。
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