2024/12月(7~37)
「いつまで寝とるんだ! 朝だぞ! お前ら起きろ!」
カルサー谷に朝がやってきた。イーガの共寝所に響き渡る大音声の鶏鳴に、眠い目を擦る影が一人、また一人むくりと起き上がる。
冬の朝は気怠い。太陽光でも差し込めば気分も少しは違うのだろうが、アジト内は24時間オールナイトのようなものである。ここでの光源は壁に掛けられた幾つかのぼんぼりだけだ。
「あッ、今日って!!」 「来てる!来てるよ!!」 「うおおお・・・!」
突如湧き上がる歓声。火をつけた爆弾花のように、部屋のあちこちで無作為に弾ける。部屋に漂っていたまどろみの空気がその爆風に散らされていく。
代わりにその場へ広がったのは、緑と赤、鈴の音を思わせる浮ついた空気。
リボンの巻かれたツルギバナナ──それが彼らの枕元へ、寄り添うように置かれていた。
深穴の間であくびをしていたら、突如「コーガ様~!」と声が聞こえた。
振り向けば、ぞろぞろと列をなしてやってくる寝間着姿の団員たち。これから地底調査に戻る自分を見送りに来たわけでは無いだろう。なぜなら、腕に抱えられたツルギバナナが、それを物語っている。
「おお、起きたのか。おはようさん」とコーガが伸びをすると、団員たちはワッと彼に詰め寄った。
「ツルギバナナ、ありがとうございます!毎年嬉しいです!」
「お」
「コーガ様からプレゼントを頂けるなんて、感無量です!」
「んん」
コーガはひらひらと手を振った。
「クリスマスったらサンタだろ! それは俺様からじゃねえーっての!」
言葉は、言い切らない内に「ありがとうございました!」というお辞儀で掻き消された。
頬をボリボリと掻いて「分かったから、その分しっかり働けよ~」と返せば、また元気よく「はーい!」という言葉。仕方ねえな。全く調子の良いやつらだ、ほんと。
「──すみませんコーガ様。俺にまでこのような心遣いをしていただいて」
団員たちが去っていった後、その場に残った幹部が肩を竦めた。彼の手にももちろん、サンタの贈り物である黄色い果実が抱かれている。
「大変なのではありませんか、毎年、全団員にバナナを配って回るなど」
「しっかし、もはや伝統みてえなもんだから仕方ないわな」
「なかなか奇異なことをする先代がいたものですな・・・。女神の生誕祭に乗じようなどと、寛容的と言いますか、なんというか」
「まぁ、少なくとも100年前からやってるみてえだし」
後頭部で掌を組む。「ひ、100年前ですか」という幹部の相槌を聞きながら、コーガは白々明けの空を見つめた。
「嘘じゃねえぞ。当時の総長の日記にな、そう書いてあったんだよ。俺様はそいつを読んだんだ」
「はあ、日記を」
「なんでも齢一桁の子供がワケアリで入団してきたらしくてな、そいつ喜ばすために始めたんだと。そっからずっと続いてんだ、これは」
よっいせと、と唸りながら、コーガは横に置いてあった白い袋を背負う。
動いた途端、風に散らされたのはバナナの香り。コーガは後ろ手を上げた。
「じゃ、俺様地底班にも配ってくっからな、アジトは任せたぞ」
「はっ、お気をつけて、コーガ様」
「あ、そういや言い忘れてた。他の団員にも伝えといてくれや」
赤い装束の男は白い袋を揺らしながら、振り返った。
「メリークリスマス!ってな!」
カルサー谷に朝がやってきた。イーガの共寝所に響き渡る大音声の鶏鳴に、眠い目を擦る影が一人、また一人むくりと起き上がる。
冬の朝は気怠い。太陽光でも差し込めば気分も少しは違うのだろうが、アジト内は24時間オールナイトのようなものである。ここでの光源は壁に掛けられた幾つかのぼんぼりだけだ。
「あッ、今日って!!」 「来てる!来てるよ!!」 「うおおお・・・!」
突如湧き上がる歓声。火をつけた爆弾花のように、部屋のあちこちで無作為に弾ける。部屋に漂っていたまどろみの空気がその爆風に散らされていく。
代わりにその場へ広がったのは、緑と赤、鈴の音を思わせる浮ついた空気。
リボンの巻かれたツルギバナナ──それが彼らの枕元へ、寄り添うように置かれていた。
深穴の間であくびをしていたら、突如「コーガ様~!」と声が聞こえた。
振り向けば、ぞろぞろと列をなしてやってくる寝間着姿の団員たち。これから地底調査に戻る自分を見送りに来たわけでは無いだろう。なぜなら、腕に抱えられたツルギバナナが、それを物語っている。
「おお、起きたのか。おはようさん」とコーガが伸びをすると、団員たちはワッと彼に詰め寄った。
「ツルギバナナ、ありがとうございます!毎年嬉しいです!」
「お」
「コーガ様からプレゼントを頂けるなんて、感無量です!」
「んん」
コーガはひらひらと手を振った。
「クリスマスったらサンタだろ! それは俺様からじゃねえーっての!」
言葉は、言い切らない内に「ありがとうございました!」というお辞儀で掻き消された。
頬をボリボリと掻いて「分かったから、その分しっかり働けよ~」と返せば、また元気よく「はーい!」という言葉。仕方ねえな。全く調子の良いやつらだ、ほんと。
「──すみませんコーガ様。俺にまでこのような心遣いをしていただいて」
団員たちが去っていった後、その場に残った幹部が肩を竦めた。彼の手にももちろん、サンタの贈り物である黄色い果実が抱かれている。
「大変なのではありませんか、毎年、全団員にバナナを配って回るなど」
「しっかし、もはや伝統みてえなもんだから仕方ないわな」
「なかなか奇異なことをする先代がいたものですな・・・。女神の生誕祭に乗じようなどと、寛容的と言いますか、なんというか」
「まぁ、少なくとも100年前からやってるみてえだし」
後頭部で掌を組む。「ひ、100年前ですか」という幹部の相槌を聞きながら、コーガは白々明けの空を見つめた。
「嘘じゃねえぞ。当時の総長の日記にな、そう書いてあったんだよ。俺様はそいつを読んだんだ」
「はあ、日記を」
「なんでも齢一桁の子供がワケアリで入団してきたらしくてな、そいつ喜ばすために始めたんだと。そっからずっと続いてんだ、これは」
よっいせと、と唸りながら、コーガは横に置いてあった白い袋を背負う。
動いた途端、風に散らされたのはバナナの香り。コーガは後ろ手を上げた。
「じゃ、俺様地底班にも配ってくっからな、アジトは任せたぞ」
「はっ、お気をつけて、コーガ様」
「あ、そういや言い忘れてた。他の団員にも伝えといてくれや」
赤い装束の男は白い袋を揺らしながら、振り返った。
「メリークリスマス!ってな!」