2024/12月(7~37)
キイン、と鋭い金属音が鍛錬場に響く。がっちりと刃と刃で斜めに組み合った鍔迫り合い。仮面同士を突き合わせ、その奥に潜む双眼で睨みつけた後は、大きく刀を弾いて相手────模擬戦の練習を買った鍛錬班の幹部を、後ろに押しのけた。
如何に剣客といえど、純粋な力勝負になれば現役の若手に押し負けるのは道理だ。打っては引き、押し合いになる前に弾くを繰り返す。ただ淡々と相手からの攻撃に対処した。次第に、一手一手が大振りとなるのは彼の悪い癖に違いない。
鍛練班幹部が後ろに大きく跳躍し、距離をとった。地面に拳を突き立てた瞬間、空気の漏れるような音が耳を打つ。
土遁の術を今放つというのは果敢だ。しかし、このタイミングを待っていた。
それでなくとも土遁は、地面の砂をまき散らすことで視界が悪くなる。これに加えて札術で煙幕をはれば・・・案の定左見右見し始めた彼の背に回り、拳を振り上げる。気付いたころにはもう遅い。
「あだッ」
「はい、おしまい」
親指を握り込んだ拳でゴンッと殴ると、彼は頭を押さえて蹲った。
「さて、次は?」
ふぅ、と息を吐きながら振り返る──発煙札。ばふっ、と弾けて視界が奪われる。
「おおっ?」
身体を包むほどの煙の量だ。模擬戦にしては無駄使いじゃないだろうか。
後での説教を決めて飛びのいた瞬間、元居た場所にヒュッとクナイが飛んでいった。
「お見事。でも先輩、こちらですよ」
咄嗟に身をかがめると、横なぎの一閃。はらりと切られた髪の毛が舞う。
片手をついて足払いをするが、手ごたえはない。
靄が晴れると同時に姿を現したのは、諜報班の後輩だ。「ふふふ」という不敵な笑みに余裕が漂う。
「私、今日は調子がいいんですよ、先輩から一手とれるかもしれません」
「そうか。それは良かった。後輩の成長というのは嬉しいものだ」
「これは断ってるのですよ、怪我をさせたら申し訳ありませんと」
「まぁ、口だけじゃなく、実際にやってみてくれ」
上段に構え、振り下ろしたと同時に風の刃を襲ってくる。それらを横跳びで交わしたついでに、クナイを投げた。
「ふんっ」と端から叩き落とす彼に、ありったけを投げ続ける。
「やけくそですか、先輩!」
笑いの混ざった挑発。実際、彼には随分余裕があるらしい。
しかし、だからこそ油断が生じる。発煙札を切っ先に仕込んだクナイすら叩いてしまうのだから。
刃の閃きと共に煙が彼を包む。「うおっ」と顔を背けた瞬間を、決して見逃さなかった。
「・・・っ」
仮面の隙間に差し込んだのは、黒光りするクナイの切っ先。
彼が息を飲むのが分かった。
「私の勝ちでいいかな?」
諜報班の幹部は呼吸すら止めたように身動ぎしなかったが、やがて風斬り刀を手放して、両手を挙げた。
面下の汗を拭いながら、辺りを見回す。
「みんな、まだまだだなぁ」
勝ちを譲った二人の悔しそうな様子に、詰所勤めの古強者は使い込んだクナイをしまった。
如何に剣客といえど、純粋な力勝負になれば現役の若手に押し負けるのは道理だ。打っては引き、押し合いになる前に弾くを繰り返す。ただ淡々と相手からの攻撃に対処した。次第に、一手一手が大振りとなるのは彼の悪い癖に違いない。
鍛練班幹部が後ろに大きく跳躍し、距離をとった。地面に拳を突き立てた瞬間、空気の漏れるような音が耳を打つ。
土遁の術を今放つというのは果敢だ。しかし、このタイミングを待っていた。
それでなくとも土遁は、地面の砂をまき散らすことで視界が悪くなる。これに加えて札術で煙幕をはれば・・・案の定左見右見し始めた彼の背に回り、拳を振り上げる。気付いたころにはもう遅い。
「あだッ」
「はい、おしまい」
親指を握り込んだ拳でゴンッと殴ると、彼は頭を押さえて蹲った。
「さて、次は?」
ふぅ、と息を吐きながら振り返る──発煙札。ばふっ、と弾けて視界が奪われる。
「おおっ?」
身体を包むほどの煙の量だ。模擬戦にしては無駄使いじゃないだろうか。
後での説教を決めて飛びのいた瞬間、元居た場所にヒュッとクナイが飛んでいった。
「お見事。でも先輩、こちらですよ」
咄嗟に身をかがめると、横なぎの一閃。はらりと切られた髪の毛が舞う。
片手をついて足払いをするが、手ごたえはない。
靄が晴れると同時に姿を現したのは、諜報班の後輩だ。「ふふふ」という不敵な笑みに余裕が漂う。
「私、今日は調子がいいんですよ、先輩から一手とれるかもしれません」
「そうか。それは良かった。後輩の成長というのは嬉しいものだ」
「これは断ってるのですよ、怪我をさせたら申し訳ありませんと」
「まぁ、口だけじゃなく、実際にやってみてくれ」
上段に構え、振り下ろしたと同時に風の刃を襲ってくる。それらを横跳びで交わしたついでに、クナイを投げた。
「ふんっ」と端から叩き落とす彼に、ありったけを投げ続ける。
「やけくそですか、先輩!」
笑いの混ざった挑発。実際、彼には随分余裕があるらしい。
しかし、だからこそ油断が生じる。発煙札を切っ先に仕込んだクナイすら叩いてしまうのだから。
刃の閃きと共に煙が彼を包む。「うおっ」と顔を背けた瞬間を、決して見逃さなかった。
「・・・っ」
仮面の隙間に差し込んだのは、黒光りするクナイの切っ先。
彼が息を飲むのが分かった。
「私の勝ちでいいかな?」
諜報班の幹部は呼吸すら止めたように身動ぎしなかったが、やがて風斬り刀を手放して、両手を挙げた。
面下の汗を拭いながら、辺りを見回す。
「みんな、まだまだだなぁ」
勝ちを譲った二人の悔しそうな様子に、詰所勤めの古強者は使い込んだクナイをしまった。