2024/11月(1~6)
・・・ちょっと、タイミングが悪かったかも。
「何やってる!?動きが遅い!体重をかけ過ぎてるんだ、いつでも飛びのけるように重心は両足!腹に力を込めろ!」
指導に熱がこもり過ぎているのか、部屋の前に立っても彼──鍛練班の幹部殿はちっとも気付かない。いつもだったら目敏く見つけられて、「よく来たな!」なんて。笑顔に憚らない声で挨拶してくれるのに。
ただ、私も上司から定期連絡を渡すように頼まれてやってきている。言わば仕事の一環だ。とはいえ、この部屋の中にいる団員全てが真剣に鍛練しているところへ「すみません」と声を掛けられるほど、私は勇ましい女ではなかった。
急ぎではないし、大人しく部屋の隅で待っていよう。
その辺りへ無造作に置かれた木箱に、足を揃えて腰掛ける。
「ほらほらどうした、脇ががら空きだ!意識が足りない、集中力も足りない!やり直し!」
部屋にはきはきと響く彼の声。いつだって熱量のある指導を欠かさないけれど、今日はなんだか普段と様子が違う。ちょっと荒々しくて、ぶっきらぼうで、言葉にだって過不足が無い感じ。
『弓幹を握る手に力が入り過ぎてる。弓は腕だけで引くんじゃないんだ、もっと背中を使って』
『剣は斬るより叩くイメージで。壊れても問題ないから、気にせずに』
昨日はもっと落ち着いていて、優しくて、・・・胸の内側が、くすぐったくなるような声だったのに。
「姿勢が崩れてるぞ、背中と肩回りが弱い!今から筋トレだ、最後に柔軟も忘れるな!」
始め!の号令に、団員たちの「はいっ!」という勇ましい返事が続く。それからも、部屋の端で素振りをしていた構成員に刀の握り方を指導したり、実際に弓を引いて見せたり。
私の前では使わない言葉遣いが、次々に繰り出される指示が、一切無駄のない動きが。なんだか薄暗い部屋の中で、彼だけが色鮮やかに見える。喧騒の中でも、彼の声だけが耳の中に飛び込んでくる。
知らない彼を、初めて見つけてしまったみたいで。
「ど、どうしたんだそんなところで!来てたんだったら言ってくれれば良かったのに!」
振り返った瞬間、遂に私を見つけたらしい。即座に駆け寄ってくる彼が言う。
「邪魔したくなくて。えっと、定期連絡です。どうぞ」
「わざわざすまない。・・・ああっ、惜しいな。早くに気付いていれば、もっと話しができたのに!」
愛情に憚らない彼に、笑って首を振った。
「たまには、気付かない時があっても良いものですよ」って。
「何やってる!?動きが遅い!体重をかけ過ぎてるんだ、いつでも飛びのけるように重心は両足!腹に力を込めろ!」
指導に熱がこもり過ぎているのか、部屋の前に立っても彼──鍛練班の幹部殿はちっとも気付かない。いつもだったら目敏く見つけられて、「よく来たな!」なんて。笑顔に憚らない声で挨拶してくれるのに。
ただ、私も上司から定期連絡を渡すように頼まれてやってきている。言わば仕事の一環だ。とはいえ、この部屋の中にいる団員全てが真剣に鍛練しているところへ「すみません」と声を掛けられるほど、私は勇ましい女ではなかった。
急ぎではないし、大人しく部屋の隅で待っていよう。
その辺りへ無造作に置かれた木箱に、足を揃えて腰掛ける。
「ほらほらどうした、脇ががら空きだ!意識が足りない、集中力も足りない!やり直し!」
部屋にはきはきと響く彼の声。いつだって熱量のある指導を欠かさないけれど、今日はなんだか普段と様子が違う。ちょっと荒々しくて、ぶっきらぼうで、言葉にだって過不足が無い感じ。
『弓幹を握る手に力が入り過ぎてる。弓は腕だけで引くんじゃないんだ、もっと背中を使って』
『剣は斬るより叩くイメージで。壊れても問題ないから、気にせずに』
昨日はもっと落ち着いていて、優しくて、・・・胸の内側が、くすぐったくなるような声だったのに。
「姿勢が崩れてるぞ、背中と肩回りが弱い!今から筋トレだ、最後に柔軟も忘れるな!」
始め!の号令に、団員たちの「はいっ!」という勇ましい返事が続く。それからも、部屋の端で素振りをしていた構成員に刀の握り方を指導したり、実際に弓を引いて見せたり。
私の前では使わない言葉遣いが、次々に繰り出される指示が、一切無駄のない動きが。なんだか薄暗い部屋の中で、彼だけが色鮮やかに見える。喧騒の中でも、彼の声だけが耳の中に飛び込んでくる。
知らない彼を、初めて見つけてしまったみたいで。
「ど、どうしたんだそんなところで!来てたんだったら言ってくれれば良かったのに!」
振り返った瞬間、遂に私を見つけたらしい。即座に駆け寄ってくる彼が言う。
「邪魔したくなくて。えっと、定期連絡です。どうぞ」
「わざわざすまない。・・・ああっ、惜しいな。早くに気付いていれば、もっと話しができたのに!」
愛情に憚らない彼に、笑って首を振った。
「たまには、気付かない時があっても良いものですよ」って。
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