あの夢の続きを(翡翠様リクエスト)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
生徒たちが続々と登校してくる中、名前は妓夫太郎を探してキョロキョロと辺りを見回していた。
それを目にした生徒の大半は、朝からどうかしたのだろうかと、不思議そうに眺めるばかり。
まさか、彼女の探し人が学園随一の不良少年だとは、誰も思っていなかった。
ブロロロ……、
そんな中、バイクの音が鳴り響き、皆が慌てて道を開ける。
この学園で、冨岡の追撃をうまく交わし、バイクで通学している人など彼しかいない。
それを知っている名前は、皆が開けたその道を迷わず走り抜けていく。
そして、自転車置き場の一角に堂々とバイクを乗り捨てた妓夫太郎の姿を確認すると、名前は彼へと駆け出した。
「なっ!………名前?」
「妓夫太郎さんっ、梅ちゃん、…ごめんなさいっ」
いきなり胸元に飛びつかれ、驚きの声を漏らした妓夫太郎に名前はわんわんと泣きついた。
先日珍しく反論してきたと思えば、久しぶりに声をかけてきた名前は号泣しながら飛びついてくるわで、戸惑いを隠せない妓夫太郎だが、ふと周りの視線に気がつくと「何見てやがるんだぁぁ」とドスの効いた声で、周りの生徒たちへとガンを飛ばした。
「……んで、何でお前は泣いてんだぁぁ?」
そして周りがオロオロと視線を逸らす中、名前の顔を覗き込み、妓夫太郎は優しく眉を下げた。
「私、……思い出したんですっ、」
「…‥思い出した?」
「……妓夫太郎さんが言ってくれた言葉も、そばに居てくれたあの日々も、伝えきれてない思いも……全部、思い出したんですっ、」
そう言って顔を上げた名前は、ぐっと眉間に力を入れて溢れる涙を堪えると、驚く妓夫太郎へと笑いかける。
「妓夫太郎さんの事が好きです……今も、昔もこの想いだけは変わりません……貴方の側にいさせて下さい」
その言葉にビタッと動きを止めた妓夫太郎は、照れ隠しで頬を掻くと、ぽんと名前の頭に手を置いた。
「思い出さなくても側にいられりゃあいいと、そう思っていたんだがなぁぁ」
「……妓夫太郎さん」
「またこうしてお前を、抱きしめられるようになるなんて……夢みてーだなぁ」
名前ですら見た事がないような穏やかな笑みを浮かべた妓夫太郎に、名前が頬を赤くすれば、側にいた梅も嬉しそうに口角を上げた。
だがその直後、二人を茶化すようにザワザワと集まり始めた野次馬に、妓夫太郎の拳が震え出す。
そして次の瞬間には、周りにいた生徒たちに妓夫太郎は啖呵を切るように口を開いていた。
「テメェらはいつまで見てやがんだぁぁぁ……見せ物じゃねえんだぁ。とっとと失せろぉ!!……それから」
そう言って外野に見せつけるように名前の肩を抱いた妓夫太郎は、ニヤリと口元を吊り上げた。
「コイツは俺の女だぁぁ。……手ェだしたらぶっ殺すからなぁぁ」
先程までの柔らかな笑顔は何処へやら……
挑発的な笑みを浮かべる妓夫太郎に、偶々、そこに居合わせた生徒たちは冷や汗を流しながら、何度も大きく頷いた。
******
ペラリ、ペラリとページを巡り、名前は小さく笑みをこぼす。
それを横から覗き込んだ妓夫太郎も、名前に釣られて口元を吊り上げる。
「懐かしいですね。あれから、もうすぐ六年になるなんて……あっという間に感じてしまいます」
そう言って写真を指先で撫でた名前は、幸せそうに目元を下げて、妓夫太郎へと笑いかけた。
「妓夫太郎さん、いつも側にいてくれて、ありがとうございます。」
「…俺がいたくて一緒にいるんだから、気にするなぁぁ。それに、これからは嫌でもずっと一緒だからなぁ」
そう言って名前を後ろから抱きしめた妓夫太郎に、名前は思わず頬を染めた。
高校時代に想いを告げてから、妓夫太郎は変わらず名前の側に居続けた。
高校は梅の送り迎えと託けて、名前に頻繁に会いに来てくれたし、結婚は、名前が大学を卒業してからだと、その日を待ち続けてくれたのだ。
「ふふっ、妓夫太郎さんと一緒にいられて嫌な筈ないです。きっと、皆んなに羨ましがられてしまうんじゃないかしら?」
「……んな訳あるかよぉぉ」
照れ隠しの言葉を口にしながら、名前の手にそっと自身の掌を重ねた妓夫太郎は、写真の二人を覗き込む。
……昔の出会いは最悪だった。
敵同士で出会い、名前には酷いことを沢山した覚えもある。
一方的な感情をぶつけ、漸く想いを受け入れた名前を、簡単にまた一人にした。
それでも、俺を追って地獄にまで着いてきた名前を、愛おしく思ったのは確かだし、再び出会う事があるならば、今度は必ず守り抜くと胸に誓った。
だから、再び再会した時は、柄にもなく泣きそうになったし、俺のことを覚えてなくても……そんな小さなことは関係ないと思っていた。
だが、覗き込んだ写真には
桜舞う中、自分に寄り添い、幸せそうに笑っている名前の姿……その周りに笑顔を浮かべる気心知れた友人達。
あの頃、手を伸ばしても叶うことはなかった想いを漸く手にした幸せに、妓夫太郎は幸せを噛み締めるように、小さく笑みをこぼすのだった。
******
翡翠様リクエストありがとうございました。
(お相手:謝花妓夫太郎)
設定は鬼滅学園。前世を覚えていない夢主を思い続ける妓夫太郎のお話。※数話に分けると思われます。詳細*妓夫太郎夢
たいっっっへんお待たせして、申し訳ありませんでしたm(._.)m
お話が上手くまとまらず、結局5話に分けさせていただきましたが、リクエストに沿えていますでしょうか?
これは違うよ!と言う場合には、書き直しますのでお気軽にお声かけください。
2022/03/23 おもち