スタァと黒服

 女の性が魔か天かなんぞ、誰が図れるだろうか。

「旦那様、わたしの旦那様。どうして今日は遅かったの?」
「すみません。今日は仕事で部下の面倒を見ていたので」
「女の人?」
「そうですよ」
「じゃあ、ちゃんと指輪してた?」
「してますよ。結婚した意味ないでしょう」
「そうねぇ。ねえ、今日はしんどい?」
「オレの名前なんですか?」
「ひろ」
「そうですよ……ちょっぴり合ってます」
「じゃあ、だいくん」
「漢字はあってます。大きいですからね」
「ベッドから出るわ。今日ね、美味しくできたの」
「あー、先にシャワー…一緒に入る?」
「うん! わたしの夢、叶えてくれてありがとう」
「待ってて。貯めてくる」
「あ、キスされちゃった」
「ご飯はその後でにしましょう」

「ねえ、ひろさん。だいくん、やっぱり旦那様」
「なんです?」
「春ってお名前付いてる? 初めて会ったとき、はるって読めた気がして」
「胸、大きくなってません?」
「はる、旦那様に毎日揉まれてるから」
「明日は十一時半出勤ですよ」
「うん、そう。お仕事、楽しくない。接客したい」
「だめですよ。ララちゃんは、ゆっくりとした仕事についててください」
「嫌だ。わたしどんどんおばかさんになっちゃうし」
「ララさんのつらいことは、オレが無くしてあげますから」
「あ、あ。やめて、あ」
「可愛い」
「寒い。お風呂上がって温かいご飯食べてお布団に潜りたい」
「ちょっと温かったですね」
「あがろ。寒い」
「熱いシャワー浴びてから、あがりましょう」

「今日のお仕事どんなだった?」
「んー、普通に発注とか取引先と電話とか…変わりなくですよ」
「お疲れ様。良い子、良い子」
「好きですねえ、それ」
「わたし、子ども。あなたの望むまま」
「オレのwifeは可愛いですねぇ」
「そう! わたし、旦那様の、奥様」
「オレのwifeはなにが欲しいんですか?」
「お食事が楽しければそれで幸せやよ」
「じゃあ、ごちそうさまでした。美味しかったよ」
「お粗末さまでした」

 このひとの好みを演じているわけではなかった。ただ、なぜか子どもじみた話し方と態度になってしまって、わたしは、わたしの心はきっと壊れてしまったのだと思った。浮気されていると、疑っていたわけじゃない。何かある度に、逐一連絡をくれるし、とても幸せ。ただ、取り留めなく不安が溢れるとするならば、わたしはこのひとのなにを愛しているのだろうと、ふとしたときに恐れてしまう。

「ララちゃん、今日はお出かけしましょっか」
「しんどい」
「気分転換しましょう」
「うん、楽しみ」

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