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「学、舞台で疲れてない?」
「疲れた。でも、オレうれしうれし」
「そう?」
「うん、ララ来てくれてありがとね」
「東京に行ってないよ」
「そう。知ってる」
学の手を握りしめた。恋人らしいことをしていると、わたしたちが夫妻だということが、素敵なことだと思う。
「なあに、それ」
「また予言しちゃった」
「籍入れたよ。ララ来れんけど、色んな名前で入れたよ」
「学のこと、買ってやる。わたしが夜鷹から花魁にしてやる。なんて、思ったけど、人気出てほしないわ」
「一緒にいてるのに、まるで文のやりとりしてるみたい」
「そう? オレは抱きしめたら、ララの温もり感じられるし、好き」
「わたしも好き。学が好き。学がいい。なんでなんなろなぁ」
「なにが?」
抱きしめ返して、学の胸元に顔を埋めた。学の服ってチクチクする。なんで、学やったんやろ。いいねくれてるわけじゃないし、わたしがただ狂気じみていると思うメッセージをあげてるだけ。見てるんだろうな、とは思うし。もちろん、他の人も。
「学好きやぁ。なんであたしと一緒にいてくんないの」
「ララ?」
「そ、わたしララ。学のララ。学の…もの」
「籍入れたのに離ればなれつら」
「今は二人きり。秘密」
二人の間には、何があるだろう。仁義、憧憬、渇仰、耽溺、蠱惑、夢幻。いろいろ難しい言葉を思い浮かべて、愛よりもとうとくて、恋よりもにぶいもの。
「ララってアホ。オレかなしかなし」
「かなしかなし君をば思ふ。とこしへの愛などあるかしらん」
「それってこわい」
「そうよ。死んだ歌」
「ちゃう」
「じゃあ、なに?」
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