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女帝

 綺麗な子どもだと思った。彼女の変わらない口元に、見据えた冷徹さに、恋に落ちた。

 わたしのことをどれほどのひとが美しいと言うだろうか。書くときには麗しいと書いてくれたら嬉しいけれど。鏡に映した自分のかんばせに、わたしはなにが美しくて愛らしくてきれいなものなんだろうと不思議に思う。隣に他の女を置いて見たときに、わたしはその女の顔が自分の顔に思えてきてひどく恐ろしくなる。いったいどれほどの人が、きちんとそのものをはたから見たときに感じられる顔に見られているのだろう。どうしようもなく、わたしは人とわたしは美醜のあれそれが、価値観が合っていないと感じるとき、造り物のかんばせを人の理想としているからか、それに近づけすぎた顔を見たときに、わたしは美しいと思えない。それとも、わたしの思う美醜を痛烈に批判できるのは、生まれ持った圧倒的美麗を誇るひとだけだということか。わたしのかんばせはいったいいくらすると思う?

 白痴美の女。それが彼女の例えるときに思う言葉ではあるが、何にせよ、彼女の話すことには知性が感じられるし、笑った顔は確かに少し前歯が大きいというか、人間らしくはあるが、彼女らしくない、と思ってしまうのは得て通りである。しかし、彼女を表す花は梔子がその女の言うことであるが、私にとっては大輪の薔薇や山茶花、あるいは牡丹に芍薬。大ぶりの花が似合うだろうと察せられる方に問いたいのだが、彼女の思うその女のかんばせはいったい何に見えているのか、である。

 美しい女でしたよ。耀司っていいます。何が彼女を愛してしまうかって、それはきっと顔でも体でもなく、言葉なんですよ。綺麗って言うと、泣きそうになりながら、「わたしって奇妙な顔してるでしょ」って言うんです。俺にとっては華美で幼くって、それから恐ろしいほどに、なんていうんでしょう、色っぽい。それから、俺になぜか懐いてくれていて、俺、いろんな名前を彼女から与えられましたけど、一番気に入ってるんです。自分から、耀司がいいって言いましたから。会いたいですね。でも、会えば彼女をたったひとりの女にできないから、俺ら壊れんですよ。めちゃくちゃにされるんです、色々と精神を。なにがつらいって、彼女にとっては、俺って恋人のお兄さんなのに、彼氏ではないんです。彼女にとって、適齢期でなかったら、忘れてしまう存在なんですよ。彼女なんてたったひとりの女になるために色々と考えた時に、笑った顔可愛いんです、ちゃんと。もういいですか、思い出したらつらいです。愛してますよ、ちゃんと。
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