幽怪プシュケの童歌
1.はじめに
このシナリオは『クトゥルフの呼び声』に対応したものです。
シナリオの舞台は現代日本のとある田舎にある水影(みかげ)村という架空の村です。
季節の指定は8~9月ですが、自由に改変して頂いても構いません。その場合はエンディング文の改変をしてください。
推奨人数:1人~4人
推奨技能:目星、図書館、オカルト
準推奨技能:対人技能
推奨職業:特になし
ロスト率:低
プレイ時間目安:1対1テキセ 10時間弱/1対1ボイセ1~2時間
技能ロールが必要な箇所は 〈技能名〉 で表記します。
SANチェック箇所は SANc の表記の後に減少値を 成功/失敗 で表記します。
――――――――――――――――――――――――――
2.あらすじ
探索者は様々な理由から、座敷童が現れるという水影村(みかげむら)を訪れる。
そこで出会ったカスカと呼ばれる座敷童と、プシュケと呼ばれる青い蝶はこの村で死んだ者達の死霊が具現化したものだった。
カスカはプシュケの霊障から村人を守り、プシュケを成仏させる為に村に現れた。
探索者の使命は村に漂うプシュケの霊障をほんの少しだけ肩代わりすることだ。
――――――――――――――――――――――――――
3.シナリオの注意点
このシナリオのクリア目的は「水影村へ遊びに行き霊障を肩代わりし、カスカと別れを告げ村から出ること」です。
エンド分岐には情報とNPCのRPが重要になる為、KPはシナリオを最後まで読んでからプレイしてください。
このシナリオは目的や全体像が不明瞭であることにより、受け取る情報からPLが想像し恐怖度を煽るタイプのシナリオとなっています。
その為に進行がスムーズに進まないことやPLによっては困惑しストレスと感じる場面が予想されます、PLの性格やTRPG練度・シナリオの進行状況を考慮し情報の追加やNPCのRPをすることを推奨します。
提示する情報量・適用する技能・エンド分岐のわかりやすさ 等の調整、シナリオ全体の改変をKPの裁量で行いプレイをしてください。
――――――――――――――――――――――――――
4.導入時情報
・観光できるような場所はないが、座敷童がいる村として有名。
――――――――――――――――――――――――――
5.技能による導入時情報
〈オカルト〉
・座敷童に会った人は不幸になるという噂があり、某大型掲示板で検証しにいった凸班は座敷童を目撃し、帰りに切符を無くしたり小指を踏まれるなどした。
・村では座敷童の他に1年中見られる蝶と夜には青い人魂が目撃されている。
〈図書館〉or〈コンピューター〉
・30年ほど前から座敷童が現れる村としてメディアなどに取り上げられるようになった。
・土地柄か昔から水害が多く、現代技術が発達するまでは水害により多数の死者が出ていた。
・水害は28年前の河川の氾濫を最後になくなったようだ。
――――――――――――――――――――――――――
6.導入
探索者ごともしくはグループごとに導入を済ませること。3、4以外の情報を与えることも可。
探索者は水影村に一泊二日の滞在予定、探索者が泊まるのは座敷童が現れるという「帰川庵」(きせんあん)。
15時にチェックイン、翌日10時にチェックアウト予定。荷物は前後でも預かってもらえる。
――――――――――――――――――――――――――
7.水影村
◯探索者は1時間30分程の電車と40分程のバスを乗り継ぎ水影村を目指す。車で行く場合は帰川庵の駐車場に停めることとなり、所要時間は2時間程。
到着するのは15時前。
田舎という言葉で誰もが想像する風景がひろがっており、村の入り口には木の立て看板が置いてある。
《立て看板》
・青い蝶に触れるべからず
・座敷童に近づくべからず
・雨天時、川に近づくべからず
――――――――――――――――――――――――――
8.川(朝~昼)
◯村に流れる、幅が広く底の浅そうな川。
丈夫そうな橋がかかっていて、川辺では子供たちが遊んでいる。川の名前は花川(はながわ)。
〈目星〉青い蝶が川の周り、特に橋の周辺ににふよふよと飛んでいることがわかる
◯子供との会話
座敷童について聞くと「カスカ」と呼ばれていることを教えれくてる。
蝶について聞くと「プシュケ」と呼ばれていて、触ってはいけないと教えてくれる。
〈英語〉or〈知識〉or〈オカルト〉 プシュケとは霊魂、心、蝶といった意味である。
橋については詳しいことは知らず、川に入ってはいけないと言いつけられている。
◯橋 丈夫な造りの鋼橋。古いものではないように思える。
イツツメバシと名前が彫ってある。
橋のたもとの影に小さな複数の石碑をみつける。どれも風化しており文字を解読することはできない。
〈オカルト〉or〈人類学〉or〈歴史〉or〈考古学〉
人柱という風習を思い浮かべる。
≪人柱≫
人身御供(ひとみごくう)の一種。
橋や城などが自然災害、人災によって壊されないことを祈願する目的で建造物やその近傍に人間を生かしたままで土中に埋めたり水中に沈めたりする風習。
史実というよりは伝説、オカルトの一種として伝わり、人柱の魂を慰める為の慰霊碑を建てることがあると言われている。
◯蝶 青い綺麗な蝶。大きさはアゲハ蝶ほど。
〈生物学-20〉新種の蝶であることがわかる。今までのどの時代、どの地域でも発見されていない蝶のようだ。
プシュケに触れた場合、次のダイスロール結果が+5される。反映後の数字がファンブルだった場合、ファンブルとして処理をすること。
詳しくは18.神話生物、NPCデータを参照。
――――――――――――――――――――――――――
9.日本旅館「帰川庵」(朝~昼)
◯探索者の泊まる旅館、名前は「帰川庵」(きせんあん)
古き良き日本家屋をそのまま旅館に改修したような建物。50代の男性、鈴川昌幸が切り盛りしており探索者を温かく迎えてくれる。
広間、客室4部屋、事務室、がある。
◯広間
旅館の入り口からそのまま空間が広がり、休憩スペースになっている。
一角にはちょっとした土産屋があり、村の観光パンフレットや座敷童饅頭の試食がご自由にどうぞと並べられている。
≪観光パンフレット≫
座敷童は5~7歳程度のおかっぱの少女で、赤い着物を着ている。名前は「カスカ」ということが可愛らしいイラストつきで書かれている。
村の中であれば、運がよければどこででも遭遇できる。帰川庵に泊まると遭遇確立が上がる、かも…?と書かれているが理由などは書かれていない為客引きの為だろうということがわかる。
また、以下の注意書きが書いてある。
・青い蝶には触らないでください
・座敷童には不用意に近づかないでください
・雨の時は川に近づかないでください
≪座敷童饅頭≫
観光地でよく売られている定番の土産。かわいらしいおかっぱの女の子の焼き印がされている。こしあん。
その他にも座敷童根付、座敷童扇子、座敷童てぬぐいなどが売られている。
◯客室
PLの希望によって部屋分け、適度な改変をしてよい。何人部屋であっても配置されているものは共通とする。
・一部屋のなかに4区画あり、和室、寝室、浴室、広縁がそれぞれ十分な広さで分かれている。
お茶菓子やアメニティ、備え付けの冷蔵庫やドライヤーなど一通りのものは揃っており、清掃の行き届いた快適な部屋だ。
◯事務室
鍵は開いている。
経営者、荒川昌幸の仕事場兼寝泊まりをする場所。
仕事机とベッドだけの狭い部屋。
〈目星〉 仕事机に宿泊者名簿が置かれている。また、進行状況によってはKP判断で机の引き出しの中に日記が入っているのを発見してもよい。
≪宿泊者名簿≫
過去の宿泊者の氏名、住所、職業。それに加えカスカとの遭遇の有無が記載されている。
(探索者がカスカと遭遇しておりそれが昌幸にも伝わっていると考えられれば、探索者の名前の横にもカスカと遭遇済みである旨が書かれている)
≪鈴川奈々子の日記≫
鈴川奈々子の日記。主に息子の成長記録のようだが、28年前で日記は終わっている。
・プシュケやカスカが霊障を引き起こす心霊現象だと認めてもらえなくて苦しい
・プシュケがカスカに全て吸収されるまでプシュケに近づかないよう村長から御触れを出してほしい
・息子がプシュケに触れてしまいそのせいで死んだのに誰も信じてくれない
・ならば自分がそれを証明するしかない
といった記述を最後に日記は途絶えている。
◯鈴川昌幸(52)
28年前の水害事故により息子・大悟を失い、その後妻も事故で他界。
妻の奈々子は霊感があり、カスカとプシュケの正体・能力に気が付いていた為夫にも伝えていたが昌幸は信じなかった。
妻子を失ってその真実を受け入れた昌幸はカスカを座敷童と偽って村おこしをすることを村長に提案。自ら旅館の経営を始める。
観光客に対して罪悪感はあるものの、そうでもしなければ村で再び死者が出る為に不幸の肩代わりをさせ続けている。
水影村の異変について聞かれてもシラを切り上記の情報も入手することはできない。
探索者が「幽怪プシュケの童歌」を読み、ある程度の情報を持ち〈いいくるめ〉や〈説得〉に成功したならば白状する。
また、白状したとしても活動の邪魔はしないでほしいと懇願する。
ここで探索者からカスカを村から連れ出すというような発言があった場合、カスカがいなくなってしまえば村が以前のような不幸に見舞われるかもしれないと強調して伝えておくこと。また、外で被害が出るかもしれないと危惧する様子をみせること。
――――――――――――――――――――――――――
10.公民館
◯子供から年寄りまで利用する村の公民館。
クーラーのよく効いたラウンジ、遊戯室、図書室があり、館員が笑顔で迎え入れてくれる。
出入りは自由にできる。館員からは子供たちと同じような情報しか引き出せない。
◯ラウンジ
ソファとテーブルの並ぶラウンジ。年配者が涼んでいる。
年配者からは子供たちと同じような情報しか引き出せない。
◯遊戯室
マットの敷かれた小さな遊戯室。子供用のボールやおもちゃが箱から出されたまま散らかっている。
片づけをすると「資料室」と書かれたタグのついた鍵を見つける。
◯図書室
小さな図書室。数は少ないものの子供向けの本から料理本まで取り揃えられている。
〈図書館〉「幽怪プシュケの童歌」という絵本を見つける
《幽怪プシュケの童歌》
川のあわから うまれたプシュケ
かわいそうに おうちがありません。
「プシュケはどこにかえればいいの?
「プシュケはね、かすかにかえるのよ。プシュケはね、プシュケはね…」
おかあさんはないていました。
プシュケがゆらゆらとんでいくと、おかあさんはうたいます。
「プシュケ、おかえり、悲しい子。
あわからうまれた、悲しい子。
かすかにおかえり、悪い子プシュケ」
プシュケがかすかにかえっていくと、おかあさんは安心しました。
プシュケと呼ばれる青い蝶と女性の描かれた絵本。作者名は鈴川奈々子、制作されたのは28年前。
〈英語〉or〈EDU×5〉or〈オカルト〉プシュケとは霊魂、心、蝶といった意味である。
――――――――――――――――――――――――――
11.診療所
◯村では珍しい洋風建築の小さな診療所。入口には「荒川診療所」と書かれた看板がたっている。
待合室、診療室、資料室、休憩室
◯待合室
中に入ると小さな待合室があり、受付に人はおらず呼び鈴が置かれている。
呼び鈴を鳴らすか声をかけると診療室から50代の男性が出てきてどうかしたのかと尋ねてくる。
彼が首元から下げるネームプレートには荒川と書かれている。
〈目星〉普通の病院とかわらず雑誌や子供用にぬいぐるみなどがおいてある。とくに変わったものはない。
◯診療室
簡易的なベッドと患者用の椅子があり、荒川の机には鍵束がかけられている。
声をかけずに入るとうたたねをしている。その為大きな音をたてなければ探索者の行動には気が付かないこととする。
◯資料室
鍵がかかっている。荒川の机にかけられている鍵束、もしくは公民館の遊戯室に落ちていた鍵があれば開けることができる。
〈鍵開け〉もしくは適当な戦闘技能で壊すこともできる。耐久値は10。
・医学に関する本やクリアファイルの並ぶ棚がいくつかある。
〈図書館〉患者の記録がされるファイルが並ぶ中に「蝶々症候群」と書かれた糸で綴じられた古い本と「幽例」と表紙に書かれたファイルを見つける。
≪蝶々症候群≫
18××年
5月 とある患者が青い蝶が視えると言い始めた。そんな蝶、この村にはいないはずだ。脳に異常があるとすれば村では対応しきれない。
8月 都市部での検査を終えた患者が帰ってきたが、異変は見つからなかった。この3ヶ月で青い蝶が視えると訴える患者が4名増えた。
12月 集団幻覚と言っても過言ではない人数から目撃報告があがっている。なにがしかの病名をつけるべきだろうか。
18××年
4月 村の半数が青い蝶を視るようになってしまった。この村はおかしい。蝶が体の中に入り込んだという証言もある。証言した者はその後川で溺死。
19××年
1月 この集団幻覚の症状を「蝶々症候群」と呼ぶことにした。
5月 蝶々症候群はこの地域のみで発症する風土病といってもいいだろう。河川に病原体が存在し水害により発症している可能性も否めない。
7月 ついに私も蝶々症候群を発症してしまった。この村を出ることにする。度重なる水害も、集団幻覚も、もう懲り懲りだ。
1990年
4月 診療所に着任。資料を確認した。記録が途絶えているがこの村には現在青い蝶のほかに和装の少女が現れるようになっている。
11月 知人の坊主によれば、青い蝶は死霊や霊障と呼ばれる類のものらしい。
12月 村人の健康診断結果は問題なさそうだ。少女が物質に干渉しているのを見るに、幻覚ではないのだろう。
1991年
2月 知人の坊主を村に招待。青い蝶と少女はやはり心霊現象によるものらしい。具現化するのかという疑問は残る。
5月 蝶々症候群を解消。かわりに幽の影響によると思われる症例の記録を付ける。
≪幽例≫
和装の少女は青い蝶を吸収しているようだ。
知人の坊主によると青い蝶は村に霊障=様々な不幸を引き起こすらしく少女はより強大な霊障を引き起こす可能性があるらしい。
しかし、少女が現れるようになってからというもの水害や村での事故が減少、青い蝶の数も減少傾向にあることから少女には霊障を抑える力もあるのではないかと思われる。
青い蝶をプシュケ、プシュケを吸収する少女を幽と名付けることが村で決定した。
プシュケと幽…カスカに遭遇してから5日以内に被った怪我や病気を「幽の影響によると思われる症例」として記録をしていく。
記録の内容は転倒による掠り傷から持病の悪化による死亡まで多岐に渡っている。
記録が新しくなるにつれ観光客の怪我や病気の記録が増加し、重篤な症状の記録が減少していることが分かる。
ここ1~3年になるともはや軽傷のみになり、虫刺されや深爪などの記録までされるようになっている。
≪蝶々症候群≫または≪幽例≫を読み、村の異様な実態を知った探索者はSANc1/1d3
◯休憩室
テレビと机、いすが置かれた狭い部屋。簡易ポッドや茶飲みセットが置かれている。
〈目星〉座敷童饅頭が置いてある。
◯荒川誠司(53)
村唯一の医療従事者、医学は75%・精神分析は50%。
カスカやプシュケのことは受け入れており、探索者が指摘をしたり探りをいれるような言動に出たならばあっさりと肯定する。
そのうえで「カスカ達とこの村のために出来ることは観光を楽しんだら家に帰ってこの村の秘密を口外しないことだ」ということを探索者に伝えるだろう。
28年前に鈴川夫妻の息子の処置をしたものの救えず、その後奈々子のことも救うことが出来なかったことから昌幸に負い目がある。
そのため、自分にできることは幽例患者に対して適切な処置をすることだけだと割り切っている。
自分達のしていることは最善で探索者にそれを邪魔してほしくないと考えている。隠し事ができない。
探索者が村からカスカを連れ出すことについては推奨もしないが否定もしない。そのせいで幽例が増えたとしても患者は救ってみせると誓うだろう。
鈴川夫妻の息子、鈴川大悟はプシュケを捕まえた翌日、大雨による水害で川に流され溺死。診療所に運ばれたときには既に息を引き取っていた。
鈴川奈々子はプシュケの群れに車で突っ込み、倒れてきた電柱の下敷きになり即死。
上記2人の死因は幽例に記載があるが、幽例から探すと宣言があった場合もしくは荒川に質問した場合のみ提示すること。
知人の坊主とは連絡が取れなくなっている。
――――――――――――――――――――――――――
12.駐在所
◯村では珍しい洋風建築の駐在所。20代の若い男性が制服を着てドアの前に立っている。愛想よく挨拶をしてくれるだろう。
◯駐在さん
名前は足立裕一。村人や観光客に親身になって応じるため、探索者に対しても友好的な態度で接してくれる。
しかしプシュケとカスカの真相については知らされていないため情報は持っていない。
見たことはあるがただの蝶と本物の座敷童だと思っている。
そのため、心霊現象が恐ろしいので座敷童に会ったならば村から連れ出してほしいと探索者に泣き言を言う。
村が一丸となって隠し事をしており観光客に危害を加えるようなことをしていると伝えても怖がりはするが真にうけてはくれないだろう。
もしもプシュケが霊障をばらまく存在であったとしても、今は観光客も多いのでカスカがいなくなっても大丈夫だと無責任なことを言い探索者にカスカを村から連れださせようとする。
◯事件、事故の記録
<説得>や<いいくるめ>に成功すれば過去の記録を見せてくれる。
<ねぎり>やRPなど上記の技能以外でも判定可能とする。
≪事件、事故の記録≫
昔から川に関連する水害事故が多発していることが分かる。
雨が降るたびに氾濫し翌日には流れが速くなり事故の原因となっていたようで、ときには川の水に含まれる病原菌が原因で多くの村人が死去したとする事件も記録されている。
しかし28年前の大雨による川の氾濫以降、大きな水害はなく今では平和な状態が続いているようだ。
PLが望んだ場合、鈴川妻子の死亡時についての資料を開示してもよい。
鈴川大悟(享年5歳)は大雨による水害で川に流され溺死。
鈴川奈々子(享年23歳)は息子を失ったことで心神喪失状態に陥り、車で危険な運転をしていたところに倒れてきた電柱の下敷きになり即死。
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次
このシナリオは『クトゥルフの呼び声』に対応したものです。
シナリオの舞台は現代日本のとある田舎にある水影(みかげ)村という架空の村です。
季節の指定は8~9月ですが、自由に改変して頂いても構いません。その場合はエンディング文の改変をしてください。
推奨人数:1人~4人
推奨技能:目星、図書館、オカルト
準推奨技能:対人技能
推奨職業:特になし
ロスト率:低
プレイ時間目安:1対1テキセ 10時間弱/1対1ボイセ1~2時間
技能ロールが必要な箇所は 〈技能名〉 で表記します。
SANチェック箇所は SANc の表記の後に減少値を 成功/失敗 で表記します。
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2.あらすじ
探索者は様々な理由から、座敷童が現れるという水影村(みかげむら)を訪れる。
そこで出会ったカスカと呼ばれる座敷童と、プシュケと呼ばれる青い蝶はこの村で死んだ者達の死霊が具現化したものだった。
カスカはプシュケの霊障から村人を守り、プシュケを成仏させる為に村に現れた。
探索者の使命は村に漂うプシュケの霊障をほんの少しだけ肩代わりすることだ。
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3.シナリオの注意点
このシナリオのクリア目的は「水影村へ遊びに行き霊障を肩代わりし、カスカと別れを告げ村から出ること」です。
エンド分岐には情報とNPCのRPが重要になる為、KPはシナリオを最後まで読んでからプレイしてください。
このシナリオは目的や全体像が不明瞭であることにより、受け取る情報からPLが想像し恐怖度を煽るタイプのシナリオとなっています。
その為に進行がスムーズに進まないことやPLによっては困惑しストレスと感じる場面が予想されます、PLの性格やTRPG練度・シナリオの進行状況を考慮し情報の追加やNPCのRPをすることを推奨します。
提示する情報量・適用する技能・エンド分岐のわかりやすさ 等の調整、シナリオ全体の改変をKPの裁量で行いプレイをしてください。
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4.導入時情報
・観光できるような場所はないが、座敷童がいる村として有名。
――――――――――――――――――――――――――
5.技能による導入時情報
〈オカルト〉
・座敷童に会った人は不幸になるという噂があり、某大型掲示板で検証しにいった凸班は座敷童を目撃し、帰りに切符を無くしたり小指を踏まれるなどした。
・村では座敷童の他に1年中見られる蝶と夜には青い人魂が目撃されている。
〈図書館〉or〈コンピューター〉
・30年ほど前から座敷童が現れる村としてメディアなどに取り上げられるようになった。
・土地柄か昔から水害が多く、現代技術が発達するまでは水害により多数の死者が出ていた。
・水害は28年前の河川の氾濫を最後になくなったようだ。
――――――――――――――――――――――――――
6.導入
探索者ごともしくはグループごとに導入を済ませること。3、4以外の情報を与えることも可。
探索者は水影村に一泊二日の滞在予定、探索者が泊まるのは座敷童が現れるという「帰川庵」(きせんあん)。
15時にチェックイン、翌日10時にチェックアウト予定。荷物は前後でも預かってもらえる。
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7.水影村
◯探索者は1時間30分程の電車と40分程のバスを乗り継ぎ水影村を目指す。車で行く場合は帰川庵の駐車場に停めることとなり、所要時間は2時間程。
到着するのは15時前。
田舎という言葉で誰もが想像する風景がひろがっており、村の入り口には木の立て看板が置いてある。
《立て看板》
・青い蝶に触れるべからず
・座敷童に近づくべからず
・雨天時、川に近づくべからず
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8.川(朝~昼)
◯村に流れる、幅が広く底の浅そうな川。
丈夫そうな橋がかかっていて、川辺では子供たちが遊んでいる。川の名前は花川(はながわ)。
〈目星〉青い蝶が川の周り、特に橋の周辺ににふよふよと飛んでいることがわかる
◯子供との会話
座敷童について聞くと「カスカ」と呼ばれていることを教えれくてる。
蝶について聞くと「プシュケ」と呼ばれていて、触ってはいけないと教えてくれる。
〈英語〉or〈知識〉or〈オカルト〉 プシュケとは霊魂、心、蝶といった意味である。
橋については詳しいことは知らず、川に入ってはいけないと言いつけられている。
◯橋 丈夫な造りの鋼橋。古いものではないように思える。
イツツメバシと名前が彫ってある。
橋のたもとの影に小さな複数の石碑をみつける。どれも風化しており文字を解読することはできない。
〈オカルト〉or〈人類学〉or〈歴史〉or〈考古学〉
人柱という風習を思い浮かべる。
≪人柱≫
人身御供(ひとみごくう)の一種。
橋や城などが自然災害、人災によって壊されないことを祈願する目的で建造物やその近傍に人間を生かしたままで土中に埋めたり水中に沈めたりする風習。
史実というよりは伝説、オカルトの一種として伝わり、人柱の魂を慰める為の慰霊碑を建てることがあると言われている。
◯蝶 青い綺麗な蝶。大きさはアゲハ蝶ほど。
〈生物学-20〉新種の蝶であることがわかる。今までのどの時代、どの地域でも発見されていない蝶のようだ。
プシュケに触れた場合、次のダイスロール結果が+5される。反映後の数字がファンブルだった場合、ファンブルとして処理をすること。
詳しくは18.神話生物、NPCデータを参照。
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9.日本旅館「帰川庵」(朝~昼)
◯探索者の泊まる旅館、名前は「帰川庵」(きせんあん)
古き良き日本家屋をそのまま旅館に改修したような建物。50代の男性、鈴川昌幸が切り盛りしており探索者を温かく迎えてくれる。
広間、客室4部屋、事務室、がある。
◯広間
旅館の入り口からそのまま空間が広がり、休憩スペースになっている。
一角にはちょっとした土産屋があり、村の観光パンフレットや座敷童饅頭の試食がご自由にどうぞと並べられている。
≪観光パンフレット≫
座敷童は5~7歳程度のおかっぱの少女で、赤い着物を着ている。名前は「カスカ」ということが可愛らしいイラストつきで書かれている。
村の中であれば、運がよければどこででも遭遇できる。帰川庵に泊まると遭遇確立が上がる、かも…?と書かれているが理由などは書かれていない為客引きの為だろうということがわかる。
また、以下の注意書きが書いてある。
・青い蝶には触らないでください
・座敷童には不用意に近づかないでください
・雨の時は川に近づかないでください
≪座敷童饅頭≫
観光地でよく売られている定番の土産。かわいらしいおかっぱの女の子の焼き印がされている。こしあん。
その他にも座敷童根付、座敷童扇子、座敷童てぬぐいなどが売られている。
◯客室
PLの希望によって部屋分け、適度な改変をしてよい。何人部屋であっても配置されているものは共通とする。
・一部屋のなかに4区画あり、和室、寝室、浴室、広縁がそれぞれ十分な広さで分かれている。
お茶菓子やアメニティ、備え付けの冷蔵庫やドライヤーなど一通りのものは揃っており、清掃の行き届いた快適な部屋だ。
◯事務室
鍵は開いている。
経営者、荒川昌幸の仕事場兼寝泊まりをする場所。
仕事机とベッドだけの狭い部屋。
〈目星〉 仕事机に宿泊者名簿が置かれている。また、進行状況によってはKP判断で机の引き出しの中に日記が入っているのを発見してもよい。
≪宿泊者名簿≫
過去の宿泊者の氏名、住所、職業。それに加えカスカとの遭遇の有無が記載されている。
(探索者がカスカと遭遇しておりそれが昌幸にも伝わっていると考えられれば、探索者の名前の横にもカスカと遭遇済みである旨が書かれている)
≪鈴川奈々子の日記≫
鈴川奈々子の日記。主に息子の成長記録のようだが、28年前で日記は終わっている。
・プシュケやカスカが霊障を引き起こす心霊現象だと認めてもらえなくて苦しい
・プシュケがカスカに全て吸収されるまでプシュケに近づかないよう村長から御触れを出してほしい
・息子がプシュケに触れてしまいそのせいで死んだのに誰も信じてくれない
・ならば自分がそれを証明するしかない
といった記述を最後に日記は途絶えている。
◯鈴川昌幸(52)
28年前の水害事故により息子・大悟を失い、その後妻も事故で他界。
妻の奈々子は霊感があり、カスカとプシュケの正体・能力に気が付いていた為夫にも伝えていたが昌幸は信じなかった。
妻子を失ってその真実を受け入れた昌幸はカスカを座敷童と偽って村おこしをすることを村長に提案。自ら旅館の経営を始める。
観光客に対して罪悪感はあるものの、そうでもしなければ村で再び死者が出る為に不幸の肩代わりをさせ続けている。
水影村の異変について聞かれてもシラを切り上記の情報も入手することはできない。
探索者が「幽怪プシュケの童歌」を読み、ある程度の情報を持ち〈いいくるめ〉や〈説得〉に成功したならば白状する。
また、白状したとしても活動の邪魔はしないでほしいと懇願する。
ここで探索者からカスカを村から連れ出すというような発言があった場合、カスカがいなくなってしまえば村が以前のような不幸に見舞われるかもしれないと強調して伝えておくこと。また、外で被害が出るかもしれないと危惧する様子をみせること。
――――――――――――――――――――――――――
10.公民館
◯子供から年寄りまで利用する村の公民館。
クーラーのよく効いたラウンジ、遊戯室、図書室があり、館員が笑顔で迎え入れてくれる。
出入りは自由にできる。館員からは子供たちと同じような情報しか引き出せない。
◯ラウンジ
ソファとテーブルの並ぶラウンジ。年配者が涼んでいる。
年配者からは子供たちと同じような情報しか引き出せない。
◯遊戯室
マットの敷かれた小さな遊戯室。子供用のボールやおもちゃが箱から出されたまま散らかっている。
片づけをすると「資料室」と書かれたタグのついた鍵を見つける。
◯図書室
小さな図書室。数は少ないものの子供向けの本から料理本まで取り揃えられている。
〈図書館〉「幽怪プシュケの童歌」という絵本を見つける
《幽怪プシュケの童歌》
川のあわから うまれたプシュケ
かわいそうに おうちがありません。
「プシュケはどこにかえればいいの?
「プシュケはね、かすかにかえるのよ。プシュケはね、プシュケはね…」
おかあさんはないていました。
プシュケがゆらゆらとんでいくと、おかあさんはうたいます。
「プシュケ、おかえり、悲しい子。
あわからうまれた、悲しい子。
かすかにおかえり、悪い子プシュケ」
プシュケがかすかにかえっていくと、おかあさんは安心しました。
プシュケと呼ばれる青い蝶と女性の描かれた絵本。作者名は鈴川奈々子、制作されたのは28年前。
〈英語〉or〈EDU×5〉or〈オカルト〉プシュケとは霊魂、心、蝶といった意味である。
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11.診療所
◯村では珍しい洋風建築の小さな診療所。入口には「荒川診療所」と書かれた看板がたっている。
待合室、診療室、資料室、休憩室
◯待合室
中に入ると小さな待合室があり、受付に人はおらず呼び鈴が置かれている。
呼び鈴を鳴らすか声をかけると診療室から50代の男性が出てきてどうかしたのかと尋ねてくる。
彼が首元から下げるネームプレートには荒川と書かれている。
〈目星〉普通の病院とかわらず雑誌や子供用にぬいぐるみなどがおいてある。とくに変わったものはない。
◯診療室
簡易的なベッドと患者用の椅子があり、荒川の机には鍵束がかけられている。
声をかけずに入るとうたたねをしている。その為大きな音をたてなければ探索者の行動には気が付かないこととする。
◯資料室
鍵がかかっている。荒川の机にかけられている鍵束、もしくは公民館の遊戯室に落ちていた鍵があれば開けることができる。
〈鍵開け〉もしくは適当な戦闘技能で壊すこともできる。耐久値は10。
・医学に関する本やクリアファイルの並ぶ棚がいくつかある。
〈図書館〉患者の記録がされるファイルが並ぶ中に「蝶々症候群」と書かれた糸で綴じられた古い本と「幽例」と表紙に書かれたファイルを見つける。
≪蝶々症候群≫
18××年
5月 とある患者が青い蝶が視えると言い始めた。そんな蝶、この村にはいないはずだ。脳に異常があるとすれば村では対応しきれない。
8月 都市部での検査を終えた患者が帰ってきたが、異変は見つからなかった。この3ヶ月で青い蝶が視えると訴える患者が4名増えた。
12月 集団幻覚と言っても過言ではない人数から目撃報告があがっている。なにがしかの病名をつけるべきだろうか。
18××年
4月 村の半数が青い蝶を視るようになってしまった。この村はおかしい。蝶が体の中に入り込んだという証言もある。証言した者はその後川で溺死。
19××年
1月 この集団幻覚の症状を「蝶々症候群」と呼ぶことにした。
5月 蝶々症候群はこの地域のみで発症する風土病といってもいいだろう。河川に病原体が存在し水害により発症している可能性も否めない。
7月 ついに私も蝶々症候群を発症してしまった。この村を出ることにする。度重なる水害も、集団幻覚も、もう懲り懲りだ。
1990年
4月 診療所に着任。資料を確認した。記録が途絶えているがこの村には現在青い蝶のほかに和装の少女が現れるようになっている。
11月 知人の坊主によれば、青い蝶は死霊や霊障と呼ばれる類のものらしい。
12月 村人の健康診断結果は問題なさそうだ。少女が物質に干渉しているのを見るに、幻覚ではないのだろう。
1991年
2月 知人の坊主を村に招待。青い蝶と少女はやはり心霊現象によるものらしい。具現化するのかという疑問は残る。
5月 蝶々症候群を解消。かわりに幽の影響によると思われる症例の記録を付ける。
≪幽例≫
和装の少女は青い蝶を吸収しているようだ。
知人の坊主によると青い蝶は村に霊障=様々な不幸を引き起こすらしく少女はより強大な霊障を引き起こす可能性があるらしい。
しかし、少女が現れるようになってからというもの水害や村での事故が減少、青い蝶の数も減少傾向にあることから少女には霊障を抑える力もあるのではないかと思われる。
青い蝶をプシュケ、プシュケを吸収する少女を幽と名付けることが村で決定した。
プシュケと幽…カスカに遭遇してから5日以内に被った怪我や病気を「幽の影響によると思われる症例」として記録をしていく。
記録の内容は転倒による掠り傷から持病の悪化による死亡まで多岐に渡っている。
記録が新しくなるにつれ観光客の怪我や病気の記録が増加し、重篤な症状の記録が減少していることが分かる。
ここ1~3年になるともはや軽傷のみになり、虫刺されや深爪などの記録までされるようになっている。
≪蝶々症候群≫または≪幽例≫を読み、村の異様な実態を知った探索者はSANc1/1d3
◯休憩室
テレビと机、いすが置かれた狭い部屋。簡易ポッドや茶飲みセットが置かれている。
〈目星〉座敷童饅頭が置いてある。
◯荒川誠司(53)
村唯一の医療従事者、医学は75%・精神分析は50%。
カスカやプシュケのことは受け入れており、探索者が指摘をしたり探りをいれるような言動に出たならばあっさりと肯定する。
そのうえで「カスカ達とこの村のために出来ることは観光を楽しんだら家に帰ってこの村の秘密を口外しないことだ」ということを探索者に伝えるだろう。
28年前に鈴川夫妻の息子の処置をしたものの救えず、その後奈々子のことも救うことが出来なかったことから昌幸に負い目がある。
そのため、自分にできることは幽例患者に対して適切な処置をすることだけだと割り切っている。
自分達のしていることは最善で探索者にそれを邪魔してほしくないと考えている。隠し事ができない。
探索者が村からカスカを連れ出すことについては推奨もしないが否定もしない。そのせいで幽例が増えたとしても患者は救ってみせると誓うだろう。
鈴川夫妻の息子、鈴川大悟はプシュケを捕まえた翌日、大雨による水害で川に流され溺死。診療所に運ばれたときには既に息を引き取っていた。
鈴川奈々子はプシュケの群れに車で突っ込み、倒れてきた電柱の下敷きになり即死。
上記2人の死因は幽例に記載があるが、幽例から探すと宣言があった場合もしくは荒川に質問した場合のみ提示すること。
知人の坊主とは連絡が取れなくなっている。
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12.駐在所
◯村では珍しい洋風建築の駐在所。20代の若い男性が制服を着てドアの前に立っている。愛想よく挨拶をしてくれるだろう。
◯駐在さん
名前は足立裕一。村人や観光客に親身になって応じるため、探索者に対しても友好的な態度で接してくれる。
しかしプシュケとカスカの真相については知らされていないため情報は持っていない。
見たことはあるがただの蝶と本物の座敷童だと思っている。
そのため、心霊現象が恐ろしいので座敷童に会ったならば村から連れ出してほしいと探索者に泣き言を言う。
村が一丸となって隠し事をしており観光客に危害を加えるようなことをしていると伝えても怖がりはするが真にうけてはくれないだろう。
もしもプシュケが霊障をばらまく存在であったとしても、今は観光客も多いのでカスカがいなくなっても大丈夫だと無責任なことを言い探索者にカスカを村から連れださせようとする。
◯事件、事故の記録
<説得>や<いいくるめ>に成功すれば過去の記録を見せてくれる。
<ねぎり>やRPなど上記の技能以外でも判定可能とする。
≪事件、事故の記録≫
昔から川に関連する水害事故が多発していることが分かる。
雨が降るたびに氾濫し翌日には流れが速くなり事故の原因となっていたようで、ときには川の水に含まれる病原菌が原因で多くの村人が死去したとする事件も記録されている。
しかし28年前の大雨による川の氾濫以降、大きな水害はなく今では平和な状態が続いているようだ。
PLが望んだ場合、鈴川妻子の死亡時についての資料を開示してもよい。
鈴川大悟(享年5歳)は大雨による水害で川に流され溺死。
鈴川奈々子(享年23歳)は息子を失ったことで心神喪失状態に陥り、車で危険な運転をしていたところに倒れてきた電柱の下敷きになり即死。
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