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幽怪プシュケの童歌-2



13.村長の家

◯村長である堀川信二とその妻、佳代子の住まう家。
訪ねてきたのが観光客であるとわかると家にあげてくれる。
探索者は客間に通されるとお茶とお饅頭でもてなされる。お饅頭にはかわいらしいおかっぱの女の子の焼き印がされている。

◯情報
技能なしでは当たり障りのない答えしか返さないが〈説得〉や〈言いくるめ〉に成功すると探索者の求める答えが返ってくる。


≪川の石碑について≫
大昔から花川周辺では水害が多く、花川の氾濫による被害が酷かった。その為人柱という習慣があったとされているが、具体的な文献は残っていない。

≪人柱≫
人身御供(ひとみごくう)の一種。
橋や城などが自然災害、人災によって壊されないことを祈願する目的で建造物やその近傍に人間を生かしたままで土中に埋めたり水中に沈めたりする風習。
史実というよりは伝説、オカルトの一種として伝わり、人柱の魂を慰める為の慰霊碑を建てることがあると言われている。


≪プシュケとカスカについて≫
プシュケは死霊だと言われており、人柱になった者や水害による死者の魂ではないかと思っている。
カスカはプシュケを吸収する。容易に知りえない深みがあり人の目に見えない死の世界へ繋がるモノといて幽と名付けられたがその実態はよくわかっていない。

≪幽例について≫
カスカやプシュケに近づく、触れるなどすると不幸が起こることは確かなようだが、人を村に集めることで1人当たりの不幸度合いが薄まることも確か。
それに気が付きカスカのことを座敷童と偽り観光客を集めるようになった。

≪これからについて≫
プシュケがいなくなるまでは観光客を集め続けたい。観光客の身に起こる不幸は小さなことだけで、観光客がこなくなってしまえばまた水害が増えプシュケが増えてしまうかもしれない。
真実を口外しないでほしい。

≪プシュケがいなくなった後について≫
プシュケがいなくなった時カスカがどうなるかはわからないが、カスカがこの村に留まるつもりならば今まで通り村の一員といて接する。
カスカがこの村から出るというなら、外で不幸を振りまく可能性もあるため成仏させる為のお祓いなどを考えている。

≪プシュケを村から連れ出すことについて≫
カスカにはプシュケを吸収させなければならない為、連れ出さないで欲しい。
不幸が増えるかどうかは判断ができない。

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14.日本旅館「帰川庵」(1日目夜~)


◯座敷童との遭遇①
夕飯と入浴をすませた探索者は寝室に敷かれた布団へ潜り込む。眠気に誘われるまま、探索者の意識は薄らいでいく…。
ここで全員〈幸運〉ロールをし、一番出目の大きい探索者の部屋にカスカを出現させること。なお、探索者が1人の場合もダイスロールをさせること。
クリティカル、ファンブルのルールは適用しない。

◯座敷童との遭遇②
ふと、意識が浮上する。目を閉じたままですらその異様な存在を感じ取ってしまうだろう。。
敷かれた布団の柔らかさ、暗い部屋の静けさ…気配を探ろうと薄目を開けたあなたをなにかが覗き込んでいる。
それは、赤い着物を着たおかっぱの少女だ。しかしその目や肌からは生気が感じられず、人というにはどこか超越した雰囲気さえ感じられる。
座敷童と遭遇した探索者はSANc1/1d3


◯座敷童との遭遇③
少女は声をもたないのか、探索者の問いかけには一切答えない。
探索者の様子を窺っているが、しばらくすると部屋の扉を開けて廊下へ歩いていく。追いかけていくと旅館の外へ出ていく。
他の探索者を起こしてから追いかけたとしても十分追いつけることとする。

旅館の外へ出た少女にどこからともなく青く光る人魂が集まり、それを気にするでもなく少女は夜の暗がりを歩いていく。
そのまま少女のあとに続きしばらくすると、探索者は川へとたどり着いていた…。


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15.川(夜)
◯たどり着いた川にはこの世のものとは思えない光景が広がっていた。
川の周辺には無数の青い人魂が浮かび、辺り一帯が憂いを帯びた光で溢れかえっている。
美しくも悍ましいその光景に、カスカは足を踏み入れていく。その背中からは哀傷を感じることだろう。
この世のものとは思えぬ幻想的な光景を目撃した探索者はSAN1d3/1d6

◯〈目星〉もしくは近づく
よく見ると、人魂は蝶が発光しているものだということがわかる。
近づいた場合は更に〈幸運〉ロール
成功であればこれ以上近づくとプシュケにぶつかってしまうのではないかと感じる。
失敗であれば、寄ってきた一羽の蝶に触れてしまい、その拍子に蝶が体のなかへすっと消えて行ってしまうSAN1/1d3

◯カスカの吸収
カスカが青い蝶に自ら触れると、蝶はカスカに吸い込まれるように微かな輝きを遺して消えていく。
蝶を取り込んだ探索者がいた場合、カスカは探索者に近づいてきてそっと身体に触れる。すると探索者の身体から青い蝶が飛び出しそのままカスカの中へ吸い込まれていく。
常識では考えられない怪奇的な現象を目撃した探索者はSAN1/1d3

◯夜明け
気が付くと東の空が白み始め、青い光が霧散するように消えていく。
時刻は5時になろうとしている。
(その場に留まった際は上記の処理をし、それ以外の処理は適宜行うこと)


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16.水影村2日目

◯以降、探索者が拒否をしなければカスカも同行する。
基本的には遭遇①にて一番出目の大きかった探索者、もしくは蝶に触れてしまった探索者について行く。
拒否された場合はその場にぽつんと残り、この人物についていけと言われればそれに従うが、どうしたいかなどの質問には答えない。


◯各探索場所の情報は1日目と変わらないが、カスカの行動が探索に役立つことなどがある。
カスカは自分から触れた対象に<霊障を与える>、<霊障を吸収する>ことができる。
鍵やドアに触れれば<霊障を与える>ことで破壊が可能になる。
軽傷であれば<霊障を吸収する>ことで1d3の回復が可能になる。
といったように、KPの判断によって使用・適用させること。
(身体的な怪我は「治りにくくなる原因」を「不幸」としカスカが吸収することで治りをはやくするが、壊した鍵は自然に直ることがない為直すことはできない。といったように、吸収・付与の能力には適用範囲があることをKPは念頭に置き能力を実行させること)

PLがカスカの能力に気が付き指示を与えた場合、村人に身体的な危害が加わらないことであれば採用すること。また、カスカの能力について開示をすること。
(PLが気づかないうちに指示をした場合、カスカの能力実行後に<アイデア>を降らせ成功したら能力について開示する)


◯カスカとプシュケ
プシュケはカスカに引き寄せられる。カスカの周りには常にプシュケが2、3羽飛び回っている。
プシュケに触れた場合、次のダイスロール結果に+5をして処理する。反映後の数字がファンブルだった場合、ファンブルとして処理をすること。
カスカに触れた場合、次のダイスロール結果に+10をして処理する。反映後の数字がファンブルだった場合、ファンブルとして処理をすること。
なお、PLがダイスロール結果を出した直後に「ダイスロール結果に+5の補正をかけて処理する」ことを宣言すること。
理由についての開示はKPの判断に委ねることとする。


再度カスカから探索者に触れ、霊障を吸収することでこの処理を無効化することができる。


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17.かえるじかん
◯探索者の帰宅時間、カスカが村の出口まで見送りにくる。
この時点でエンド分岐が決まる。


≪グッドエンド条件≫
「幽怪プシュケの童歌」、「蝶々症候群」、「幽例」
≪プシュケとカスカについて≫or≪幽例について≫ (またはこの2つに類する情報)
上記全ての情報を入手しておりなおかつカスカを村の外に連れ出さない



≪ノーマルエンド条件≫
カスカを村の外に連れ出さない



≪バッドエンド条件≫
カスカを村の外に連れ出す



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18.エンディング

【グッドエンド 少し不幸な夏の終わり】
探索者はカスカに見送られながら村を出る。
しかし、10分程経ったところであることに気が付く。……財布を旅館に忘れたようだ。
もう一度村に引き返せば不幸話に花が咲くことだろう。
少し不幸な夏が、笑顔とともに終わっていく。

幽怪プシュケの童歌、シナリオクリア。



報酬
シナリオクリア1d6
水影村の真相を知った1d3
カスカを村から連れ出さなかった1d3



【ノーマルエンド 少し不思議な夏の終わり】
探索者はカスカに見送られながら村を出る。
帰宅するまでに小指を踏まれることや、財布から小銭をぶちまけることが少なくとも1度はあるだろう。
これからも何人もの観光客が水影村で不思議な体験をしていく。
そうして、探索者たちの少し不思議な夏が終わる。

幽怪プシュケの童歌、シナリオクリア。



報酬
シナリオクリア1d6
カスカを村から連れ出さなかった1d3




【バッドエンド 夏の終わり】
探索者はカスカととも村を出る。
しばらくしてその存在を確認しようとするとそこにカスカの姿はなく、1羽の青い蝶が力なく萎れている。
後日、豪雨による自然災害に見舞われ水影村が全壊したというニュースが探索者の目に入るだろう。今年も、夏が終わる。

幽怪プシュケの童歌、シナリオクリア。



報酬
シナリオクリア1d6



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19.神話生物、NPCデータ


◯カスカ(オリジナル神話生物)


≪技能≫

霊障を与える:100%  

霊障を吸収する:100%



漢字表記は幽。
死霊の集合体であり、幽界への入り口。
水影村で死んだ者の魂で出来ている為、その肉体が埋まる水影村から離れ過ぎると消滅してしまい吸収していた霊障が解き放たれてしまう。
死霊の集合体であるため主だった人格はない。村の死者をあの世へと送り生者を守るという存在理由があるのみ。
プシュケを吸収し身体を形成、霊障をため込み、少しずつプシュケを幽界へと送っている。
プシュケは仲間の元に集まろうとしてカスカに引き寄せられる。

言葉を発しない。自主性がない為求められたことには応じるが自身で選択はしない。
KPはこの2点に留意しロールプレイすること。

さらに、常に以下のルールを適用させること。
カスカに触れた場合、次のダイスロール結果に+10をして処理する。反映後の数字がファンブルだった場合、ファンブルとして処理をすること。
なお、PLがダイスロール結果を出した直後に「ダイスロール結果に+10の補正をかけて処理する」ことを宣言すること。
理由についての開示はKPの判断に委ねることとする。
再度カスカから触れ、霊障を吸収することでこの処理を無効化することができる。





◯プシュケ(オリジナル神話生物)


≪技能≫ 

霊障を与える:100%



アゲハ蝶ほどの大きさの青い蝶。その正体は水影村で死亡した者の魂、死霊。
人格・思考はない。生者の身体へ入ろうとしたり仲間のもとへ集まろうとする習性がある。
周囲の人間や環境に霊障と呼ばれる様々な不幸をもたらしてしまうが、故意ではない。

常に以下のルールを適用させること。
プシュケに触れた場合、次のダイスロール結果に+5をして処理する。反映後の数字がファンブルだった場合、ファンブルとして処理をすること。
なお、PLがダイスロール結果を出した直後に「ダイスロール結果に+5の補正をかけて処理する」ことを宣言すること。
理由についての開示はKPの判断に委ねることとする。
探索者にカスカから触れ、霊障を吸収することでこの処理を無効化することができる。







◯鈴川 昌幸(すずかわ まさゆき)
旅館の主人。

52歳男性。28年前の水害事故により息子を失い、その後妻も事故で他界。
妻の奈々子は霊感があり、カスカとプシュケの正体・能力に気が付いていた為夫にも伝えていたが昌幸は信じなかった。
妻子を失ってその真実を受け入れた昌幸はカスカを座敷童と偽って村おこしをすることを村長に提案。自ら旅館の経営を始める。
観光客に対して罪悪感はあるものの、そうでもしなければ村で再び死者が出る為に不幸の肩代わりをさせ続けている。
しかし、カスカやプシュケを村から追いだしてしまえば他の村が災害に見舞われるのではと考えており、余計な被害を出さないためにもカスカを村から外へ連れ出すことには反対する。







◯荒川 誠司(あらかわ せいじ)
村唯一の医療従事者、医学は75%・精神分析は50%。

つい最近うっかりカスカに触れてしまい、資料室の鍵を紛失し自腹で作り直してもらった。
53歳男性。28年前に鈴川夫妻の息子の処置をしたものの救えず、その後奈々子のことも救うことが出来なかったことから昌幸に負い目がある。
そのため、自分にできることは幽例患者に対して適切な処置をすることだけだと割り切っている。
自分達のしていることは最善で探索者にそれを邪魔してほしくないと考えている。隠し事ができない。
探索者が村からカスカを連れ出すことについては推奨もしないが否定もしない。そのせいで幽例が増えたとしても患者は救ってみせると誓うだろう。

鈴川大悟はプシュケを捕まえた翌日、大雨による水害で溺死。診療所に運ばれたときには既に息をしていなかった。
鈴川奈々子はプシュケの群れに車で突っ込み、倒れてきた電柱の下敷きになり即死。
荒川の技量不足ではないが当時25歳という若さで水影村に着任したばかりの荒川にとっては自身の未熟さを痛感する出来事となってしまった。

知人の坊主とは連絡が取れなくなっている。








◯堀川 信二、佳代子(ほりかわ しんじ、かよこ)
村長家族。

63歳男性、60歳女性。
子供は村を出て行ってしまった。
鈴川とともに、霊障を薄める為の人集めを決行。
罪悪感はあるものの、そうでもしなければ村で再び死者が出る為に不幸の肩代わりをさせ続けている。







◯足立 裕一(あだち ゆういち)
駐在員。

24歳男性、水影村の出身ではないためカスカとプシュケについての真相はしらされていない。
見たことはあるがただの蝶と本物の座敷童だと思っている。
心霊現象に弱くカスカのことはただの座敷童としかおもっていないにも関わらず、かなり怖がっている。
その為、探索者がカスカを村から連れ出すことをとても良く思っている。
悪気はない。




◯その他のNPC
村人たちは探索者に対し基本友好的で、カスカに対しても友好的であること。
村人にとってのカスカは自分達を災害から遠ざけて繁栄をもたらす「座敷童」の印象が強い。




◯NPCのステータス
本シナリオはNPCによる技能行使を荒川の医学・精神分析以外推奨せず、戦闘を想定していないため詳しいステータスは記載しない。
各KPの判断によりステータスを作成することは可能。卓に合わせて調整すること。
その場合シナリオ中の荒川の医学。精神分析を、作成したステータスに変更すること。




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20.さいごに

何もしないことを選ぶシナリオということで初心者、玄人どちら相手にも回しにくいシナリオかと思いますが、
夏の終わりに水影村で羽を休め、少しだけ不幸になって楽しんでいただければ幸いです。
また、使いやすいよう改変して遊んでいただけたらと思います。
拙いシナリオではありますが、お役にたてますように。




高木英一/2018/9/6
加筆修正/2019/01/26