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七殺八鬼

1.はじめに
このシナリオは『クトゥルフの呼び声』に対応したものです。
シナリオの舞台は2019年3月、日本のとある場所にある八鬼(やつおに)市という架空の市です。
タイムリミットのあるシナリオですが、それについて知らせるか否か、知らせるタイミング等はKPの判断に任せます。HOによっては探索者間で意見が対立する場面があるかもしれません。


推奨人数:1人~4人
推奨技能:図書館
戦闘:有、回避可能
推奨職業:警察、探偵等、殺人事件の調査に参加しやすいもの。

HO:①警察官②探偵③友人
上記3つはNPCとコネクションをもち情報を得られる。KPの裁量によっては2つ以上のコネクションが持ててもよい。
また、HOを取得せず上記2種の職業を選択することも可、その際のコネクションについても取得は可能とする。
HOの被り・未取得も可、全員が同じHO取得することもできる。

ロスト率:中
技能ロールが必要な箇所は 〈技能名〉 で表記します。
SANチェック箇所は SANc の表記の後に減少値を 成功/失敗 で表記します。


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2.あらすじ
探索者は八鬼市連続動物惨殺・殺人事件を追って暗闇を行く。
それが神話的事象による事件だと知ってなお真犯人を追い求める者だけが真実と日常を手に入れることが出来る。


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3.ハンドアウト
HOの取得は任意である。
また、職業は警察官(探偵)だがHOは取得しないという選択も可能

①警察官
貴方は八鬼市警察署に勤務する警察官だ。
上司から連続動物惨殺・殺人事件を任された。
真犯人を突き止めるべく殺人鬼を追うこととなる。

②探偵
貴方は私立探偵事務所エルクに所属する探偵だ。
連続動物惨殺・殺人事件の容疑者とされた所長の疑いを晴らすべく殺人鬼を追うこととなる。

③友人
貴方は八鬼市在住の男子大学生の友人だ。
物騒な事件が相次いで心配だ、様子を見に行こう。


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4.コネクション
コネクションの取得は任意である。
HOとセットで渡すことが望ましいが、HOは取得していないがコネクションを取得すること、
職業と関係なくコネクションを取得すること、複数のコネクションを取得することは可能とする。



①高迫はじめ
HO①警察官の場合得られるコネクション:タカサコ ハジメ。
シナリオ導入時にコネクションを得られる。
署内では目立たずあまり印象のない25歳男性。
空手や柔道では優秀な成績を残しているが、暴力団と家族ぐるみで関わっているなどの噂もあり署内で親しくしている相手はいないようだということを探索者は知っている。

②永瀬柊二
HO②探偵の場合得られるコネクション:ナガセ シュウジ。
探索者が探偵事務所エルクに所属したときからコネクションを得ている。
無口で美人な32歳男性。銀髪銀瞳の細身の男性で明らかに日本人ではない。
何年も共にいる探索者には永瀬が歳をとっていないかのような美貌の持ち主だという印象がある。
本を収集する癖があり事務所に大量の本を置いているが他人には読まないよう言っている。
仕事をまともにしているところを見たことがない。

③榊光明
HO③友人の場合得られるコネクション:サカキ コウメイ。
いつ頃から友人であるか等は自由に決めても良い。また、探索者の年齢は榊と離れていても良い。
真面目で努力家な19歳の男子大学生。
自ら事件に関わりに行くタイプではないが困った人を放っておけない性格の為、探索者は榊が心配になるような関係性であることが好ましい。
八鬼寺でアルバイトをしており、法主を慕っている。
無理のない設定であれば、探索者は榊の家を知っていることとする。



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5.事前情報

≪八鬼市連続動物惨殺・殺人事件について≫
最初の事件は1月2日未明、八鬼市内にて動物が刺殺されているのが見つかる。その後2月下旬までに動物の刺殺死体が6体、2月中に人の刺殺死体が1体、3月にも1体見つかっている。
全て八鬼市内で深夜23~3時の間に共通の手口で行われた犯行であるという点から、同一犯の連続的な犯行とされている。



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6.導入(共通‐3月4日深夜‐市内某所)
HOなしもしくはHO友人のPCを優先。該当者がいない場合はランダムもしくは適当なPCを指名して必ず誰か1人の導入に使用すること。

◯深夜八鬼市内を歩いていると暗がりの中、曲がり角で人とぶつかる。
その人物はフードを被っていて性別も人相も確認できない。その人物はぶつかった勢いのまま走り去っていく。あなたはその際にフードの人物が何かを落として行ったことに気が付く。
≪お守り≫
フードの人物が落としていった巾着タイプのお守り。
巾着には八鬼寺と書かれてあり、落ちた拍子に口紐が切れたのか中身が出てしまっている。
中に入っていたのは木札で、表には「八匹の鬼の絵」が、裏には「君が私のことを信じてくれるのなら、古の記憶を紐解いてほしい」と手書きの文字が書かれている。
〈知識〉or〈日本語〉or〈図書館〉→「紐解く」とは書物を開き読むという意味。
(最も重要なヒントの為、ここで失敗した場合翌朝にもう一度振らせたり他の探索者にも共有させダイスロールさせるよう促すこと)

◯そのまま進行方向である、フードの人物が来た方向へ進むと血まみれでうずくまるなにかを発見する。
それは猫や犬よりも大きく、黒々とした生き物だった。たとえるならば蝙蝠だが、それは人型で全身がゴムのような皮で覆われている。顔は目も鼻も口もないのっぺらぼうで巨大な羽と長い尻尾、そして特徴的な角を持っている。
八鬼市の異形を目撃した探索者はSANチェック(SANc0/1d6)
(以降写真でのSANcも同値で行うこと、慣れのルールにより合計6ポイント以上喪失した時点でSANcはなくなる)

◯その後、警察に通報する・発狂するなどしても、探索者は茫然自失のまま帰宅する。
背格好を思い出す場合は〈アイデアロール〉、成功でsiz10~13程だったと思い出すことが出来る。

◯翌日‐3月5日朝
(捜査の動機が不足しそう、乗り気ではないPCがいた場合)

朝、郵便受けを見ると一通の手紙が入っている。送り主不明の手紙には以下の内容が書かれている。
≪差出人不明の手紙≫
オニ ヲ ミタ 。
オニ ヲ ミツケロ 。
サモナクバ 死ス 。


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7.導入(探偵‐3月5日朝‐エルク探偵事務所)
◯私立探偵事務所エルクの所長、永瀬柊二から「事件の容疑者として警察に疑われている、真犯人を見つけて来い」と言われ資料を渡される。
≪八鬼市連続動物惨殺・殺人事件について≫
最初の事件は1月2日未明、八鬼市内にて動物が刺殺されているのが見つかる。その後2月下旬までに動物の刺殺死体が6体、2月中に人の刺殺死体が1体、3月にも1体見つかっている。
昨日3月4日の刺殺事件を含めた9件の事件には以下の共通点から同一犯の連続的な犯行と推測されている
『時刻は23時~3時、死因は刺傷による出血性ショック死、凶器は一般的な料理包丁のようなもの。傷跡から犯人は相当の力で突き立てていること、右利きであることが判明している』

≪動物死体の写真≫
それは猫や犬よりも大きく、黒々とした生き物だった。たとえるならば蝙蝠だが、それは人型で全身がゴムのような皮で覆われている。顔は目も鼻も口もないのっぺらぼうで巨大な羽と長い尻尾、そして特徴的な角を持っている。
(SANc0/1d6)




◯永瀬に質問することで得られる情報
容疑者にされる理由は思い当たらない。と、否定するが最近深夜に徘徊していることを貴方は知っている。
その為日中眠っていて仕事をしてないことも多い。
自分自身で調査をしないのは、貴方が適任だと思ったから。と、答えるが明らかにこの後ひと眠りするのだろうなということが貴方にはわかる。
返事は基本的に興味がないようでいたり、返さないこともままあるだろうが永瀬がいつも誰にでもそのような態度だと、探索者は知っている。


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8.導入(警察‐3月5日朝‐八鬼市警察署)
◯あなたはここ最近の連続動物惨殺・殺人事件を捜査するよう上司に命令され、資料を渡される。
≪八鬼市連続動物惨殺・殺人事件について≫
最初の事件は1月2日未明、八鬼市内にて動物が刺殺されているのが見つかる。その後2月下旬までに動物の刺殺死体が6体、2月中に人の刺殺死体が1体、3月にも1体見つかっている。
昨日3月4日の刺殺事件を含めた9件の事件には以下の共通点から同一犯の連続的な犯行と推測されている
『時刻は23時~3時、死因は刺傷による出血性ショック死、凶器は一般的な料理包丁のようなもの。傷跡から犯人は相当の力で突き立てていること、右利きであることが判明している』
過去の事件現場の位置情報等も得られるが、全て八鬼市内に限定されている。

≪容疑者リスト≫
『鏑木悠仁(かぶらぎ ゆうじん)』
八鬼市在住、市立図書館に勤める38歳男性。
動物刺殺現場2、3、5回目、殺人現場2回目の発見・通報者。本人は散歩をしていてたまたま見つけたと話している
任意同行の取り調べを拒否、監視捜査を行う予定。

『永瀬柊二(ながせ しゅうじ)』
八鬼市在住と思われる20代後半~30代前半の男性。
私立探偵事務所エルクに勤めているが、警察では行方をつかめずにいる。
深夜の目撃情報が相次いでいる。



◯事件のことを誰かに聞こうとしても忙しいと相手にされず、与えられた以外の情報は出てこないが1人の男が声をかけてくる。
普段は影が薄く会話もしたことのない20代の男の名前は高迫はじめ。
「なんだか面倒事を押し付けられたみたいですね。丁度手が空いているのでよければ付き合いますよ」

◯高迫はじめに質問することで得られる情報
前任者たちは長期休暇に入ったり急な退職をしたりで今はいない。
惨殺された動物というのがまるで悪魔のような外見で、死体は死後半日ほどでどれも消失。証拠物保管に関して違反も見られず、関わらない方がいい案件として噂されている。

以下2点は必ず伝えること
腕に自信がある為、殺人鬼について調査をするなら協力をする。


≪詳しい犯行日時≫
1月02日3時頃 1匹目
1月19日2時頃 2匹目
1月26日3時頃 3匹目
2月02日1時頃 4匹目
2月09日3時頃 1人目
2月20日24時頃 5匹目
2月23日1時頃 6匹目
3月01日24時頃 2人目
3月04日23時頃 7匹目



≪被害者リスト≫
1人目
渡辺 達夫(48)
大柄な男性、一人暮らし、会社の飲み会の帰りに襲われて死亡。
中小企業勤務、勤務態度に問題はなし。

2人目
佐伯 寿(30)
中肉中背の男性、両親と暮らしていた。仕事帰りに襲われ死亡。
大手企業勤務、勤務態度はまじめで問題なし。



(2月28日(2人目未遂)鏑木がいるが、資料にはない)



死体の写真を見たいと言えば数枚の写真を差し出すが、見ない方がいいとも忠告する。
≪動物死体の写真≫
それは猫や犬よりも大きく、黒々とした生き物だった。たとえるならば蝙蝠だが、それは人型で全身がゴムのような皮で覆われている。顔は目も鼻も口もないのっぺらぼうで巨大な羽と長い尻尾、そして特徴的な角を持っている。
(SANc0/1d6)



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9.八鬼寺(初来訪時)

◯八鬼寺
・表門(山門・正門)
・本堂(本尊を祀るお堂)
・庫院(事務所兼住職の住居)
・法堂(説法や法話を行う施設)
・僧堂(僧侶たちが作善修行をする施設)
・東司(トイレ)
・浴室


◯意識しなければあることにも気が付かないようなさびれた印象の寺。表門では大学生くらいの青年が掃き掃除をしている。
青年、榊光明は目の下に隈を作り顔は青白い。お守りを見せれば奪うように手に取り、安堵の表情を浮かべる。余程大切なものであったことが窺える。
しばらくすると榊はふらつきだしそのまま倒れこむ。

◯榊が倒れた音を聞いてか、寺から24、5歳の坊主がやってくる。
「私はこの寺の法主をしております、剛丞信と申します。何か御用があればお伺いしますが彼を中へ運んでからでもよろしいですか?」
剛丞は榊を軽々持ち上げると寺の中、事務所のような施設へ運び入れる。

◯庫院(事務所兼住職の住居)
本殿より門寄りにある一階建ての日本家屋。外観は質素で、内観も同じく質素だが事務所も兼ねているのか玄関入ってすぐの空間にはカウンターがある。カウンターには売り物のおみくじやお守りが並べられている。
その後ろに扉があり、向こう側が居住スペースになっていることが予想できる。
居住スペースには居間、寝室、風呂場、炊事場があり生活感が見て取れる。
≪寝室≫
書き物机、衣装箪笥、ベッドだけの部屋。
剛丞は榊をベッドに寝かせて、探索者が外で待機しているならその場に戻り、室内までついてきているなら場所を事務所スペースに移す。


◯剛丞から得られる情報
榊光明は努力家で勉強とアルバイトを両立しているが最近は無理をしているのか寝不足気味でよく倒れるようになった。
アルバイトは休んでもいいと言っているがここへ来てしまうので好きにさせている。
八鬼寺については檀家がいなくなって経済環境が厳しくなり、廃れてしまった。
これから発展させることはない。
鬼についてはかつてこの土地に八匹の鬼がいた、ということしか知らない。



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10.八鬼寺

◯八鬼寺
・表門(山門・正門)
・本堂(本尊を祀るお堂)
・庫院(事務所兼住職の住居)
・法堂(説法や法話を行う施設)
・僧堂(僧侶たちが作善修行をする施設)
・東司(トイレ)
・浴室

◯表門(山門・正門)
古びた大きな門が開かれているが、人を迎え入れるような雰囲気はない。
状況に応じて榊がアルバイトをしていることとする。榊は寺の中の全ての鍵を所持している。

19時~9時までは閉まっており、鍵がかかっている。
〈鍵開け〉で開けることが出来るが、門を開けるならば大きな音がたってしまうだろう。
塀を上るなら〈登攀〉に成功する必要がある。


◯本堂
古びてはいるが立派な木造の建物。
扉がしまっており鍵がかけられているのが分かる。
〈鍵開け〉or〈戦闘技能〉
鍵開けの場合、閉める際にもダイスロールで成功する必要があり、戦闘技能の場合は仏壇自体を壊すことになり元通りにはならない。
中へ入るとところどころ修繕されたような跡があり、広い堂内は豪奢な装飾などはなく建物の外観や大きさに比べると質素に感じられる。
畳が敷き詰められた部屋の奥にある仏壇だけが異様な輝きを放っている。

◯仏壇
全体に黒の漆塗りが施され、装飾には金箔が用いられている。
建物と同じく古い物のようだが豪奢であり手入れが行き届いている。
扉がしまっており鍵がかけられているのが分かる。
〈鍵開け〉or〈戦闘技能〉
鍵開けの場合、閉める際にもダイスロールで成功する必要があり、戦闘技能の場合は仏壇自体を壊すことになり元通りにはならない。

扉を開くと内部まで金箔が貼られておりその中に『光明くんへと書かれた手紙』とその隣に『手のひら大の木箱』が置いてある。

≪光明くんへと書かれた手紙≫
光明くんへ
私の過去の日記を読んでくれただろうか。
最近の日記は、念のために君以外には分からない場所へ隠しておいた。
日記と一緒に君への頼み事を手紙にして書いておいたので、読んでほしい。
危険を伴う事だけれど、頼んだよ。
この手紙を読んだ君なら成し遂げてくれると信じている。
剛丞信より


≪手のひら大の木箱≫
中には懐紙に包まれた何かが入っている。懐紙には「決して触れるべからず」と書かれている
包みをひらくと、小さな白い枯れ木のようなものが入っている。
どこか幽玄さを感じさせるが、それと同時に触れてはならない深淵を覗き見るような感覚に襲われる。SANc1/1d4
〈医学〉or〈アイデア〉or〈知識〉
白い枯れ木のようなものが白骨化した人骨だということがわかる SANc0/1
医学で成功した場合、もしくはクリティカルの場合はそれが子供の骨だということが分かる

触れた場合は悍ましい感覚が体を支配する。
〈CON×5〉で判定し成功でMP-5、失敗で一時的な意識の喪失。意識を失った際に手放す描写をしておくこと。
それでもなお触れ続ける場合は魂が幽界へと送られ死亡(ロスト)する。

≪榊光明に託された日記の隠し場所》
榊と協力関係にある、もしくは榊に対してなんらかの技能成功で情報を手に入れることが出来る。
榊には隠し場所が庫院にある剛丞の部屋の、ベッドの下であるということが分かる。
去年の10月頃に剛丞から「物を隠すにはどこがいいか」と問われ「ベッドの下」と答えたことから榊はその答えを導く。
榊の部屋に行き凶器を発見した探索者ならベッドの下という思考にたどり着くかもしれない。


◯庫院
本殿より門寄りにある一階建ての日本家屋。外観は質素で、内観も同じく質素だが事務所も兼ねているのか玄関入ってすぐの空間にはカウンターがある。
カウンターには売り物のおみくじやお守りが並べられている。
その後ろに扉があり、向こう側が居住スペースになっていることが予想できる。

◯居住スペースには居間、寝室、風呂場、炊事場があり生活感が見て取れる。

≪居間≫
こたつのある居間。
部屋の隅に2枚の座布団が所在なさげに置かれている。
〈目星〉
こたつのコンセントが抜かれ束ねられている。
掃除は行き届いていて埃一つないが、使われていないような印象を受ける。

≪風呂場・炊事場≫
掃除が行き届いている。
特に気になる物はない。

≪寝室≫
書き物机、衣装箪笥、ベッドだけの部屋。
書き物机には墨と硯、筆がおいてあるが使われている形跡はない。
衣装箪笥には和服がきちっとしまわれている。
榊から情報をもらったうえで調べる、情報をもらってない場合はベッドの下を調べると宣言があった場合のみ日記を2冊を見つける。日記を読むには1冊につき1時間かかる。

≪ベッドの下に隠された日記①≫
「1991年 2月」
25年前水影村から逃げてきた荒川夫妻の一人息子、誠司が自分の生い立ちも知らず医者として水影村へ就任すると聞いた時はどうなることかと思ったが、彼は立ち向かうことを選んだらしい。
村にはいまだ多くの死霊が幽に還れず不幸は続いているようで、坊主である私に様子を見てほしいと誠司から連絡があった。
早速明日向かうとしよう。
「翌日」
誠司と村人には死霊と器についてそれとなく話を通した。
しかし、まずいことに器に触れて霊障をもろに受けてしまい、
八鬼の力で幽界に封じ込めていた八岐大蛇の魂が解放されてしまった。
咄嗟にこの身の内に閉じ込めたものの、私の力だけでは完全に無力化することはできない。あの恐ろしい大蛇が内側から私を乗っ取ろうとしているのがわかる。
七匹の鬼に力を借りたとて、私が鬼人の務めを果たせなくなればまたこの地に八岐大蛇を解き放つことになってしまうだろう。
どうにかして八岐大蛇の魂を幽界に送り還さなければ。

≪ベッドの下に隠された日記②≫
「2018年 10月06日」
万一に備え方々との関わりを断ってから早27年。
光明くんだけは「記憶を曇らせる」呪術を使い年齢や関わりを騙しながら近くに置いていたが、意識の主導権を握るのも難しくなってきた。
誠司にも「記憶を曇らせる」呪術を使い成長を見守ってきたが、あの日村へ行って以来かけ直すことも出来ていない。
……このままあと5ヶ月もすれば自我も完全に飲み込まれてしまうだろう。
そうなってしまう前にこの状況を打開する策を託して、光明くんを信じて、私は少しばかり暗闇の中で眠るとしよう。


光明くんへ

君がこの日記を読んでいるということは、私の体は八岐大蛇の魂に乗っ取られてしまったということだろう。
君が今、無事ならいいのだが。
さて、この日記にまでたどり着いてくれた君に頼みがある。
『春日の遺骨』には「触れた者の魂を幽界へ還す力」があるはずだ。だから、私の魂が八岐大蛇に呑み込まれる前に、遺骨をどうにかして私に触れさせて欲しい。
そうすれば、八岐大蛇の魂が私の身体から幽界へ還るはずだ。
君が触れてしまえば君の魂が幽界へ送られてしまう、大蛇に気付かれれば何をされるかわからない。
危険を伴うことだが、あの大蛇を野放しには出来ない。どうか、成し遂げて欲しい。私の自我が完全に飲み込まれてしまう前に。

剛丞信より


〈アイデア〉に成功で「10月06日の日記から5か月」という記述からタイムリミットが迫っていることに気が付く。



七殺八鬼-2