Eine Kleine
【聖域記録局・聴取録】
対象者:メリッサ・ドラコペトラ
日付:アテナ暦**年**月**日
場所:聖域・南庁舎地下記録室 第三面談室
記録者:聖域記録局補佐官 アルゲアス
---
……はい、覚えています。襲撃の記憶は、全部がはっきりしているわけじゃないです。夢の中みたいに、ところどころが歪んでいて、空気の重さとか、誰かの叫びとか、断片的にしか浮かんできません。でも、一つだけ確かに覚えていることがあります。
あの時のあたしは、確かに、教皇様を殺そうとしていました。……っ……
(沈黙ののち、嗚咽)
……ごめんなさい……どうしても、それだけは……消えないんです。いくら冥衣に思考を支配されていたとはいえ、言い訳にはなりません。申し訳ないんですけど、どこまでが自分の意志で、どこからが冥衣の影響だったのか、それすら判別がつきません。……でも、教皇様を斬ろうとした瞬間の、あの心のざらつきは、あたしの中にあった“怒り”の感情だった。たぶん、それだけは……嘘じゃない。……あたしは、聖戦の最中に命を落としています。けれど、誰に倒されたのか、それすら記憶にありません。冥界にいたことも、おぼろげにしか思い出せなくて……でも、一つ、どうしても避けられない出来事があります。……あの、えっと、あたしが16の時。聖域で起こった――あの事件。……ご存知ですよね。記録には残ってると思うし、きっと調べもついてますよね。あたしの身の上なんて。
(長い沈黙)
……あのことが、きっかけだったんです。あたしは、あたしの心はあれで壊れてしまったんだと思います。誰も信じられなくなって、聖域も、アテナ様も……そして、教皇様さえも……全部、全部、憎んでた。
(深いため息)
だけど、これだけは信じてほしいんです。あたし、教皇様を憎む気持ちもありました。でも…それ以上に…あたし、好きなんです。教皇様の事が…本当に、本当に大好きなんです。
……だから、もし冥衣があたしを取り込んだのだとしたら……それは、あたしの中の“悪い心”に、隙があったからですよね?……また、あたし……冥衣に引きずられてしまったら、また……教皇様の事……
(言葉が詰まり、再び泣く)
あたし……やだ……もう、絶対に嫌なのに…………ごめんなさい、こんな話しかできなくて。こんなことしか言えないなんて、自分でも情けないです……ごめんなさい…
---
※本記録は、後日再聴取の上、正式記録へ昇格予定。
被聴取者の精神状態不安定により、断続的に中断を挟む。
必要に応じ、記憶回復と精神安定に係る補佐官の介入を検討。
‐‐‐
聖域教皇宮 公式通知書
発信日:○年○月○日
宛先:メリッサ・ドラコペトラ 殿
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件名:公的給付および監視対象解除の通知について
拝啓 平素より聖域へのご協力、誠に感謝申し上げます。
このたび、聖域定例議会において、貴殿の公的貢献および諸状況に鑑み、以下の通り決定されましたので通知申し上げます。
1. 監視対象解除
貴殿は聖域の監視対象者より正式に解除されました。今後は、従来の制約や報告義務等は一切課されません。
2. 公的給付金
議会の決定に基づき、貴殿には総額 八十五万ユーロ(約一億三千六百万円) の給付を行うことが決定しました。
※内訳の詳細については、貴殿のご心情に配慮し記載を省略しております。
3. 学業および生活保障
大学へ復学される場合、学費・生活費・研究に関わる必要経費は、聖域が責任をもって拠出いたします。
貴殿の今後の生活と学びが安定し、平穏で充実した日々となることを聖域一同、心より祈念いたします。
敬具
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聖域教皇
シオン
補佐官
双子座サガ
射手座アイオロス
対象者:メリッサ・ドラコペトラ
日付:アテナ暦**年**月**日
場所:聖域・南庁舎地下記録室 第三面談室
記録者:聖域記録局補佐官 アルゲアス
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……はい、覚えています。襲撃の記憶は、全部がはっきりしているわけじゃないです。夢の中みたいに、ところどころが歪んでいて、空気の重さとか、誰かの叫びとか、断片的にしか浮かんできません。でも、一つだけ確かに覚えていることがあります。
あの時のあたしは、確かに、教皇様を殺そうとしていました。……っ……
(沈黙ののち、嗚咽)
……ごめんなさい……どうしても、それだけは……消えないんです。いくら冥衣に思考を支配されていたとはいえ、言い訳にはなりません。申し訳ないんですけど、どこまでが自分の意志で、どこからが冥衣の影響だったのか、それすら判別がつきません。……でも、教皇様を斬ろうとした瞬間の、あの心のざらつきは、あたしの中にあった“怒り”の感情だった。たぶん、それだけは……嘘じゃない。……あたしは、聖戦の最中に命を落としています。けれど、誰に倒されたのか、それすら記憶にありません。冥界にいたことも、おぼろげにしか思い出せなくて……でも、一つ、どうしても避けられない出来事があります。……あの、えっと、あたしが16の時。聖域で起こった――あの事件。……ご存知ですよね。記録には残ってると思うし、きっと調べもついてますよね。あたしの身の上なんて。
(長い沈黙)
……あのことが、きっかけだったんです。あたしは、あたしの心はあれで壊れてしまったんだと思います。誰も信じられなくなって、聖域も、アテナ様も……そして、教皇様さえも……全部、全部、憎んでた。
(深いため息)
だけど、これだけは信じてほしいんです。あたし、教皇様を憎む気持ちもありました。でも…それ以上に…あたし、好きなんです。教皇様の事が…本当に、本当に大好きなんです。
……だから、もし冥衣があたしを取り込んだのだとしたら……それは、あたしの中の“悪い心”に、隙があったからですよね?……また、あたし……冥衣に引きずられてしまったら、また……教皇様の事……
(言葉が詰まり、再び泣く)
あたし……やだ……もう、絶対に嫌なのに…………ごめんなさい、こんな話しかできなくて。こんなことしか言えないなんて、自分でも情けないです……ごめんなさい…
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※本記録は、後日再聴取の上、正式記録へ昇格予定。
被聴取者の精神状態不安定により、断続的に中断を挟む。
必要に応じ、記憶回復と精神安定に係る補佐官の介入を検討。
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聖域教皇宮 公式通知書
発信日:○年○月○日
宛先:メリッサ・ドラコペトラ 殿
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件名:公的給付および監視対象解除の通知について
拝啓 平素より聖域へのご協力、誠に感謝申し上げます。
このたび、聖域定例議会において、貴殿の公的貢献および諸状況に鑑み、以下の通り決定されましたので通知申し上げます。
1. 監視対象解除
貴殿は聖域の監視対象者より正式に解除されました。今後は、従来の制約や報告義務等は一切課されません。
2. 公的給付金
議会の決定に基づき、貴殿には総額 八十五万ユーロ(約一億三千六百万円) の給付を行うことが決定しました。
※内訳の詳細については、貴殿のご心情に配慮し記載を省略しております。
3. 学業および生活保障
大学へ復学される場合、学費・生活費・研究に関わる必要経費は、聖域が責任をもって拠出いたします。
貴殿の今後の生活と学びが安定し、平穏で充実した日々となることを聖域一同、心より祈念いたします。
敬具
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聖域教皇
シオン
補佐官
双子座サガ
射手座アイオロス
