短編
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出会いは小説よりも単純だった。
ふらっと立ち寄った本屋のカウンターで、本を読みながら店番をする白い長髪に白いノースリーブワンピースをきた、今にも消えてしまいそうなほど綺麗な女性。
彼女を見た瞬間、世界が驚くほど鮮やかになったのを覚えている。
「ふーん。で、その人に声はかけたの?」
「いや…」
「なんだ、意外とヘタレなのねネジって」
「ヘタレ…っ」
「だってそうでしょー?気になる人を遠くから見てるだけでいいと思うなんて…ヘタレの極みじゃない!」
甘味処にて。
こういう話を誰にも言いふらさない信用できる女性といえば…と考えた結果、テンテンに相談することにした。
テンテンはズバズバした性格だから、良い参考になると思ったが…すでに心が折れそうである。
大好物のゴマ団子をパクパク食べながら、テンテンは一応真剣に話を聞いてくれた。
いい仲間を持ったものだ。
そう思うようになったのは、あいつと、ナルトと戦った時からだ。
今まで、自分の運命に従いつつも、それを呪うしか出来なかった俺に、たった一度の戦いで色々なことを教えてくれた。
あんな風にしか考えることが出来なかった俺に想い人ができるなど、誰が想像しただろう。
自分を変えるきっかけをくれたのは、本人に言うのは恥ずかしいが、間違いなくナルトだった。
俺がそんなことをが考えている間に、テンテンはゴマ団子を完食したようで、ズズッとお茶をすすり、そして俺にこう言った。
「よし、じゃあ今からその本屋に言ってみましょ!」
「ふーん、あの子ね…。すっごくかわいい子じゃない!」
「あぁ…」
「よし、じゃあ話しかけてきて」
「!?何言ってるんだテンテン!!////」
「うわ、ネジが赤くなってる。超レア!」
クスクス笑うテンテンだが、笑い事ではない。
つい先程、話しかける勇気がないという相談をしていたにも関わらず、話しかけてこいなんて…。
それができたら、とっくに話しかけているというのに!
そんな俺の心情を知ってか知らずか、テンテンはまた言う。
「いいのよそんな。急に気の利いたセリフ言えなんて言ってないわ。ただ、本を買う時に、名前ぐらい聞いてくればってこと!」
「だが…」
「いいから行く!」
「……わかった…」
後ろでテンテンがニヤニヤしていないことを祈りながら、俺は本屋の中へ入っていった。
「(こうしてみると、この店は恋愛物が多いな…)」
普段は全く読まないジャンルだが、話すきっかけを作るためだ。
俺はパッと目についた本を手に取り、彼女の元へ向かった。
「すまん、これをひとつ」
「はい、いらっしゃいませ」
ドキドキしながら本をカウンターに出すと、彼女は本から顔をこちらに向け、少し笑って俺に挨拶をした。
初めての会話に、内心ガッツポーズをしていると、彼女が俺の買った本を見てパッと目を輝かせた。
「●畳半神話大系……●見さんの作品、お好きなんですか?」
「え、あ、いや、知り合いにすすめられて…」
嘘も方便という言い訳をしてみるが、彼女から話しかけてくれたことに、2度目の内心ガッツポーズをきめた。
「そうなんですね。私、この人の作品、好きなんです。よかったら、感想聞かせてください…っ」
「!…あぁ、そうさせてもらう。……あと」
「?」
「その…名前を…教えてくれないか?」
「!…優雨…北別府優雨といいます」
「優雨か…。俺は日向ネジだ」
名前を聞かれて驚いている彼女だが、一番驚いているのは自分だ。
まさか、こんなにスラスラ言葉が出てくるとは。
俺は軽く挨拶をし、本屋をあとにした。
「ネジ!どうだった?」
「あぁ…名前も聞けたし、彼女の好きな本も買えた。あとはこの本を読んで感想を伝えれば…」
「…まぁ、それが一歩になるならいいか。
肝心なのは、感想を伝えたあと、なんだからね!」
「あ、あぁ…努力する」
その日の夜。俺は早速ページをめくった。
普段全く読まないジャンルだったためか、いつもより内容に引き込まれていった。
確かに面白い。
3日後。俺はあの本屋に来ていた。
そして、優雨に声をかけた。
「優雨」
「!ネジさん。いらっしゃいませ」
「あの本、読んだ。面白かった」
「ホントですか?好きな作家さんを褒められるのって、なんだかとても嬉しいです…っ」
「俺も嬉しい。優雨がそんなに喜んでくれて」
「え…?」
「……っ!?////す、すまん!忘れてくれ…////」
きょとんとしていた優雨だったが、すぐにニコッと笑って、俺にこう言った。
「あの…オススメの●見さんの作品があるんです。よかったらご紹介するので、今度はその感想、私の休みの日にどこかでお茶しながら語らいませんか…?」
「!……あぁ…ありがとう」
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