短編
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恋をしたみたいです
初めて会った日から
ほかの人とは違うときめきを
感じていたのです
...と、言ってみたいのです
「......ふーん、なんかなぁ...なんか、違うなぁ...」
「...だめ、かぁ...」
「うーん、なんかね、いいんだけど、ちょっと違うのよ」
「はぁ...」
昼下がりの小さな会議室で、私はため息をついた。
ため息をつくと幸せが逃げる、なんてよく言うけど、ほんとにそれで幸せが逃げるなら、私より不幸せな人なんていないんじゃないかな。
「...はぁ......」
「...北別府ねぇ...幸せな恋の詩を書くには、幸せな恋をしてなきゃ書けないの
心が引き裂かれるような恋のうたを書くには、心が引き裂かれるような想いを知らなきゃいけない」
「...はい......。でも、それ、難しい、です...」
「...んー...そうよねぇ...。じゃあ、恋してみなさいよ」
この一言は、私にはハードルの高いものだった。
生まれてこの方、異性と手を繋いだことも、誰かと付き合ったことも、まして誰かに恋したこともない。
そりゃあ先輩は、美人さんで仕事もバリバリこなせるかっこいい女性だから、簡単にいい男なんて捕まるのかも知れないけど...。
私には、無理だ。
「あ、北別府、今私には無理だーって顔したでしょ」
「!!
そ、そんなことないです...っ」
「北別府は自分で気にしてるほど顔は悪くないし、むしろいい方だし、スタイルだっていいんだから...もっと自身持ちなさい!!」
「うぅ...そんなわけ、ないじゃないですか...」
「もぉぉ!!私が嘘つく嫌な女に見えるのぉ!?」
「ち、違います!」
あぁ、もう。
もっと自分に自身が持てたら、もっと、先輩の隣を歩いていても恥ずかしくなくなるはずなのに。
もっと自分に自身が持てたら、もっと、毎日が楽しくてキラキラしているだろうに。
でも。
「いい人、紹介してあげるわ」
そんなことを言う先輩の横で、苦笑いしか浮かべられない私には、"自信を持つ"という言葉を呟くこと自体、おこがましいことかもしれない。
・
・
・
・
「やっほー!ケント、久しぶりね!」
「おー小鳩屋!相変わらずいい女だなぁ!今日はお前をお持ち帰りしてやろうか?」
「いやよぉ!もっと若くていい男を捕まえるために今日は来たんだから!」
「いつまで経っても肉食だなぁお前は」
なぜ、こんな事に。
今私は、同じ会社の同僚3人と、先輩と5人で、合コンに来ていた。
場所は少しおしゃれなスペインバルだった。
店に着いた私達を外で出迎えてくれたのは、今回の男性側の幹事の方だった。
先輩と長い付き合いみたいだけど、先輩と同じく、歳を感じさせない様なかっこいい大人の男性だった。
こんな人と付き合ったら、自分が隣にいて恥ずかしくなってしまいそうだ。
待ちくたびれたぜ、と、その男性は店内へと私たちを案内した。
外装もだけど、内装もおしゃれで、でも気取ってない感じのいい店だった。
こういういいお店に出会えた時に、カウンターがあるか探す癖、早く直したい。
店内の螺旋階段を登って上に行くと、幹事の男性よりすこし若い4人の男性が席に着いていた。
皆顔も整ってて、スタイルもよくて、素敵だ。
だからその瞬間に、私は今日は1人で呑みに徹しようと心に決めた。
こんなにキラキラした人たちに、私が釣り合うわけがない。
そんなことで始まった合コン。
皆スペイン産のビールを頼んで、乾杯をした。
そしておなじみの、自己紹介タイムになるわけである。
「初めまして。幹事の九瓏ケントだ」
「俺はアキラっす!」
「泉奏です」
「さ、榊原タツキです!」
そして、最後に挨拶した彼に、なぜか私は惹かれてしまった。
茶目っ気のある表情で、みんなの自己紹介が終わるのをそわそわ待っていて、なぜかかわいいと思えてしまった。
「朴ウィトでっす!よろしくお願いしまーすっ☆」
「こいつ、今日の合コンにめちゃくちゃがっついてきてますから気をつけてくださいね(笑)」
えーうそー(笑)とキャピキャピ返す同僚をよそに、私は今まで感じたことのないドキドキを抱えていた。
ものすごく、朴さんを素敵に思ってしまう。
こんな気持ち、知らない。
女性陣の自己紹介も終わったところで、本格的に始まった合コン。
みんな、かっこいい男性に目がハートになっている。
斯く言う私は、さっき気になった朴さんに声をかけることもままならないまま、1人で適当に愛想笑いをして過ごしていた。
このままさっさと終わって、こんなもやもや忘れてしまいたい。
そう思っていた私に、話しかける人がいた。
「えーと、北別府さん?俺、もっと北別府さんと話したいんすけど、横いいっすか?」
「えっ?あ、あ、は、い...」
「はははっ、どもりすぎっすよ!緊張しなくていいっすよ!俺、人を楽しませるのには自信があるんで!!」
「っ...」
ドキドキする。
こんな気持ち、知らない。
こんな息できないドキドキ、知らない。
なに?なんなのこれ?
「あの、北別府さん?んー、いや、優雨さん!」
「ひゃい!!」
「!!あっははは!!ひゃいって...ぷくくくっ」
「あわ、あわ、わ、笑わないで...っください...」
「っ、なんか、あの...かわいいっすね...」
ドキンっ
なんだその笑顔。
なんだその言葉。
...あ...なるほど...これが...
あぁ、これが
(恋の魔法ね)
初めて会った日から
ほかの人とは違うときめきを
感じていたのです
...と、言ってみたいのです
「......ふーん、なんかなぁ...なんか、違うなぁ...」
「...だめ、かぁ...」
「うーん、なんかね、いいんだけど、ちょっと違うのよ」
「はぁ...」
昼下がりの小さな会議室で、私はため息をついた。
ため息をつくと幸せが逃げる、なんてよく言うけど、ほんとにそれで幸せが逃げるなら、私より不幸せな人なんていないんじゃないかな。
「...はぁ......」
「...北別府ねぇ...幸せな恋の詩を書くには、幸せな恋をしてなきゃ書けないの
心が引き裂かれるような恋のうたを書くには、心が引き裂かれるような想いを知らなきゃいけない」
「...はい......。でも、それ、難しい、です...」
「...んー...そうよねぇ...。じゃあ、恋してみなさいよ」
この一言は、私にはハードルの高いものだった。
生まれてこの方、異性と手を繋いだことも、誰かと付き合ったことも、まして誰かに恋したこともない。
そりゃあ先輩は、美人さんで仕事もバリバリこなせるかっこいい女性だから、簡単にいい男なんて捕まるのかも知れないけど...。
私には、無理だ。
「あ、北別府、今私には無理だーって顔したでしょ」
「!!
そ、そんなことないです...っ」
「北別府は自分で気にしてるほど顔は悪くないし、むしろいい方だし、スタイルだっていいんだから...もっと自身持ちなさい!!」
「うぅ...そんなわけ、ないじゃないですか...」
「もぉぉ!!私が嘘つく嫌な女に見えるのぉ!?」
「ち、違います!」
あぁ、もう。
もっと自分に自身が持てたら、もっと、先輩の隣を歩いていても恥ずかしくなくなるはずなのに。
もっと自分に自身が持てたら、もっと、毎日が楽しくてキラキラしているだろうに。
でも。
「いい人、紹介してあげるわ」
そんなことを言う先輩の横で、苦笑いしか浮かべられない私には、"自信を持つ"という言葉を呟くこと自体、おこがましいことかもしれない。
・
・
・
・
「やっほー!ケント、久しぶりね!」
「おー小鳩屋!相変わらずいい女だなぁ!今日はお前をお持ち帰りしてやろうか?」
「いやよぉ!もっと若くていい男を捕まえるために今日は来たんだから!」
「いつまで経っても肉食だなぁお前は」
なぜ、こんな事に。
今私は、同じ会社の同僚3人と、先輩と5人で、合コンに来ていた。
場所は少しおしゃれなスペインバルだった。
店に着いた私達を外で出迎えてくれたのは、今回の男性側の幹事の方だった。
先輩と長い付き合いみたいだけど、先輩と同じく、歳を感じさせない様なかっこいい大人の男性だった。
こんな人と付き合ったら、自分が隣にいて恥ずかしくなってしまいそうだ。
待ちくたびれたぜ、と、その男性は店内へと私たちを案内した。
外装もだけど、内装もおしゃれで、でも気取ってない感じのいい店だった。
こういういいお店に出会えた時に、カウンターがあるか探す癖、早く直したい。
店内の螺旋階段を登って上に行くと、幹事の男性よりすこし若い4人の男性が席に着いていた。
皆顔も整ってて、スタイルもよくて、素敵だ。
だからその瞬間に、私は今日は1人で呑みに徹しようと心に決めた。
こんなにキラキラした人たちに、私が釣り合うわけがない。
そんなことで始まった合コン。
皆スペイン産のビールを頼んで、乾杯をした。
そしておなじみの、自己紹介タイムになるわけである。
「初めまして。幹事の九瓏ケントだ」
「俺はアキラっす!」
「泉奏です」
「さ、榊原タツキです!」
そして、最後に挨拶した彼に、なぜか私は惹かれてしまった。
茶目っ気のある表情で、みんなの自己紹介が終わるのをそわそわ待っていて、なぜかかわいいと思えてしまった。
「朴ウィトでっす!よろしくお願いしまーすっ☆」
「こいつ、今日の合コンにめちゃくちゃがっついてきてますから気をつけてくださいね(笑)」
えーうそー(笑)とキャピキャピ返す同僚をよそに、私は今まで感じたことのないドキドキを抱えていた。
ものすごく、朴さんを素敵に思ってしまう。
こんな気持ち、知らない。
女性陣の自己紹介も終わったところで、本格的に始まった合コン。
みんな、かっこいい男性に目がハートになっている。
斯く言う私は、さっき気になった朴さんに声をかけることもままならないまま、1人で適当に愛想笑いをして過ごしていた。
このままさっさと終わって、こんなもやもや忘れてしまいたい。
そう思っていた私に、話しかける人がいた。
「えーと、北別府さん?俺、もっと北別府さんと話したいんすけど、横いいっすか?」
「えっ?あ、あ、は、い...」
「はははっ、どもりすぎっすよ!緊張しなくていいっすよ!俺、人を楽しませるのには自信があるんで!!」
「っ...」
ドキドキする。
こんな気持ち、知らない。
こんな息できないドキドキ、知らない。
なに?なんなのこれ?
「あの、北別府さん?んー、いや、優雨さん!」
「ひゃい!!」
「!!あっははは!!ひゃいって...ぷくくくっ」
「あわ、あわ、わ、笑わないで...っください...」
「っ、なんか、あの...かわいいっすね...」
ドキンっ
なんだその笑顔。
なんだその言葉。
...あ...なるほど...これが...
あぁ、これが
(恋の魔法ね)