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6 ボーンとハンゾウとデーモンシード

 ハンゾウとゲッパーランドの試合は一進一退の攻防となった。

 ゲッパーランドはローリング・ウォーターなどの水を使う技でハンゾウを攻め立てるが、ハンゾウは巧みに忍術を使ってそれを切り返す。
 冷静にして緻密、そして千変万化、彼らしい戦い方だ。
 特に傀儡人形を水を使って形成した水傀儡人形には、万太郎は味方に付けるとこんなに頼もしい技はないと大喜びだったし、観客たちも大盛り上がりでハンゾウに声援を送った。

 しかし、戦況は次第にハンゾウの不利になり始めた。
 彼は水中に引きずり込まれ、ゲッパーランドの攻撃を一方的に受け始める。

 妖腕刀をマイクロゲッパーに削られ、顔を覆う面の右半分を噛み取られ、肉体的にも精神的にも追い詰められ始める。

「まずい、まずいぞ、このままじゃハンゾウは……!!」

 フォークはすっかりうろたえる。
 ボーンは無言で成り行きを見守った。

 ハンゾウが、水中でゆらゆら揺れるザ・ニンジャの襟巻きに何事か話しかけているのが見える。
 口元から、気泡が上がっていた。

「何やってんだ、ハンゾウの奴? おかしくなっちまったのか?」

 フォークは今までの付き合いの中で、およそ見たことのない、ハンゾウの奇妙な振る舞いに怪訝な顔だ。

 と、ハンゾウがローリング・ウォーターで島の崖まで吹き飛ばされた。
 のけぞった体勢だったためか、妖腕刀が崖の岩肌に突き刺さる。
 彼はその状態でぶら下げられた格好になった。
 だらりと垂れた、手足が揺れる。

「ハンゾウの奴……まさか」

 フォークが最悪の事態を想像して青ざめる。

「いや。良く見な」

 ボーンが呟くのと同時に、画面の中のハンゾウが岩肌から妖腕刀を引き抜いた。
 驚いたことに、岩が砥石の役目を果たして、潰されていた刃が再生している。

 ハンゾウの反撃が始まった。

 水中に戻ったハンゾウは、襲い来るマイクロゲッパーを妖腕刀で一刀両断。
 次いでゲッパーランド本人を、リング上に引きずり上げることに成功する。

 そして。

「やった!!」

 フォークが小躍りする。
 ハンゾウの釣鐘割りが、ゲッパーランドに決まった。
 試合はハンゾウのKO勝ちとなる。

「後はあの魚野郎のツラを剥ぐだけだなあ~!!」

 スクリーン上で妖腕刀を振り上げるハンゾウの姿を目で追いながら、フォークが口にする。
 彼らにとっては、いつもの見慣れた、仲間の「勝利宣言」に過ぎないのだが。

 だがしかし、ハンゾウは妖腕刀の刃がゲッパーランドの顔に食い込む直前で、それを止めた。
 そして宣言する。
「御面は無用」と。

 へえ、とボーンは笑った。

「ハンゾウの野郎、棘が取れちまったじゃねえか。つまらねえ」

「ほんとに正義超人になっちまったんだなあ~……ハンゾウの奴……」

 フォークは大歓声を受けるハンゾウを眩しげに眺めた。

「それはいいが……嫌な予感がするな……」

 ボーンは、スクリーンを注視する。
 果たして、悪魔ともあろう者が、ここであっさり退くものだろうか?

 と、いきなり何かがハンゾウとゲッパーランドに向かって降り注ぐ。

「ハ、ハンゾウ!!」

 フォークが思わず叫ぶ。

 ジェネラルフェイスから飛来した巨大な角が、ハンゾウとゲッパーランドをまとめて串刺しにしていた。

 よろけ、ハンゾウはゲッパーランドもろとも海へ転落する。

 水しぶき。
 沈黙。

 ハンゾウの半分に割れた面だけが、海面に浮かび上がってきた。

「そんな!! ハ、ハンゾウー!!!」

 フォークの叫びが空しく響く。

 ボーンは瞑目した。
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