6 ボーンとハンゾウとデーモンシード
最初にしかけたのは、フォークだ。
球体の連なりの超人に、ラリアートを敢行する。
しかし。
「なにっ!?」
ラリアートが決まると見えた瞬間、球体がバラバラに分解して宙を舞った。
「食らえ、ボールストーム!!」
四方八方に飛び散ったそれは、見えない力に操られ、出鱈目な軌道を描く弾丸のようにフォークに襲い掛かる。
凄まじい激突音が轟いた。
「グガァッ!!」
フォークが苦痛の呻きを上げる。
鋼鉄の体のあちこちに凹みができていた。
「ギャギャギャ……!! 俺様の体は自在に分解できる。いかにお前が力自慢でも、攻撃を当てられなければ手の打ちようがあるまい!!」
奇怪な笑い声を上げて、その球体超人は再び攻撃態勢を取った。
フォークの周囲に展開した幾つもの球体が、超技術による兵器か何かのように、彼を八方から狙っている。
「これで最後だーっ!!」
多彩な軌道を描いて、空飛ぶ球体がフォークを襲った、その時。
「な、なにぃ?」
球体超人は驚きの声を上げていた。
フォークの手にはいつの間にか、顔が浮かび上がった球体が捕まえられていたのだ。
「ようやく捕まえたぜ……。こいつがお前の体を操る中核のボールだな?」
「お前、まさか気付いて……!」
フォークに捕まえられたまま、顔付きの球体が目を見開いた。
「おうよ。このボールだけが攻撃するフリして実際には攻撃してこないことを、俺は気付いていたぜーっ!! このボールさえ壊せば、てめえはおしまいだ!!」
フォークは残酷な表情を浮かべ、にやりと笑う。
「やっやめ……!!」
「スリーウェイ・ダンス・インパクト!!!」
情容赦なく、フォークの胸の突起、右膝、左膝と、立て続けに球体が叩きつけられる。
「ギャアアァ!!!」
一撃目でひびが入り、二撃目でそれが全体に広がり、三撃目で球体はコナゴナに砕け散る。
同時に他の球体がぼとりと地面に落ちて、そのまま二度と動かなくなった。
「グロロー!!」
フォークの喉から、勝利の雄たけびが迸った。
◇ ◆ ◇
ハンゾウと鞭剣の超人は一部の隙すら相手に与えぬ勢いで睨み合っていた。
鞭剣は地面に伸ばされ、毒蛇のようにハンゾウの隙を狙っている。
先に動いたのは、鞭剣の超人だ。
「トエリャー!!」
鞭剣が跳ね上がり、ハンゾウを斜めに一刀両断しようとした。
ハンゾウは超絶の跳躍力で、一気に間合いを詰め、鞭剣超人に頭上から蹴りかかる。
「ハンゾウ流極意、百足脚!」
連続蹴りが雨霰と鞭剣超人に降り注ぐ。
しかし。
「ぐはあっ!!」
悲鳴を上げたのはハンゾウの方だ。
「グヘヘ、残念だったなァ~!!」
水面を突き破る肉食魚のように跳ね上がった鞭剣が、ハンゾウの背中を貫いていた。
ハンゾウは痛みをこらえて跳躍し、鞭剣から逃れた。
鞭剣超人の背後に着地。
大量に出血し、痛みも相まって足元がふらついた。
「俺様のウィップ・ソードに敵はないぜ!! そら!!」
鞭剣超人は振り向き様、横殴りに鞭剣を振るった。
波打つような複雑な動きで、それがハンゾウを両断すると見えた刹那。
「妖腕刀!」
ハンゾウの刃と化した右腕が一閃する。
鞭剣超人の悲鳴が上がった。
しなる鞭剣は、半ばで切断されている。
切り落とされた大蛇の首のように、鞭剣の半ばが地面に落下した。
その隙を逃さず、ハンゾウは跳躍し一気に間合いを詰めた。
「ハンゾウ流極意、地獄斬首!!」
横一線に薙ぎ払われた妖腕刀が、鞭剣超人の首を、一撃のもとに打ち落とす。
ぐるぐる回りながら、驚愕の表情を貼り付けた鞭剣超人の首が落ちてくる。
ハンゾウは降りしきる血の雨の中、静かに妖腕刀を収めた。
◇ ◆ ◇
「最初に言っておくが、てめえのシューティング・アローは俺様に通じないぜ!!」
金属光沢の超人が、ボーンを挑発した。
「あっそう」
気の抜けた調子で応じるのと同時に、ボーンはシューティング・アローを放っていた。
あやまたず、金属超人の左胸に、それは確かに突き刺さる。
が、同時に金属超人の体がどろりと崩れ、見る間に液状となっていく。
まるで水銀のような見た目のそれは、ボーンがシューティング・アローを引き戻すや否や、元の一そろいの超人の形を取り戻す。
「けけけ。俺様の体は、超極小のナノパーツの集合体だ。外からの力は、ナノパーツを分散させることで無効化できる。そのご自慢のシューティング・アローだけじゃなく、どんな技をかけられても、同じように無効なのさ」
金属超人はゲラゲラ高笑いを浴びせる。
「残念だったなァ、ボーン・コールド!! 俺は無敵だあ!!」
ボーンは腰の鞘に短剣を収めると、すうっと隻眼を細めた。
「行くぜ、メタリック・ツナミ!!」
金属超人が一瞬で液状化し、銀色の津波となってボーンに襲いかかる。
無数のナノパーツの津波の一部が太い鞭のように変化し、ぐにゃりと伸びてボーンの全身を搾り上げようとした、その時。
「ダーク・イクスプロージョン!!」
ボーンの体を中心にして、暗黒の衝撃とでも言うべきものが、放射状に広がった。
巻き込まれた金属超人は、魔法による超高密度の暗黒のエネルギーを全てのナノパーツに浴びせられ、瞬時に生命活動を停止させた。
まるで今まで活発に生きて動いていたのが、嘘のように静まり返る。
朽ちた液状の金属が、ボーンの足元でみすぼらしい水溜まりを作るだけ。
ボーンはいつもの葉巻を取り出し、火を点けて、煙を吸い込んだ。
◇ ◆ ◇
ケビンマスクの前に立ちはだかったのは、全身プロテクターに包まれた、一際いかつい超人だった。
「確かてめえは地球で開催された超人オリンピックの優勝者だろう?」
そのプロテクター超人は尋ねた。
「そういうことだ……。ギブアップするなら、今のうちだぜ」
ケビンは挑発的に応じる。
「そうはいかねえ。あのキン肉マン2世を倒した奴を仕止めたとなりゃ、俺の悪行超人界での株は上がる。このチャンスを逃す手はないぜ~!!」
プロテクター超人は身構えた。
ケビンは、妙に凪いだ空気のまま、緩やかに構えて待ち受ける。
「ウオリャアーーー!!」
かけ声と共に、プロテクター超人がローリングソバットを放った。
ケビンは蹴り脚を両手でキャッチすると、素早く相手の体の下に自分の体をくぐらせ、タワーブリッジの体勢に入った。
プロテクター超人の背骨が、生々しい軋み音を上げだした。
「グガァ~!!」
プロテクター超人が悲鳴を上げる。
ケビンは背骨ばかりか胴体をも真っ二つにせんばかりの勢いで、ぐいぐいと締め上げていく。
と、プロテクター超人の長い髪が、まるで黒い無数の蛇のように動いて、ケビンの首に絡み付き、猛烈な勢いで締め付け始めた。
まるで巨漢が髪の先端と付け根を持って、引っ張り合っているかのような情け容赦のない力だ。
「グオッ!?」
ケビンの息が詰まった隙に、プロテクター超人は技から逃れた。
ひとりでに動く髪はケビンの首に食い込んだまま。
「どんどん行くぜ! 魚雷キック!」
プロテクター超人は、首が締まって苦しむケビンを、そのまま髪の毛で引き寄せる。
そのまま、勢いを加えたドロップキックをケビンの顔面に見舞う。
ケビンがふらついた。
「フハハハハ!! どうやら意識が遠のいてきたようだなァ!! もういっちょ行くぜ!!」
プロテクター超人が、再度ケビンを髪の毛で引き寄せようとした時。
「マッハ・パルパライザー!!」
ケビンが両手を合わせて突進してきた。
回転につれ、首に巻き付いた髪が取れ、ケビンの肺に新鮮な酸素が流れ込む。
額のガードを削り取られ、プロテクター超人が悲鳴を上げる。
痛みと衝撃で、そいつは朦朧となった。
ケビンはプロテクター超人の両腕を捻り、そのまま思い切り解き放った。
反動でプロテクター超人の体が空高く舞い上がる。
後を追って飛び上がり、ケビンは脚で相手の首と肩をロックした。
「ビッグベン・エッジ!!」
轟音を立てて、プロテクター超人の頭部が地面に激突した。
砕けたアスファルトが更に砕け、亀裂が走る。
長い髪がばさりと広がり、そいつの体は断末魔の痙攣にとらわれた。
ケビンは獲物の骸を放り出した。
いつものように、派手な開脚ジャンプを決め、勝利を宣言する。
球体の連なりの超人に、ラリアートを敢行する。
しかし。
「なにっ!?」
ラリアートが決まると見えた瞬間、球体がバラバラに分解して宙を舞った。
「食らえ、ボールストーム!!」
四方八方に飛び散ったそれは、見えない力に操られ、出鱈目な軌道を描く弾丸のようにフォークに襲い掛かる。
凄まじい激突音が轟いた。
「グガァッ!!」
フォークが苦痛の呻きを上げる。
鋼鉄の体のあちこちに凹みができていた。
「ギャギャギャ……!! 俺様の体は自在に分解できる。いかにお前が力自慢でも、攻撃を当てられなければ手の打ちようがあるまい!!」
奇怪な笑い声を上げて、その球体超人は再び攻撃態勢を取った。
フォークの周囲に展開した幾つもの球体が、超技術による兵器か何かのように、彼を八方から狙っている。
「これで最後だーっ!!」
多彩な軌道を描いて、空飛ぶ球体がフォークを襲った、その時。
「な、なにぃ?」
球体超人は驚きの声を上げていた。
フォークの手にはいつの間にか、顔が浮かび上がった球体が捕まえられていたのだ。
「ようやく捕まえたぜ……。こいつがお前の体を操る中核のボールだな?」
「お前、まさか気付いて……!」
フォークに捕まえられたまま、顔付きの球体が目を見開いた。
「おうよ。このボールだけが攻撃するフリして実際には攻撃してこないことを、俺は気付いていたぜーっ!! このボールさえ壊せば、てめえはおしまいだ!!」
フォークは残酷な表情を浮かべ、にやりと笑う。
「やっやめ……!!」
「スリーウェイ・ダンス・インパクト!!!」
情容赦なく、フォークの胸の突起、右膝、左膝と、立て続けに球体が叩きつけられる。
「ギャアアァ!!!」
一撃目でひびが入り、二撃目でそれが全体に広がり、三撃目で球体はコナゴナに砕け散る。
同時に他の球体がぼとりと地面に落ちて、そのまま二度と動かなくなった。
「グロロー!!」
フォークの喉から、勝利の雄たけびが迸った。
◇ ◆ ◇
ハンゾウと鞭剣の超人は一部の隙すら相手に与えぬ勢いで睨み合っていた。
鞭剣は地面に伸ばされ、毒蛇のようにハンゾウの隙を狙っている。
先に動いたのは、鞭剣の超人だ。
「トエリャー!!」
鞭剣が跳ね上がり、ハンゾウを斜めに一刀両断しようとした。
ハンゾウは超絶の跳躍力で、一気に間合いを詰め、鞭剣超人に頭上から蹴りかかる。
「ハンゾウ流極意、百足脚!」
連続蹴りが雨霰と鞭剣超人に降り注ぐ。
しかし。
「ぐはあっ!!」
悲鳴を上げたのはハンゾウの方だ。
「グヘヘ、残念だったなァ~!!」
水面を突き破る肉食魚のように跳ね上がった鞭剣が、ハンゾウの背中を貫いていた。
ハンゾウは痛みをこらえて跳躍し、鞭剣から逃れた。
鞭剣超人の背後に着地。
大量に出血し、痛みも相まって足元がふらついた。
「俺様のウィップ・ソードに敵はないぜ!! そら!!」
鞭剣超人は振り向き様、横殴りに鞭剣を振るった。
波打つような複雑な動きで、それがハンゾウを両断すると見えた刹那。
「妖腕刀!」
ハンゾウの刃と化した右腕が一閃する。
鞭剣超人の悲鳴が上がった。
しなる鞭剣は、半ばで切断されている。
切り落とされた大蛇の首のように、鞭剣の半ばが地面に落下した。
その隙を逃さず、ハンゾウは跳躍し一気に間合いを詰めた。
「ハンゾウ流極意、地獄斬首!!」
横一線に薙ぎ払われた妖腕刀が、鞭剣超人の首を、一撃のもとに打ち落とす。
ぐるぐる回りながら、驚愕の表情を貼り付けた鞭剣超人の首が落ちてくる。
ハンゾウは降りしきる血の雨の中、静かに妖腕刀を収めた。
◇ ◆ ◇
「最初に言っておくが、てめえのシューティング・アローは俺様に通じないぜ!!」
金属光沢の超人が、ボーンを挑発した。
「あっそう」
気の抜けた調子で応じるのと同時に、ボーンはシューティング・アローを放っていた。
あやまたず、金属超人の左胸に、それは確かに突き刺さる。
が、同時に金属超人の体がどろりと崩れ、見る間に液状となっていく。
まるで水銀のような見た目のそれは、ボーンがシューティング・アローを引き戻すや否や、元の一そろいの超人の形を取り戻す。
「けけけ。俺様の体は、超極小のナノパーツの集合体だ。外からの力は、ナノパーツを分散させることで無効化できる。そのご自慢のシューティング・アローだけじゃなく、どんな技をかけられても、同じように無効なのさ」
金属超人はゲラゲラ高笑いを浴びせる。
「残念だったなァ、ボーン・コールド!! 俺は無敵だあ!!」
ボーンは腰の鞘に短剣を収めると、すうっと隻眼を細めた。
「行くぜ、メタリック・ツナミ!!」
金属超人が一瞬で液状化し、銀色の津波となってボーンに襲いかかる。
無数のナノパーツの津波の一部が太い鞭のように変化し、ぐにゃりと伸びてボーンの全身を搾り上げようとした、その時。
「ダーク・イクスプロージョン!!」
ボーンの体を中心にして、暗黒の衝撃とでも言うべきものが、放射状に広がった。
巻き込まれた金属超人は、魔法による超高密度の暗黒のエネルギーを全てのナノパーツに浴びせられ、瞬時に生命活動を停止させた。
まるで今まで活発に生きて動いていたのが、嘘のように静まり返る。
朽ちた液状の金属が、ボーンの足元でみすぼらしい水溜まりを作るだけ。
ボーンはいつもの葉巻を取り出し、火を点けて、煙を吸い込んだ。
◇ ◆ ◇
ケビンマスクの前に立ちはだかったのは、全身プロテクターに包まれた、一際いかつい超人だった。
「確かてめえは地球で開催された超人オリンピックの優勝者だろう?」
そのプロテクター超人は尋ねた。
「そういうことだ……。ギブアップするなら、今のうちだぜ」
ケビンは挑発的に応じる。
「そうはいかねえ。あのキン肉マン2世を倒した奴を仕止めたとなりゃ、俺の悪行超人界での株は上がる。このチャンスを逃す手はないぜ~!!」
プロテクター超人は身構えた。
ケビンは、妙に凪いだ空気のまま、緩やかに構えて待ち受ける。
「ウオリャアーーー!!」
かけ声と共に、プロテクター超人がローリングソバットを放った。
ケビンは蹴り脚を両手でキャッチすると、素早く相手の体の下に自分の体をくぐらせ、タワーブリッジの体勢に入った。
プロテクター超人の背骨が、生々しい軋み音を上げだした。
「グガァ~!!」
プロテクター超人が悲鳴を上げる。
ケビンは背骨ばかりか胴体をも真っ二つにせんばかりの勢いで、ぐいぐいと締め上げていく。
と、プロテクター超人の長い髪が、まるで黒い無数の蛇のように動いて、ケビンの首に絡み付き、猛烈な勢いで締め付け始めた。
まるで巨漢が髪の先端と付け根を持って、引っ張り合っているかのような情け容赦のない力だ。
「グオッ!?」
ケビンの息が詰まった隙に、プロテクター超人は技から逃れた。
ひとりでに動く髪はケビンの首に食い込んだまま。
「どんどん行くぜ! 魚雷キック!」
プロテクター超人は、首が締まって苦しむケビンを、そのまま髪の毛で引き寄せる。
そのまま、勢いを加えたドロップキックをケビンの顔面に見舞う。
ケビンがふらついた。
「フハハハハ!! どうやら意識が遠のいてきたようだなァ!! もういっちょ行くぜ!!」
プロテクター超人が、再度ケビンを髪の毛で引き寄せようとした時。
「マッハ・パルパライザー!!」
ケビンが両手を合わせて突進してきた。
回転につれ、首に巻き付いた髪が取れ、ケビンの肺に新鮮な酸素が流れ込む。
額のガードを削り取られ、プロテクター超人が悲鳴を上げる。
痛みと衝撃で、そいつは朦朧となった。
ケビンはプロテクター超人の両腕を捻り、そのまま思い切り解き放った。
反動でプロテクター超人の体が空高く舞い上がる。
後を追って飛び上がり、ケビンは脚で相手の首と肩をロックした。
「ビッグベン・エッジ!!」
轟音を立てて、プロテクター超人の頭部が地面に激突した。
砕けたアスファルトが更に砕け、亀裂が走る。
長い髪がばさりと広がり、そいつの体は断末魔の痙攣にとらわれた。
ケビンは獲物の骸を放り出した。
いつものように、派手な開脚ジャンプを決め、勝利を宣言する。