5 魔法と超人オリンピック
アタルの予想通り、超人オリンピック・ザ・レザレクションの予選期間に入ってからというもの、宇宙各地での悪行超人の動きが活発になってきた。
ノーリスペクトたちは、アタルと共に、その取締りに大わらわだ。
何日もキン肉星に帰れない日が続いたが、世界各地での予選期間が過ぎ、日本での本選が始まると、一段落ついた彼らにも、テレビで超人オリンピック観戦の機会が回ってくるのは必然だ。
「おおい、ボーン! いるかあ!?」
呼び鈴に続いて響いた野太い声に、ボーンが玄関先に出ると、そこにいたのはフォーク・ザ・ジャイアントとスペクトラ・アームズのカップルだ。
フォークは酒瓶を数本、スペクトラは籠に入れた何か料理らしきものを下げている。
甘く芳醇な匂いが漂う。
「グロロ~ッ!! ボーン、超人オリンピック見るんだろ~っ!? 酒とつまみ持って来たから、一緒に見ようぜ~っ!」
「……何でお前らが俺の家でそんなモン見るんだよ!! 俺は興味ねえよ!!」
フォークの言い草に、思わずボーンは反発する。
実を言えば、テレビのチャンネルは超人オリンピック中継局に合わせてあるのだが、すんなり認めるのは癪に触る。
「いいじゃねえか~! お前の家のテレビが一番大きいしな! みんなで見た方が盛り上がるぜ~!」
「ケーク・サレ(塩ケーキ)焼いて来たんだ。ボーンの口にも合うと思って。中に入れてくれない?」
フォークばかりか、スペクトラにも柔らかな口調でそう申し出られて、断り難くなった、その時。
「お前らも、超人オリンピックを見に来たのか?」
フォークたちの背後に歩み寄ったのは、酒瓶を持ったハンゾウだった。
「何だ、ハンゾウ! お前もかあ~!?」
フォークが嬉しそうに振り向く。
「うむ。どうせなら皆で見た方が盛り上がると思ってな」
ハンゾウがボーン宅の玄関先に近付く。
「入れてくれんか、ボーン?」
ボーンは諦めのため息を落とした。
「……入んな」
三人揃って、どやどやとボーンの家に上がる。
「何だあ、ボーン!! チャンネルが超人オリンピックに合わせてあるじゃねえか~!! 興味ねえなんてぬかしやがって!!」
大画面テレビの正面に据えられたソファに腰を落ち着け、酒瓶の封を切りながら、フォークが揶揄する。
テレビの前に備え付けられたソファセットに、全員が思い思いに収まった。
「暇だったから、たまたまチャンネルを合わせていただけだよ」
ボーンは切子細工のコップを仲間たちそれぞれの前に置きながら、冷ややかに返すだけだ。
「……もうすぐ始まるぞ」
ハンゾウが、持ってきた酒をコップに注ぎ、目の前に広げられた、スペクトラの焼いた海老とアボガドのケーク・サレに手を伸ばしながら、仲間たちの注意を促す。
「本大会予選第二弾だってよ。何となくアホらしい競技の予感がするぜ」
ボーンが番組表に目を落としながら嘲る。
「ふーん、参加する超人は、観客の中から相棒を選ぶみたいだね。何の競技なんだろ?」
イケメン・マッスルが競技の説明を始めたのを聞いて、フォークの膝に座ったスペクトラが、そう呟いた。
「すると相棒は人間である可能性が高くなる訳か。ふうむ……」
ハンゾウも奇妙に感じたらしく、腕組みして考え込んだ。
4人の見ている間に、ケビンマスク、ジェイドと次々超人たちが相棒を決めて行く。
ミートがロシアの超人イリューヒンに強引にパートナーに選ばれたのを見た時には、さしものボーンが微かに目をすがめた。
「万太郎はどうなったあ? 選手と観客がごちゃごちゃしてて、よくわかんねえな……」
フォークが画面に目を凝らす。
突如、脂ぎった肥満体の、褌一丁という奇態な見た目の男が画面に映し出された。
ハンゾウ、フォークが一斉にむせる。
次いで、悲嘆に耐えないとでも言いたげな万太郎の顔が映され、その褌男、米男が彼のパートナーに選ばれたことが告げられた。
さしもの4人が、一時に笑い出す。
「なにこの変な人ー!? 地球って、こんな変な人いるの!?」
さしものスペクトラがドン引きだ。
「賭けてもいいが、絶対にヤバイ奴だぞこの親父~!」
フォークは腹を抱えてゲラゲラ笑い。
「どんな競技か知らぬが、こやつでは突破できぬだろうが……!!」
ハンゾウは首をのけ反らせて力なく笑う。
ボーンでさえ、肩を揺らして苦笑していた。
全員が相棒を決めたところで、競技内容の説明が始まる。
「二人三脚でZEI! ZEI! だあ~? 何だそりゃあ~?」
俗っぽいネーミングに、フォークが呆れる。
「アホらしい競技だぜ。小学校の運動会かよ」
嫌な予感の当たったボーンが、酒をあおりながら毒づいた。
画面の中で、選手たちが一斉にスタートラインに並ぶ。
それぞれがパートナーと足首を革ベルトで繋いでいる。
号砲が鳴り響き、選手たちは走り出した。
スタート後間もなく、選手たちの壮絶な潰し合いが行われる様子が映し出された。
ケビンマスクとクロエのコンビは、敵の頭を挟んで蹴り潰し、イリューヒンは自らの身を飛行機に変えて鋭利な翼で対抗選手を切り裂いた。
ミートは彼にぶら下げられている状態で、なすすべもない。
「これってさあ、正義超人の祭典じゃなかったっけ? 随分血生臭いね……」
自らも傭兵として血生臭い戦場に身を置いていたスペクトラが、思わずといった調子で評した。
よほどのことだ。
「正義超人だって、目の前にエサが吊り下げられたらこんなモンさ」
ボーンはクールに切って捨てる。
実際のところ、これは今までボーンが散々見てきた正義超人の裏側のほんの一部が、ちらりとのぞいたくらいの事例に過ぎない。
彼にとっては、特に驚くようなことでもなかったが、ぎょっとした一般の観衆がいい面の皮だというだけだ。
と、極端に急な坂が画面に映し出される。
無理に登ろうとしたコンビが、あえなく海に落ちて、高い水しぶきが上がった。
「なるほど……これをどう越えるかがヤマという訳だな?」
ハンゾウが酒をあおりながらひとりごちる。
見る間に、ミートとイリューヒンのコンビがジグザグに坂を走り抜けることにより、難関を突破する様子が映し出された。
ボーンは内心、ほっと胸を撫で下ろす。
ジェイドと凛子のコンビは、一直線に坂を走り抜ける作戦に出た。
凛子とはちょっとした顔見知りのノーリスペクトたちは、相応の興味を持って成り行きを見守る。
結局、凛子が転げ落ちそうになるも、ジェイドが「ベルリンの赤い雨」を発動して斜面にハーケンを打ち込む要領で、強引に登り切る。
その際、凛子の下着が丸見えになってしまったのは、ご愛敬だ。
「可哀想に、この子、後から録画見てとんでもなく恥ずかしい思いするよ」
スペクトラが肩をすくめた。
最後の方になって万太郎・米男コンビがようやく駆け登り出した。
案の定、途中で転げ落ちそうになり。
「うおっ! 駄目かあ~!?」
フォークが叫んだ矢先、異変が起こった。
米男がその汗のぬめりでナメクジのように斜面にへばり付き、ぐねぐねと這い登り出したのだ。
「……何だか吐き気がするのだが……」
ハンゾウは胸焼けでもしたかのように胸に手を当てた。
「せっかく美味いモン食ってたってのによ……!!」
ボーンは、食べかけだった胡桃とハムのケーク・サレを、酒で喉に流し込む。
「でもよ、万太郎は登りきったことは登りきったみてえだぜ~!!」
フォークがどたどたと走り始めた万太郎たちを画面に見ながら呟いた。
「順位は、このままかなあ……」
画面に大映しになった、一位のケビン・クロエコンビを見て、スペクトラが洩らした。
「万太郎には残ってほしいものだが」
ハンゾウが難しい顔で画面を注視する。
結局、一位がケビン・クロエコンビ、万太郎組は何とか滑り込み、珍競技は幕を閉じた。
「ふう。何とか万太郎は勝ち残ったようだな!」
ハンゾウは露骨にホッとした顔を見せた。
「これで今日は飯が美味いぜ~っ!」
フォークは恋人の作ったホタテとトマトのケーク・サレを頬張りながら、意気揚々と断言した。
「まだ喜ぶのは早いぜ。こりゃ予選だろうが。本選では、どうなるか分かったモンじゃねえ」
ボーンは無遠慮に水を差す。
「何を言うボーン。本選は本格的に超人レスリングの試合になるだろう。我らを倒して万太郎が手に入れた火事場のクソ力の出番ではないか!」
ハンゾウがボーンに反論する。
「そうだぜ、ボーン!! 奴が超人レスリングで優勝できねえなら、俺たちの敗北はなんだあ~!!」
フォークもハンゾウに賛同する。
「甘いぜ、お前ら。確かに火事場のクソ力は有名だが、似たような底力は他の超人も持ってる場合があるんだ。それが火事場のクソ力を上回らないという保証は、どこにもねえさ」
ボーンは勝ち残った選手の紹介、並びに本選の予告を告げるテレビ中継を眺めやりながら淡々と反論する。
「ま、せいぜい頑張るがいいさ。俺らはボクちゃんたちと違って仕事で忙しいけどな!」
ボーンはくいっと酒を呷る。
「そんなこと言いやがって~!! 、どうせ超人オリンピックの試合は、全部録画するんだろ~!?」
フォークがにやにやとボーンの顔を覗き込む。
「ねえ、また機会があったらみんなでオリンピック見ようよ。あたし、また何か作って持って来るから」
スペクトラが三人を見回した。
「スペクトラの手料理付きなら、見てもいいな……あ、その最後に残ったハムのやつ、食べていい?」
ボーンはあっさり相好を崩す。
何のかんの言いつつも、かくして彼らは、超人オリンピックを見守ることとなった。
ノーリスペクトたちは、アタルと共に、その取締りに大わらわだ。
何日もキン肉星に帰れない日が続いたが、世界各地での予選期間が過ぎ、日本での本選が始まると、一段落ついた彼らにも、テレビで超人オリンピック観戦の機会が回ってくるのは必然だ。
「おおい、ボーン! いるかあ!?」
呼び鈴に続いて響いた野太い声に、ボーンが玄関先に出ると、そこにいたのはフォーク・ザ・ジャイアントとスペクトラ・アームズのカップルだ。
フォークは酒瓶を数本、スペクトラは籠に入れた何か料理らしきものを下げている。
甘く芳醇な匂いが漂う。
「グロロ~ッ!! ボーン、超人オリンピック見るんだろ~っ!? 酒とつまみ持って来たから、一緒に見ようぜ~っ!」
「……何でお前らが俺の家でそんなモン見るんだよ!! 俺は興味ねえよ!!」
フォークの言い草に、思わずボーンは反発する。
実を言えば、テレビのチャンネルは超人オリンピック中継局に合わせてあるのだが、すんなり認めるのは癪に触る。
「いいじゃねえか~! お前の家のテレビが一番大きいしな! みんなで見た方が盛り上がるぜ~!」
「ケーク・サレ(塩ケーキ)焼いて来たんだ。ボーンの口にも合うと思って。中に入れてくれない?」
フォークばかりか、スペクトラにも柔らかな口調でそう申し出られて、断り難くなった、その時。
「お前らも、超人オリンピックを見に来たのか?」
フォークたちの背後に歩み寄ったのは、酒瓶を持ったハンゾウだった。
「何だ、ハンゾウ! お前もかあ~!?」
フォークが嬉しそうに振り向く。
「うむ。どうせなら皆で見た方が盛り上がると思ってな」
ハンゾウがボーン宅の玄関先に近付く。
「入れてくれんか、ボーン?」
ボーンは諦めのため息を落とした。
「……入んな」
三人揃って、どやどやとボーンの家に上がる。
「何だあ、ボーン!! チャンネルが超人オリンピックに合わせてあるじゃねえか~!! 興味ねえなんてぬかしやがって!!」
大画面テレビの正面に据えられたソファに腰を落ち着け、酒瓶の封を切りながら、フォークが揶揄する。
テレビの前に備え付けられたソファセットに、全員が思い思いに収まった。
「暇だったから、たまたまチャンネルを合わせていただけだよ」
ボーンは切子細工のコップを仲間たちそれぞれの前に置きながら、冷ややかに返すだけだ。
「……もうすぐ始まるぞ」
ハンゾウが、持ってきた酒をコップに注ぎ、目の前に広げられた、スペクトラの焼いた海老とアボガドのケーク・サレに手を伸ばしながら、仲間たちの注意を促す。
「本大会予選第二弾だってよ。何となくアホらしい競技の予感がするぜ」
ボーンが番組表に目を落としながら嘲る。
「ふーん、参加する超人は、観客の中から相棒を選ぶみたいだね。何の競技なんだろ?」
イケメン・マッスルが競技の説明を始めたのを聞いて、フォークの膝に座ったスペクトラが、そう呟いた。
「すると相棒は人間である可能性が高くなる訳か。ふうむ……」
ハンゾウも奇妙に感じたらしく、腕組みして考え込んだ。
4人の見ている間に、ケビンマスク、ジェイドと次々超人たちが相棒を決めて行く。
ミートがロシアの超人イリューヒンに強引にパートナーに選ばれたのを見た時には、さしものボーンが微かに目をすがめた。
「万太郎はどうなったあ? 選手と観客がごちゃごちゃしてて、よくわかんねえな……」
フォークが画面に目を凝らす。
突如、脂ぎった肥満体の、褌一丁という奇態な見た目の男が画面に映し出された。
ハンゾウ、フォークが一斉にむせる。
次いで、悲嘆に耐えないとでも言いたげな万太郎の顔が映され、その褌男、米男が彼のパートナーに選ばれたことが告げられた。
さしもの4人が、一時に笑い出す。
「なにこの変な人ー!? 地球って、こんな変な人いるの!?」
さしものスペクトラがドン引きだ。
「賭けてもいいが、絶対にヤバイ奴だぞこの親父~!」
フォークは腹を抱えてゲラゲラ笑い。
「どんな競技か知らぬが、こやつでは突破できぬだろうが……!!」
ハンゾウは首をのけ反らせて力なく笑う。
ボーンでさえ、肩を揺らして苦笑していた。
全員が相棒を決めたところで、競技内容の説明が始まる。
「二人三脚でZEI! ZEI! だあ~? 何だそりゃあ~?」
俗っぽいネーミングに、フォークが呆れる。
「アホらしい競技だぜ。小学校の運動会かよ」
嫌な予感の当たったボーンが、酒をあおりながら毒づいた。
画面の中で、選手たちが一斉にスタートラインに並ぶ。
それぞれがパートナーと足首を革ベルトで繋いでいる。
号砲が鳴り響き、選手たちは走り出した。
スタート後間もなく、選手たちの壮絶な潰し合いが行われる様子が映し出された。
ケビンマスクとクロエのコンビは、敵の頭を挟んで蹴り潰し、イリューヒンは自らの身を飛行機に変えて鋭利な翼で対抗選手を切り裂いた。
ミートは彼にぶら下げられている状態で、なすすべもない。
「これってさあ、正義超人の祭典じゃなかったっけ? 随分血生臭いね……」
自らも傭兵として血生臭い戦場に身を置いていたスペクトラが、思わずといった調子で評した。
よほどのことだ。
「正義超人だって、目の前にエサが吊り下げられたらこんなモンさ」
ボーンはクールに切って捨てる。
実際のところ、これは今までボーンが散々見てきた正義超人の裏側のほんの一部が、ちらりとのぞいたくらいの事例に過ぎない。
彼にとっては、特に驚くようなことでもなかったが、ぎょっとした一般の観衆がいい面の皮だというだけだ。
と、極端に急な坂が画面に映し出される。
無理に登ろうとしたコンビが、あえなく海に落ちて、高い水しぶきが上がった。
「なるほど……これをどう越えるかがヤマという訳だな?」
ハンゾウが酒をあおりながらひとりごちる。
見る間に、ミートとイリューヒンのコンビがジグザグに坂を走り抜けることにより、難関を突破する様子が映し出された。
ボーンは内心、ほっと胸を撫で下ろす。
ジェイドと凛子のコンビは、一直線に坂を走り抜ける作戦に出た。
凛子とはちょっとした顔見知りのノーリスペクトたちは、相応の興味を持って成り行きを見守る。
結局、凛子が転げ落ちそうになるも、ジェイドが「ベルリンの赤い雨」を発動して斜面にハーケンを打ち込む要領で、強引に登り切る。
その際、凛子の下着が丸見えになってしまったのは、ご愛敬だ。
「可哀想に、この子、後から録画見てとんでもなく恥ずかしい思いするよ」
スペクトラが肩をすくめた。
最後の方になって万太郎・米男コンビがようやく駆け登り出した。
案の定、途中で転げ落ちそうになり。
「うおっ! 駄目かあ~!?」
フォークが叫んだ矢先、異変が起こった。
米男がその汗のぬめりでナメクジのように斜面にへばり付き、ぐねぐねと這い登り出したのだ。
「……何だか吐き気がするのだが……」
ハンゾウは胸焼けでもしたかのように胸に手を当てた。
「せっかく美味いモン食ってたってのによ……!!」
ボーンは、食べかけだった胡桃とハムのケーク・サレを、酒で喉に流し込む。
「でもよ、万太郎は登りきったことは登りきったみてえだぜ~!!」
フォークがどたどたと走り始めた万太郎たちを画面に見ながら呟いた。
「順位は、このままかなあ……」
画面に大映しになった、一位のケビン・クロエコンビを見て、スペクトラが洩らした。
「万太郎には残ってほしいものだが」
ハンゾウが難しい顔で画面を注視する。
結局、一位がケビン・クロエコンビ、万太郎組は何とか滑り込み、珍競技は幕を閉じた。
「ふう。何とか万太郎は勝ち残ったようだな!」
ハンゾウは露骨にホッとした顔を見せた。
「これで今日は飯が美味いぜ~っ!」
フォークは恋人の作ったホタテとトマトのケーク・サレを頬張りながら、意気揚々と断言した。
「まだ喜ぶのは早いぜ。こりゃ予選だろうが。本選では、どうなるか分かったモンじゃねえ」
ボーンは無遠慮に水を差す。
「何を言うボーン。本選は本格的に超人レスリングの試合になるだろう。我らを倒して万太郎が手に入れた火事場のクソ力の出番ではないか!」
ハンゾウがボーンに反論する。
「そうだぜ、ボーン!! 奴が超人レスリングで優勝できねえなら、俺たちの敗北はなんだあ~!!」
フォークもハンゾウに賛同する。
「甘いぜ、お前ら。確かに火事場のクソ力は有名だが、似たような底力は他の超人も持ってる場合があるんだ。それが火事場のクソ力を上回らないという保証は、どこにもねえさ」
ボーンは勝ち残った選手の紹介、並びに本選の予告を告げるテレビ中継を眺めやりながら淡々と反論する。
「ま、せいぜい頑張るがいいさ。俺らはボクちゃんたちと違って仕事で忙しいけどな!」
ボーンはくいっと酒を呷る。
「そんなこと言いやがって~!! 、どうせ超人オリンピックの試合は、全部録画するんだろ~!?」
フォークがにやにやとボーンの顔を覗き込む。
「ねえ、また機会があったらみんなでオリンピック見ようよ。あたし、また何か作って持って来るから」
スペクトラが三人を見回した。
「スペクトラの手料理付きなら、見てもいいな……あ、その最後に残ったハムのやつ、食べていい?」
ボーンはあっさり相好を崩す。
何のかんの言いつつも、かくして彼らは、超人オリンピックを見守ることとなった。