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5 魔法と超人オリンピック

「超人オリンピック・ザ・レザレクション?」

 手渡されたパンフレットを眺めながら、ボーンは胡散臭げに呟いた。

「実に30年以上ぶりの開催になる。万太郎も日本代表で出場するはずだ」

 ボーンの自宅の居間兼客間に座ったアタルは、そこに集まったノーリスペクト三人にそう告げる。

「へえ~! なかなか面白そうだあ~!」

 巨大な手でパンフレットをつまみ上げながら、フォークが口にする。

「しかし、我らには関係なさそうだな。正義超人のための祭典と書いてある」

 素早くパンフレットに目を通し、ハンゾウが感想を漏らした。

「左様。今からお前たちが正義超人になると申請したとしても、開催までに間に合わないだろう」

 アタルは腕組みをしたまま、ノーリスペクトたちにきっぱり言い切る。

「で? 何でわざわざこんなことを俺たちに教えるのよ?」

 そもそも正義超人になんざなりたくもねえよ。
 ボーンはアタルに問うた。

「地球で超人オリンピックが開催するに当たり、それ以外の星の警戒が手薄になる恐れがある。当然、関心のある参加者以外の超人も、地球に集まるだろうからな」

 アタルは淡々と説明し出した。

「お前たちには、宇宙各地の犯罪取締りの強化を命じる。……見物したくても、超人オリンピックを見に地球に、という訳にはいかんぞ? そこをわきまえておけ」

「グロロ~ッ、なんだつまらねえ~!」

 フォークが不平を洩らす。

「俺は一向に興味ねえな。野郎同士の殴り合いなんざ」

 超人レスラーにあるまじきことを呟き、ボーンはパンフレットを放り出した。

「その超人オリンピックとやらは、地球以外の惑星でも中継されるのだろう?」

 ハンゾウがアタルに確認する。

「そのはずだ。お前らも、仕事の合間に中継を視聴できるかも知れん」

 アタルが三人を順繰りに眺めやる。

「俺は見るぜえ~!」

 フォークは張り切っていた。

「万太郎がどの程度になるのか気になるところだな」

 ハンゾウは、自分たちを倒して火事場のクソ力を手に入れた万太郎が、果たしてそれを駆使してどこまで行くのかが気になるらしい。

「俺はどうでも構わねえさ。それより仕事だな」

 掻き入れ時というやつになるのかもな、とボーン。
 一方で地球に行ってみたいという欲求もある。
 無論超人オリンピックに出たい訳ではなく、サタンの動向を調べるためだ。

「開催は1ヶ月後。それまでにいつもより忙しくなる覚悟をしておけ、お前ら」

 アタルはそう言い残すと、立ち上がり、そのまま帰って行った。


 ◇ ◆ ◇

「どうするよ!?」

 フォークが広い肩をすくめて問う。

「まあ、いつも通り粛々と仕事を進めるしかあるまい。合間に超人オリンピックとやらをテレビ観戦することくらいはできるだろう」

 ハンゾウがそう呟く。

「へっ、俺はオリンピックなんざどうでもいいがね。仕事の方でせいぜい稼がせてもらうさ」

 ボーンは葉巻をふかす。

 こうしてノーリスペクトは新たな事態に対する備えを始めることとなった。
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