3 ノーリスペクト
不意に姿を見せたその二人に、ハンゾウとフォークは怪訝そうな顔を見せた。
「ボーン? 一体……?」
ハンゾウは接見室を仕切る細かい穴の開いたアクリル板の前で、首をかしげる。
昨日も来たばかりの超人は、仕切りの前でいささか苦々しい表情だった。
「すまねえな。お前らを騙すつもりじゃなかったんだが」
自分らしくない言い草だと思いながら、ボーンはもう一人の超人の脇に並んで立った。
「グロロ~ッ! 王兄殿下が俺らに何の用だ~っ!? しかもボーンと一緒とはどういうこった!?」
フォークはアクリル板の前に座るその超人に目を向けて問うた。
ボーンを従えた形で現れたキン肉アタルは、仕切り板の前に座って、静かにノーリスペクト残り二人を見据えた。
「お前たちが今、どういう気持ちでいるのかは、昨日ボーンから報告を受けた」
その言葉に、ハンゾウとフォークが一斉にボーンを見た。
「昨日は確かにお前らがどう考えているかどうか、アタルに言われて探りに来てた。それ以前のは、俺が勝手に来てただけだがね」
腕組みをしたまま、ボーンは二人にそう告げた。
いささか言い訳じみているなとの感想と共に。
「報告を受けての検討の結果、お前たちは司法取引によって釈放されるのに適合と判断した。どうだ? ボーンと同じように釈放される代わりに俺に従い、悪行超人を取り締まる仕事をしてみんか?」
アタルは順繰りに二人を眺めやる。
「そういうことか」
ハンゾウがあっさりうなずく。
「俺はやっても構わん。望むところだ」
「グロロ~ッ、俺もだあ! 早くシャバで暴れてえ~っ!」
フォークが拳を振り回す。
「……良かろう。ただちに釈放の手続きに入る」
アタルは指を鳴らして控えていたプリズンの責任者を呼び、その場で二通の書類にサインして、彼に手渡した。
責任者はそれを持っていずこかへと消え、間もなくハンゾウとフォークは手枷足枷を外された姿でボーンとアタルの前に姿を表す。
「さて。正式な俺の私兵としての契約を済ませなければならぬ。マッスルガム宮殿に来てくれ、二人とも」
アタルはノーリスペクトの三人を伴い、宮殿に向かった。
◇ ◆ ◇
「……さて、これでお前たちは正式な俺の私兵となった」
マッスルガム宮殿の一室で、アタルは差し向かいで座ったハンゾウとフォークからサインした契約書を受け取った。
ボーンはアタルの後ろで腕組みをして立ち、そんな仲間たちの様子を見守っていた。
「グロロ~ッ、形は違うが、ノーリスペクト再結成だあ~!」
フォークが意気揚々と宣言する。
「俺たちの最初の仕事は、決まっているのか?」
ハンゾウは、冷静にアタルに問うた。
「その前に……ボーン、この二人にお前の秘密を見せてやった方が良い。伏せたままでは後々面倒だ」
アタルに催促され、ボーンは舌打ちした。
「またあれやるのかあ? ひっじょーに恥ずかしいんだがね、あれ」
「口で言うより実際に見せた方が早い。恥ずかしがるのも今更だろう?」
アタルに更に促され、ボーンはため息をついた。
ターバンに手をかける。
「ボーン……?」
ターバンを解き始めたボーンに、ハンゾウが怪訝そうな声をかける。
「グロ~ッ、そう言や俺、ボーンのターバンの下見たことねえ。一体何があるんだあ?」
フォークは解かれて行く黒い布を目で追いながら、そう呟く。
やがて完全に解かれたターバンの下から現れたものは。
「額に宝石だと!?」
ハンゾウが思わず声を上げた。
「俺、ダイヤモンドの採掘現場で働いていたからわかるぞ~っ! こいつは本物の黒ダイヤだあ~っ!」
フォークがまじまじと目を見開いた。
白い癖のある短髪と、額の黒いダイヤモンドを露わに、ボーンは立ち尽くしていた。
「あのサフィーアという女と同じ……。ということは、お前はカシドゥア人なのか!?」
ハンゾウが声を張り上げる。
「確かに俺は半分カシドゥア人だよ。お袋が純血のカシドゥア人らしい。俺自身は雑種だから、こんな死神めいた顔してるがね」
ボーンはにやりと笑う。
「あんな弱そうな親父から生まれてんのにお前がやけに強いのは、カシドゥアの血が原因かあ~!」
フォークが納得いったように手を打つ。
「カシドゥア人の主神、超神カシドゥアは、14000年前の超人大戦の折りに、サタンに吸収された」
ターバンを巻き直し始めるボーンを見やりながら、アタルは補足説明する。
「ボーンは、サタンから主神カシドゥアを解放する方策を探しているらしい」
ハンゾウとフォークは、思わず顔を見合わせた。
「それは……いくらお前といえども、難しいのではないか?」
ハンゾウが珍しく怖気を振るった様子だ。
「そうだあ~っ! 確かサタンって奴は、実体がねえとか、そんな気味悪い話じゃなかったかあ!? いくらお前が強くても、実体のない相手じゃどうしようもねえだろ~っ!」
フォークがボーンを思いとどまらせようとする。
「何でも、カシドゥアの伝説によると、倒す方法があるそうだぜ。それが具体的に何かはわからねえがな」
ターバンを巻き終えたボーンは、腰の引けている仲間たちにそう教えた。
「それはそれとして、お前たちにはまずサタンよりも悪行超人を倒してもらう!」
アタルがノーリスペクトの面々を見回した。
「目的地は……」
「ボーン? 一体……?」
ハンゾウは接見室を仕切る細かい穴の開いたアクリル板の前で、首をかしげる。
昨日も来たばかりの超人は、仕切りの前でいささか苦々しい表情だった。
「すまねえな。お前らを騙すつもりじゃなかったんだが」
自分らしくない言い草だと思いながら、ボーンはもう一人の超人の脇に並んで立った。
「グロロ~ッ! 王兄殿下が俺らに何の用だ~っ!? しかもボーンと一緒とはどういうこった!?」
フォークはアクリル板の前に座るその超人に目を向けて問うた。
ボーンを従えた形で現れたキン肉アタルは、仕切り板の前に座って、静かにノーリスペクト残り二人を見据えた。
「お前たちが今、どういう気持ちでいるのかは、昨日ボーンから報告を受けた」
その言葉に、ハンゾウとフォークが一斉にボーンを見た。
「昨日は確かにお前らがどう考えているかどうか、アタルに言われて探りに来てた。それ以前のは、俺が勝手に来てただけだがね」
腕組みをしたまま、ボーンは二人にそう告げた。
いささか言い訳じみているなとの感想と共に。
「報告を受けての検討の結果、お前たちは司法取引によって釈放されるのに適合と判断した。どうだ? ボーンと同じように釈放される代わりに俺に従い、悪行超人を取り締まる仕事をしてみんか?」
アタルは順繰りに二人を眺めやる。
「そういうことか」
ハンゾウがあっさりうなずく。
「俺はやっても構わん。望むところだ」
「グロロ~ッ、俺もだあ! 早くシャバで暴れてえ~っ!」
フォークが拳を振り回す。
「……良かろう。ただちに釈放の手続きに入る」
アタルは指を鳴らして控えていたプリズンの責任者を呼び、その場で二通の書類にサインして、彼に手渡した。
責任者はそれを持っていずこかへと消え、間もなくハンゾウとフォークは手枷足枷を外された姿でボーンとアタルの前に姿を表す。
「さて。正式な俺の私兵としての契約を済ませなければならぬ。マッスルガム宮殿に来てくれ、二人とも」
アタルはノーリスペクトの三人を伴い、宮殿に向かった。
◇ ◆ ◇
「……さて、これでお前たちは正式な俺の私兵となった」
マッスルガム宮殿の一室で、アタルは差し向かいで座ったハンゾウとフォークからサインした契約書を受け取った。
ボーンはアタルの後ろで腕組みをして立ち、そんな仲間たちの様子を見守っていた。
「グロロ~ッ、形は違うが、ノーリスペクト再結成だあ~!」
フォークが意気揚々と宣言する。
「俺たちの最初の仕事は、決まっているのか?」
ハンゾウは、冷静にアタルに問うた。
「その前に……ボーン、この二人にお前の秘密を見せてやった方が良い。伏せたままでは後々面倒だ」
アタルに催促され、ボーンは舌打ちした。
「またあれやるのかあ? ひっじょーに恥ずかしいんだがね、あれ」
「口で言うより実際に見せた方が早い。恥ずかしがるのも今更だろう?」
アタルに更に促され、ボーンはため息をついた。
ターバンに手をかける。
「ボーン……?」
ターバンを解き始めたボーンに、ハンゾウが怪訝そうな声をかける。
「グロ~ッ、そう言や俺、ボーンのターバンの下見たことねえ。一体何があるんだあ?」
フォークは解かれて行く黒い布を目で追いながら、そう呟く。
やがて完全に解かれたターバンの下から現れたものは。
「額に宝石だと!?」
ハンゾウが思わず声を上げた。
「俺、ダイヤモンドの採掘現場で働いていたからわかるぞ~っ! こいつは本物の黒ダイヤだあ~っ!」
フォークがまじまじと目を見開いた。
白い癖のある短髪と、額の黒いダイヤモンドを露わに、ボーンは立ち尽くしていた。
「あのサフィーアという女と同じ……。ということは、お前はカシドゥア人なのか!?」
ハンゾウが声を張り上げる。
「確かに俺は半分カシドゥア人だよ。お袋が純血のカシドゥア人らしい。俺自身は雑種だから、こんな死神めいた顔してるがね」
ボーンはにやりと笑う。
「あんな弱そうな親父から生まれてんのにお前がやけに強いのは、カシドゥアの血が原因かあ~!」
フォークが納得いったように手を打つ。
「カシドゥア人の主神、超神カシドゥアは、14000年前の超人大戦の折りに、サタンに吸収された」
ターバンを巻き直し始めるボーンを見やりながら、アタルは補足説明する。
「ボーンは、サタンから主神カシドゥアを解放する方策を探しているらしい」
ハンゾウとフォークは、思わず顔を見合わせた。
「それは……いくらお前といえども、難しいのではないか?」
ハンゾウが珍しく怖気を振るった様子だ。
「そうだあ~っ! 確かサタンって奴は、実体がねえとか、そんな気味悪い話じゃなかったかあ!? いくらお前が強くても、実体のない相手じゃどうしようもねえだろ~っ!」
フォークがボーンを思いとどまらせようとする。
「何でも、カシドゥアの伝説によると、倒す方法があるそうだぜ。それが具体的に何かはわからねえがな」
ターバンを巻き終えたボーンは、腰の引けている仲間たちにそう教えた。
「それはそれとして、お前たちにはまずサタンよりも悪行超人を倒してもらう!」
アタルがノーリスペクトの面々を見回した。
「目的地は……」