5章
誘発剤が全身の神経を逆なでし、ジュードの視界は真っ赤な火花を散らしている。 指先は痙攣し、意識を繋ぎ止めるだけでも並大抵の精神力ではなかった。だが、彼は震える指を自らの腿に深く突き立て、その痛みで強引に意識を覚醒させた。
「……っ……ふ……」
ジュードは床に散らばった弾薬を拾い上げ、一発ずつリボルバーのシリンダーに滑り込ませていく。カチリ、カチリ。金属音だけが、死のような静寂のなかで無機質に響く。 ギルバートはソファに深く沈み、その光景を冷徹な目で見つめていた。ジュードがもし一発でも弾を落とせば、あるいは苦痛に耐えかねて意識を失えば、その瞬間に銃口を向けるつもりだった。
「遅いぞ、ジュード。あと四十五分だ」
「……問題、ありません……ボス……」
ジュードの声は、もはや掠れた摩擦音のようだった。 劇薬によって強制的に活性化された彼の濾過細胞は、体内に溜まった毒を猛烈な勢いで分解し始めている。しかし、それは同時に、彼の肉体を内側から削り取っているのと同じだった。首筋の鮮度計は、過負荷を示す警告音を断続的に鳴らし続けている。
「っ……あ……」
不意に、ジュードの口からどす黒い血が溢れた。毒の分解が追いつかず、内臓が悲鳴を上げている証拠だ。 それでも彼は、拭うことすら忘れたように、銃身のオイルを丁寧に布で拭き上げていく。
ギルバートは、その血の赤色を見た瞬間、椅子を蹴るようにして立ち上がった。ジュードの元へ歩み寄り、その髪を乱暴に掴んで顔を上げさせる。
「おい。死ぬなら外で死ねと言ったはずだ。部屋を汚すな」
「……申し訳、ございません。ですが、まだ……一時間、経っておりません」
ジュードは血に濡れた唇で、狂気じみた笑みを浮かべた。 その瞳には、恐怖も、助けを求める色もない。ただ、主人の命令を完璧に遂行し、道具として果てようとする、純粋すぎて吐き気がするほどの忠誠だけがあった。
「……貴様、本当に……」
ギルバートは、手に持ったリボルバーをジュードのこめかみに押し当てた。 冷たい銃口が、高熱に浮かされたジュードの肌に触れる。
「今、その呼び方を捨てろ。『助けてくれ、ギル』と泣いて縋れ。そうすれば、今すぐその苦痛を終わらせてやる」
「……お断り、します。私は、あなたの……最高の、右腕……ですから……」
ジュードは銃口に自ら頭を押し付け、恍惚とした表情で主を見上げた。 彼にとって、ボスに「殺される」ことは、廃棄されることよりもずっと誇り高い最期だった。
ギルバートの指がトリガーにかかる。 だが、その指は、かつてないほどに震えていた。 支配しているのは自分のはずなのに、この目の前の男の、頑ななまでの「道具としてのプライド」に、自分の方が支配されているような錯覚に陥る。
「……ちっ」
ギルバートは銃を床に投げ捨てると、ジュードの体を力任せに抱き寄せた。 そして、その耳元で、呪いのような言葉を吐き出す。
「勝手に死ぬことは許さんと言ったはずだ。……ジュード、貴様は俺が壊すまで、俺の隣で地獄を見続けろ」
ギルバートは、ジュードの服を剥ぎ取り、その黒い紋様が脈打つ胸元に直接、自らの掌を押し当てた。 それは抱擁というにはあまりに暴力的で、だが、この世の何よりも深く結びついた、二人の「共生」の証明だった。
「……っ……ふ……」
ジュードは床に散らばった弾薬を拾い上げ、一発ずつリボルバーのシリンダーに滑り込ませていく。カチリ、カチリ。金属音だけが、死のような静寂のなかで無機質に響く。 ギルバートはソファに深く沈み、その光景を冷徹な目で見つめていた。ジュードがもし一発でも弾を落とせば、あるいは苦痛に耐えかねて意識を失えば、その瞬間に銃口を向けるつもりだった。
「遅いぞ、ジュード。あと四十五分だ」
「……問題、ありません……ボス……」
ジュードの声は、もはや掠れた摩擦音のようだった。 劇薬によって強制的に活性化された彼の濾過細胞は、体内に溜まった毒を猛烈な勢いで分解し始めている。しかし、それは同時に、彼の肉体を内側から削り取っているのと同じだった。首筋の鮮度計は、過負荷を示す警告音を断続的に鳴らし続けている。
「っ……あ……」
不意に、ジュードの口からどす黒い血が溢れた。毒の分解が追いつかず、内臓が悲鳴を上げている証拠だ。 それでも彼は、拭うことすら忘れたように、銃身のオイルを丁寧に布で拭き上げていく。
ギルバートは、その血の赤色を見た瞬間、椅子を蹴るようにして立ち上がった。ジュードの元へ歩み寄り、その髪を乱暴に掴んで顔を上げさせる。
「おい。死ぬなら外で死ねと言ったはずだ。部屋を汚すな」
「……申し訳、ございません。ですが、まだ……一時間、経っておりません」
ジュードは血に濡れた唇で、狂気じみた笑みを浮かべた。 その瞳には、恐怖も、助けを求める色もない。ただ、主人の命令を完璧に遂行し、道具として果てようとする、純粋すぎて吐き気がするほどの忠誠だけがあった。
「……貴様、本当に……」
ギルバートは、手に持ったリボルバーをジュードのこめかみに押し当てた。 冷たい銃口が、高熱に浮かされたジュードの肌に触れる。
「今、その呼び方を捨てろ。『助けてくれ、ギル』と泣いて縋れ。そうすれば、今すぐその苦痛を終わらせてやる」
「……お断り、します。私は、あなたの……最高の、右腕……ですから……」
ジュードは銃口に自ら頭を押し付け、恍惚とした表情で主を見上げた。 彼にとって、ボスに「殺される」ことは、廃棄されることよりもずっと誇り高い最期だった。
ギルバートの指がトリガーにかかる。 だが、その指は、かつてないほどに震えていた。 支配しているのは自分のはずなのに、この目の前の男の、頑ななまでの「道具としてのプライド」に、自分の方が支配されているような錯覚に陥る。
「……ちっ」
ギルバートは銃を床に投げ捨てると、ジュードの体を力任せに抱き寄せた。 そして、その耳元で、呪いのような言葉を吐き出す。
「勝手に死ぬことは許さんと言ったはずだ。……ジュード、貴様は俺が壊すまで、俺の隣で地獄を見続けろ」
ギルバートは、ジュードの服を剥ぎ取り、その黒い紋様が脈打つ胸元に直接、自らの掌を押し当てた。 それは抱擁というにはあまりに暴力的で、だが、この世の何よりも深く結びついた、二人の「共生」の証明だった。