2章
セダンの後部座席は、外界の雨音を遮断した濃密な沈黙に支配されていた。 防音加工が施された車内には、ギルバートの荒い呼吸だけが獣の唸りのように響いている。
「ジュード……。来い、早くしろ……ッ!」
ギルバートがジュードの胸ぐらを掴み、力任せに引き寄せた。 その瞳はもはや焦点を結んでおらず、膨れ上がった精神毒(デブリ)が、彼の理性を内側から食い破ろうとしている。ギルバートにとって、この瞬間のジュードは信頼する右腕などではない。溢れ出した泥を流し込むための、ただの「穴」だった。
「……はい、ギルバート様」
ジュードは手慣れた動作で、自身のネクタイを緩め、シャツのボタンをいくつか外した。 露わになった鎖骨のあたりには、すでに幾層にも重なった黒い紋様が、毒に侵された皮膚の上で禍々しくのたうっている。
ジュードがボスの膝の間に割り込み、その熱を帯びた体に触れた瞬間、儀式は始まった。
「あ……っ、ぐ、…………ぅ!!」
ギルバートがジュードの首筋に深く歯を立てると同時に、膨大な量の「毒」が、結合した粘膜を通じてジュードの体内へと奔流となって流れ込んだ。
ジュードの視界が、火花を散らしたように白く染まる。 それは、神経を直接ヤスリで削られるような激痛と、脊髄を突き抜けるような、倫理を置き去りにした強烈な快楽。 パラサイトであるジュードの細胞が、主人の「汚れ」をエネルギーとして貪り食い、代わりに彼の精神を汚濁させていく。
「はぁ、……っ、あ……あああ!!」
ジュードの指先が、高級な本革のシートを深く掻きむしった。 喉の奥からせり上がる喘ぎは、もはや悲鳴に近い。 ギルバートはジュードの細い腰を砕かんばかりに指を食い込ませ、自身の狂気を、鬱滞したドロドロの感情を、すべてこの器の中に叩きつけた。
「……いい声だ、ジュード。お前が壊れるたびに、俺の頭は晴れていく」
毒が抜けていく解放感に、ギルバートの声が陶酔を帯びる。 対照的に、ジュードは毒の過剰摂取により、高熱にうなされるような溜息を吐きながら、ぐったりと主人の肩に顔を埋めた。
ジュードの首にある「鮮度計」が、過負荷を知らせるようにチカチカと不吉な赤色に点滅している。 今回もまた、彼の「器」としての寿命は削られた。 あと何回、この男の毒を飲み込めば、自分は廃人となって廃棄場へ捨てられるのか。
「……まだ、……足りません……」
意識が混濁する中、ジュードは震える手で、自らボスの体に縋り付いた。 恐怖はない。あるのは、自分をボロボロにするこの毒がなければ、もはや生を実感できないという、救いようのない絶望への依存だ。
「もっと、ください……。あなたの狂気が、もっと欲しい……っ」
「……狂っているのは、俺かお前か」
ギルバートは冷酷な笑みを浮かべ、まだ毒を求めて震える右腕の唇を、乱暴に塞いだ。 雨に打たれるセダンの窓は、内側からの熱気ですっかり白く曇り、二人の悍ましい共依存を夜の闇へと隠し続けていた。
「ジュード……。来い、早くしろ……ッ!」
ギルバートがジュードの胸ぐらを掴み、力任せに引き寄せた。 その瞳はもはや焦点を結んでおらず、膨れ上がった精神毒(デブリ)が、彼の理性を内側から食い破ろうとしている。ギルバートにとって、この瞬間のジュードは信頼する右腕などではない。溢れ出した泥を流し込むための、ただの「穴」だった。
「……はい、ギルバート様」
ジュードは手慣れた動作で、自身のネクタイを緩め、シャツのボタンをいくつか外した。 露わになった鎖骨のあたりには、すでに幾層にも重なった黒い紋様が、毒に侵された皮膚の上で禍々しくのたうっている。
ジュードがボスの膝の間に割り込み、その熱を帯びた体に触れた瞬間、儀式は始まった。
「あ……っ、ぐ、…………ぅ!!」
ギルバートがジュードの首筋に深く歯を立てると同時に、膨大な量の「毒」が、結合した粘膜を通じてジュードの体内へと奔流となって流れ込んだ。
ジュードの視界が、火花を散らしたように白く染まる。 それは、神経を直接ヤスリで削られるような激痛と、脊髄を突き抜けるような、倫理を置き去りにした強烈な快楽。 パラサイトであるジュードの細胞が、主人の「汚れ」をエネルギーとして貪り食い、代わりに彼の精神を汚濁させていく。
「はぁ、……っ、あ……あああ!!」
ジュードの指先が、高級な本革のシートを深く掻きむしった。 喉の奥からせり上がる喘ぎは、もはや悲鳴に近い。 ギルバートはジュードの細い腰を砕かんばかりに指を食い込ませ、自身の狂気を、鬱滞したドロドロの感情を、すべてこの器の中に叩きつけた。
「……いい声だ、ジュード。お前が壊れるたびに、俺の頭は晴れていく」
毒が抜けていく解放感に、ギルバートの声が陶酔を帯びる。 対照的に、ジュードは毒の過剰摂取により、高熱にうなされるような溜息を吐きながら、ぐったりと主人の肩に顔を埋めた。
ジュードの首にある「鮮度計」が、過負荷を知らせるようにチカチカと不吉な赤色に点滅している。 今回もまた、彼の「器」としての寿命は削られた。 あと何回、この男の毒を飲み込めば、自分は廃人となって廃棄場へ捨てられるのか。
「……まだ、……足りません……」
意識が混濁する中、ジュードは震える手で、自らボスの体に縋り付いた。 恐怖はない。あるのは、自分をボロボロにするこの毒がなければ、もはや生を実感できないという、救いようのない絶望への依存だ。
「もっと、ください……。あなたの狂気が、もっと欲しい……っ」
「……狂っているのは、俺かお前か」
ギルバートは冷酷な笑みを浮かべ、まだ毒を求めて震える右腕の唇を、乱暴に塞いだ。 雨に打たれるセダンの窓は、内側からの熱気ですっかり白く曇り、二人の悍ましい共依存を夜の闇へと隠し続けていた。