~蛍煌石を追って~
綺麗に舗装された色とりどりの石畳。
一行はネグリート砦から引き返し、再びフォンダンシティに辿り着いた。
帰りの方がさくさく進めたのは彼等が強くなったのもあるが、新たな仲間が増えたから。
「ここがフォンダンシティ……煌めきの街、ですね」
「そうだ。ここで採れる蛍煌石を使って、障気の中を行けるようにするんだが……」
オグマはきょろきょろと辺りを見回し、古びた小さな店を見つける。
「蛍煌石を加工するには特殊な技術が必要だ。この街には鍛冶屋が多いが、それが出来る職人は限られている」
「あのぼろっちい店にそれがいるんかの?」
ミレニアの言葉に苦笑しつつ頷く。
「いかにも頑固なおじさまがやってます、って感じね」
「気に入らないヤツには何も作ってやらん、とかのぅ?」
頑固一徹な職人のイメージものまねをするとデューは呆れてじとりとミレニアに視線を送る。
「……あのなぁ、それじゃあ商売にならないだろ?」
「ふむ、それもそうかの」
などと言いつつ扉を開けると……
「おぅ、何の用だ」
凄まじい眼光に出迎えられた。
先程ミレニアが思い描いた姿とさほど違わず、頑固一徹な職人そのものといった男がそこにいた。
(これは……あながちはずれでもないかもよ?)
(た、確かにな……)
放たれる威圧にデューは我知らず息を呑む。
「用がないなら帰れ」
「ガトー殿、今日は依頼があって参りました」
「依頼?」
恭しく一礼するオグマをぎろりと睨む職人……ガトー。
(ガトーじゃと?……元王室付きの凄腕鍛冶職人じゃと聞いとるが、こんな所にいたとは……)
険しい顔つきは性格をそのまま表したようで、ごつごつと岩みたいな手は店の商品として置かれている繊細な装飾品を生み出すとはとても思えない。
そんな男がようやく作業の手を止め、こちらに近付いてきた。
「なんだ、誰かと思えばオグマじゃねぇか。そっちの連中は?」
「今の私の……仲間です」
そう言うと男は驚きに目を丸くして、一行を見渡す。
「仲間……何年もずっと山に籠ってたおめぇにか!?」
「言われとるの、引き籠もり」
「……面目ない」
ちょんと小突かれ、オグマはがくりと肩を落とした。
「そ、それで依頼を……」
「そりゃあ依頼と言われなくても祝いに何か作ってやりてぇが、そうもいかなくてな……」
困った様子で頭を掻くガトーに一行は顔を見合わせる。
「材料が足りねぇんだよ。蛍煌石の採掘は今年の分はもう終わっていてな」
「そんな、どうすれば……」
「……見たとこ訳アリみてぇだな」
話してみろ、と促されデュー達はこれまでの経緯をガトーに説明した。
障気に包まれた王都に向かうには蛍煌石を加工して作った装飾品が必要だ、と。
「山から出てきたと思ったら王都って……おめぇ、大丈夫なのか?」
「……決めた事、ですから」
揺るぎない決心をこめて強く頷くオグマにガトーは腕組みをして唸る。
「むむ、尚更協力してやりてぇんだがな……」
「何があったんじゃ?」
「……ドロボウだよ。ほんの少し留守にしていた隙に蛍煌石の塊を持って行かれた。ったく、マヌケな話だぜ……」
よほどショックだったらしくガトーが力なく溜め息を吐いた。
「じゃあそれを取り返して来れば、作ってくれるんだな?」
「ああ、そりゃ構わねぇが……」
「急がなくては……行きましょう!」
言うが早いか、フィノは店を飛び出していく。
「ちょっとフィノちゃん、どこに行くかわかってるの?」
残る仲間も次々と出て行き、オグマとガトーだけになって。
「騒がしい連中だな。おめぇとはまるで逆だ」
「は……はい」
ククッと笑うガトーにオグマは身を縮こまらせる。
「……おめぇには丁度良いのかもしれねぇな。前よりはマシなツラになってやがるぜ?」
「あ……」
「頑張れよ」
ごつく大きな手が乱暴にオグマの肩を叩く。
叩かれた方はきょとんとしていたが、
「……はい」
照れ臭そうに微かな笑顔を見せて、仲間を追った。
一行はネグリート砦から引き返し、再びフォンダンシティに辿り着いた。
帰りの方がさくさく進めたのは彼等が強くなったのもあるが、新たな仲間が増えたから。
「ここがフォンダンシティ……煌めきの街、ですね」
「そうだ。ここで採れる蛍煌石を使って、障気の中を行けるようにするんだが……」
オグマはきょろきょろと辺りを見回し、古びた小さな店を見つける。
「蛍煌石を加工するには特殊な技術が必要だ。この街には鍛冶屋が多いが、それが出来る職人は限られている」
「あのぼろっちい店にそれがいるんかの?」
ミレニアの言葉に苦笑しつつ頷く。
「いかにも頑固なおじさまがやってます、って感じね」
「気に入らないヤツには何も作ってやらん、とかのぅ?」
頑固一徹な職人のイメージものまねをするとデューは呆れてじとりとミレニアに視線を送る。
「……あのなぁ、それじゃあ商売にならないだろ?」
「ふむ、それもそうかの」
などと言いつつ扉を開けると……
「おぅ、何の用だ」
凄まじい眼光に出迎えられた。
先程ミレニアが思い描いた姿とさほど違わず、頑固一徹な職人そのものといった男がそこにいた。
(これは……あながちはずれでもないかもよ?)
(た、確かにな……)
放たれる威圧にデューは我知らず息を呑む。
「用がないなら帰れ」
「ガトー殿、今日は依頼があって参りました」
「依頼?」
恭しく一礼するオグマをぎろりと睨む職人……ガトー。
(ガトーじゃと?……元王室付きの凄腕鍛冶職人じゃと聞いとるが、こんな所にいたとは……)
険しい顔つきは性格をそのまま表したようで、ごつごつと岩みたいな手は店の商品として置かれている繊細な装飾品を生み出すとはとても思えない。
そんな男がようやく作業の手を止め、こちらに近付いてきた。
「なんだ、誰かと思えばオグマじゃねぇか。そっちの連中は?」
「今の私の……仲間です」
そう言うと男は驚きに目を丸くして、一行を見渡す。
「仲間……何年もずっと山に籠ってたおめぇにか!?」
「言われとるの、引き籠もり」
「……面目ない」
ちょんと小突かれ、オグマはがくりと肩を落とした。
「そ、それで依頼を……」
「そりゃあ依頼と言われなくても祝いに何か作ってやりてぇが、そうもいかなくてな……」
困った様子で頭を掻くガトーに一行は顔を見合わせる。
「材料が足りねぇんだよ。蛍煌石の採掘は今年の分はもう終わっていてな」
「そんな、どうすれば……」
「……見たとこ訳アリみてぇだな」
話してみろ、と促されデュー達はこれまでの経緯をガトーに説明した。
障気に包まれた王都に向かうには蛍煌石を加工して作った装飾品が必要だ、と。
「山から出てきたと思ったら王都って……おめぇ、大丈夫なのか?」
「……決めた事、ですから」
揺るぎない決心をこめて強く頷くオグマにガトーは腕組みをして唸る。
「むむ、尚更協力してやりてぇんだがな……」
「何があったんじゃ?」
「……ドロボウだよ。ほんの少し留守にしていた隙に蛍煌石の塊を持って行かれた。ったく、マヌケな話だぜ……」
よほどショックだったらしくガトーが力なく溜め息を吐いた。
「じゃあそれを取り返して来れば、作ってくれるんだな?」
「ああ、そりゃ構わねぇが……」
「急がなくては……行きましょう!」
言うが早いか、フィノは店を飛び出していく。
「ちょっとフィノちゃん、どこに行くかわかってるの?」
残る仲間も次々と出て行き、オグマとガトーだけになって。
「騒がしい連中だな。おめぇとはまるで逆だ」
「は……はい」
ククッと笑うガトーにオグマは身を縮こまらせる。
「……おめぇには丁度良いのかもしれねぇな。前よりはマシなツラになってやがるぜ?」
「あ……」
「頑張れよ」
ごつく大きな手が乱暴にオグマの肩を叩く。
叩かれた方はきょとんとしていたが、
「……はい」
照れ臭そうに微かな笑顔を見せて、仲間を追った。