~蛍煌石を追って~
情報収集に適した場所といえば、人々が集まる酒場。
ここフォンダンシティの酒場は宿屋の一階にあった。
「いらっしゃいませ~でガス☆」
入っていきなり見覚えのある大男がお出迎え。
「……って、あれぇ?」
男はデュー達に気付くと、首を傾げた。
「確か王都に向かったんじゃ……こんな所で何をしてるんガスか?」
「それはこっちの台詞だ。なんでこんな所で働いている?」
デューが尋ねると清掃係らしい格好をした男……これまで二度デュー達の行く先で出会っている三人組の一人、ウォールは気まずそうに目を逸らした。
「そ、それは……」
「よくぞ聞いてくれた!」
やたら響く声はキッチンから聞こえてきた。
フライパンを華麗に操るのはコック姿のカシューだ。
そしてよく見ればホールで対応に追われているのはウエイトレス服のマカデミア。
「三人組が揃いも揃って……芸人から酒場の店員に転職したのかの?」
「違う! そもそも我らは芸人じゃなく旅の傭兵団だ!!」
カシューはキッチンから出てくるとパチン、と高らかに指を鳴らす。
すると両脇に残る二人が並び立つ。
「清掃のウォール!」
大柄な男がモップを片手に勇ましいポーズをとる。
「接客のマカデミア!」
妖艶な女性がメニューを構えセクシーに決める。
「キッチンのカシュー!!」
そしてリーダーらしく真ん中でフライパンを掲げてポーズをとるカシュー。
「「「三人揃って我ら漆黒の……」」」
「おーいお前らサボるなよー!」
「は、はい、すんませんっ!!」
店主らしき男が現れ、三人は慌てて仕事に戻る。
「まったく……ん? お客さんは……」
「はぁいマスター、おひさ☆」
ひらひらと手を振って挨拶するイシェルナを見た途端、店主の表情が変わった。
「あああ姐さんじゃないですか! ようこそいらっしゃいました!!」
「……知り合いか?」
「一人旅してた時に一度立ち寄ったのよん♪ でも覚えててくれたなんて嬉しいわぁ☆」
店主はイシェルナの言葉にぶんぶんと首を振る。
「忘れる訳がないじゃないですか……並み居る荒くれどもを潰して潰して潰しまくって、その屍の上に立つ姐さんの雄々しい姿を!」
一斉に仲間達の視線がイシェルナに集まった。
「……イシェルナ、何したんだ?」
「あはは~……呑み比べを少々★」
「姐さんの呑みっぷりはもはや伝説ですよ!」
どうやら彼女はかなりの酒豪らしい事が判明したが、今はそんな話をしている場合じゃない。
「……あの、ガトーさんの蛍煌石を盗んだ人を探さないと……」
おずおずとフィノが言う。
すると店主はぽんと手を打った。
「ガトーじいさんの、ね……それならたぶん町外れの盗賊団の連中ですね。最近特に調子に乗ってるみたいで、みんな困り果てているんですよ」
「その盗賊団はどこに行けば?」
「アジトがあるのは北東の森ですが、まさか盗まれた物を取り返しに行くとか……?」
「そうしないと先に進めないのよね~」
イシェルナがそう呟くと店内が俄かにざわついた。
「姐さんが盗賊団の連中に……?」
「いくら姐さんでも危ないんじゃないか?」
そう言うむくつけき男達は先程話題に挙がった呑み比べの敗者達だろうか。
酒場の伝説で一目置かれていても、相手が盗賊団となると不安らしい。
「平気よ、頼もしい仲間もいるんだし」
「ですが……」
「盗賊なんてまとめてのして踏んづけちゃうんだから☆」
と、イシェルナが笑顔で一蹴すると、周囲が今度は違う意味でざわついた。
「姐さんに、踏まれる……?」
「やばい何それ俺も踏まれたい……★」
あっという間に店内があやしい色に染まった。
「おい、こやつら何か道を踏み外そうとしてはおらぬか……?」
「ほ、北東の森だったな。情報感謝する。行くぞみんな!」
「は、はいっ!」
これ以上ここにいてはいけない。
そう判断したデュー達はそそくさと店をあとにした。
ここフォンダンシティの酒場は宿屋の一階にあった。
「いらっしゃいませ~でガス☆」
入っていきなり見覚えのある大男がお出迎え。
「……って、あれぇ?」
男はデュー達に気付くと、首を傾げた。
「確か王都に向かったんじゃ……こんな所で何をしてるんガスか?」
「それはこっちの台詞だ。なんでこんな所で働いている?」
デューが尋ねると清掃係らしい格好をした男……これまで二度デュー達の行く先で出会っている三人組の一人、ウォールは気まずそうに目を逸らした。
「そ、それは……」
「よくぞ聞いてくれた!」
やたら響く声はキッチンから聞こえてきた。
フライパンを華麗に操るのはコック姿のカシューだ。
そしてよく見ればホールで対応に追われているのはウエイトレス服のマカデミア。
「三人組が揃いも揃って……芸人から酒場の店員に転職したのかの?」
「違う! そもそも我らは芸人じゃなく旅の傭兵団だ!!」
カシューはキッチンから出てくるとパチン、と高らかに指を鳴らす。
すると両脇に残る二人が並び立つ。
「清掃のウォール!」
大柄な男がモップを片手に勇ましいポーズをとる。
「接客のマカデミア!」
妖艶な女性がメニューを構えセクシーに決める。
「キッチンのカシュー!!」
そしてリーダーらしく真ん中でフライパンを掲げてポーズをとるカシュー。
「「「三人揃って我ら漆黒の……」」」
「おーいお前らサボるなよー!」
「は、はい、すんませんっ!!」
店主らしき男が現れ、三人は慌てて仕事に戻る。
「まったく……ん? お客さんは……」
「はぁいマスター、おひさ☆」
ひらひらと手を振って挨拶するイシェルナを見た途端、店主の表情が変わった。
「あああ姐さんじゃないですか! ようこそいらっしゃいました!!」
「……知り合いか?」
「一人旅してた時に一度立ち寄ったのよん♪ でも覚えててくれたなんて嬉しいわぁ☆」
店主はイシェルナの言葉にぶんぶんと首を振る。
「忘れる訳がないじゃないですか……並み居る荒くれどもを潰して潰して潰しまくって、その屍の上に立つ姐さんの雄々しい姿を!」
一斉に仲間達の視線がイシェルナに集まった。
「……イシェルナ、何したんだ?」
「あはは~……呑み比べを少々★」
「姐さんの呑みっぷりはもはや伝説ですよ!」
どうやら彼女はかなりの酒豪らしい事が判明したが、今はそんな話をしている場合じゃない。
「……あの、ガトーさんの蛍煌石を盗んだ人を探さないと……」
おずおずとフィノが言う。
すると店主はぽんと手を打った。
「ガトーじいさんの、ね……それならたぶん町外れの盗賊団の連中ですね。最近特に調子に乗ってるみたいで、みんな困り果てているんですよ」
「その盗賊団はどこに行けば?」
「アジトがあるのは北東の森ですが、まさか盗まれた物を取り返しに行くとか……?」
「そうしないと先に進めないのよね~」
イシェルナがそう呟くと店内が俄かにざわついた。
「姐さんが盗賊団の連中に……?」
「いくら姐さんでも危ないんじゃないか?」
そう言うむくつけき男達は先程話題に挙がった呑み比べの敗者達だろうか。
酒場の伝説で一目置かれていても、相手が盗賊団となると不安らしい。
「平気よ、頼もしい仲間もいるんだし」
「ですが……」
「盗賊なんてまとめてのして踏んづけちゃうんだから☆」
と、イシェルナが笑顔で一蹴すると、周囲が今度は違う意味でざわついた。
「姐さんに、踏まれる……?」
「やばい何それ俺も踏まれたい……★」
あっという間に店内があやしい色に染まった。
「おい、こやつら何か道を踏み外そうとしてはおらぬか……?」
「ほ、北東の森だったな。情報感謝する。行くぞみんな!」
「は、はいっ!」
これ以上ここにいてはいけない。
そう判断したデュー達はそそくさと店をあとにした。