~東の神子姫~

 絢爛な中に荘厳な雰囲気を漂わせた王城の玉座の間にて。
 この国の王である老人は重い身体を起こし、手にした杖を掲げる。

「まだ、見つからぬのか……」

 その言葉に応えるのは、王の正面に跪く若い騎士。
 長く伸びた月白の髪に鋭い光を宿したカーマインレッドの瞳は切れ長で、端麗な容姿をした青年だ。

「……はっ。我々も総力を尽くしておりますが……」
「探せ! 何としても!!……うっ、」
「王!」

 勢いこんで怒鳴りつける王は、その拍子に思いっきり咳き込む。
 よろめいた上体はすかさず騎士が支えた。

「…………時間が、ない」

 老いた王は震える手を見下ろし、呟いた。




――その頃。


「うむぅ、地図の上じゃ近いのにぐるっと大回りじゃの~」
「あの橋がどれだけありがたかったかよくわかるわね」

 フォンダンシティを出た一行は地図とにらめっこしながら進んでいた。
 王都のある大陸の中心部は切り離されたように分かれており、以前破壊された橋以外ではぐるっと東へ回らなければ陸が繋がらない。

「ま、いつかは着くんだからいいでしょ? 今度は破壊される心配もないし☆」
「呑気だな……」

 楽観的なイシェルナの言葉に呆れるシュクルと頷くミレニア。

「まぁまぁ、この先にあるネグリート砦は東の大陸から来た人間も流れてくる。デューの記憶の手掛かりになるかもしれんじゃろ?」
「シュクル、諦めろ。オレもなんだか慣れてきた」
「な……慣れるなよ……余はまだ諦めぬからな!?」

 さして気に留めないデューに憤りを見せるシュクル。
 仲間達に確実に影響されつつある少年に後ろを歩くオグマが苦笑していた。
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