7.優しい秘密が知りたいの
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7-3
「怪我は?」
船に戻ってやはり船に戻っていたイゾウさんの第一声はそれだった。まっすぐに引かれた唇はやや不満げで、それは私に向けられているものではないけれど、離れてしまって悪かったな、と思った。でも謝ると「謝るのはお前ェさんじゃねえ」と言われてしまったからもう言えないけれど。
ちらっと横を見ると頭にたんこぶを重ねて涙目のエースさんが正座をしていて、その前には仁王立ちのマルコさん。
あの後、エースさんに腕を引かれ全力で走っていたらマルコさんが迎えに来てくれたのだ。空から腕を鳥のように変化させて降りてきたときはすごくびっくりしたけれど、とても揺らめく青がとても綺麗だった。聞けばマルコさんも能力者なのだとかで、とにかくもお怒り半分、呆れ半分ながらに私を背に乗せて船まで戻ってくれたのだ。ちなみにエースさんは「自力で戻れ」とその場で一発殴られて(すごい音がした)走って戻ってきた。
エースさんも私も怪我はないし大丈夫だとエースさんを援護したのだけれど、どうやらマルコさんとイゾウさんはすっきりしないようで。
どうしたものか、と苦笑いしていればぐいっとイゾウさんに腕を引かれた。
「……葉巻の匂いがするな」
「おわっ!?」
すん、と鼻を近づけられそういわれたかと思うと、バサバサと服をはたかれた。そのたびに着物の袂が揺れるから白檀の匂いと葉巻の匂いが混ざる。結構はたかれたが満足するまで匂いが落ちなかったらしく、イゾウさんはなぜか不満顔。
「店にでも入ったか?」
「いえ、たぶん人に会ったのでそれでですね」
人?と聞き返されたのでたぶん海軍の、と答えればばっと視線がエースさんへ。エースさんは言いづらそうに頬を掻いていて、でも二人の視線に耐えかねたのか口を開いた。
「野犬だ。白猟のスモーカーと、部下の女に会った」
「……はぁ、本当に馬鹿野郎だねい」
どうやら会って欲しくない人だったようで、マルコさんは額に手を当てて溜息をついた。
「会ったらまずかったですか?」
「基本的に海軍に会ってもいいことはねェからな」
イゾウさんも呆れているようだったが怪我がねえならまあいい、とぽすぽす私の頭を撫でた。
「やっぱり離れるべきじゃなかったな」
「休憩してますって言ったのは私ですから」
「担げばよかったぜ」
「やめてくださいよ……」
離れてしまったのはそれこそ私のせいだから気にしないでくれ、と言うつもりで言ったのに、そう言えばすぐに楽し気な笑みを浮かべて本気か冗談かを口にしてくるので困る。でもその冗談の後に「今度海軍に会ったときは一般人のふりをしろ」としっかり助言してくるところはイゾウさんらしい。
「ユリトちゃん!」
ぼすんと後ろから飛びつれて、たたらを踏んだ。飛びついてきたのはリサさんだ。
イゾウさんが支えてくれたから顔面から甲板に突っ込むことはなかったが、危なかった。身長差がかなりあるから支えるのは無理なのだ。
けがはない、と言えばリサさんはほっとした表情をした。かなり心配してくれていたようで、申し訳ないなと思えば「あなたが謝ることじゃないのよ」とまた言われてしまって思わず笑ってしまった。ここの船の人たちはみんな優しい。
「エース隊長が悪いんですからね!」
「悪かったって!!」
女は強しはこの世界にも共通なのか、ぷりぷりと怒るリサさんにエースさんは両手を合わせて必死に謝り倒している。リサさん曰く、女の買い物を邪魔した罪は重いのだそうで。いや、私は休憩してたんですけど、とは言わない。女が怖いのは女も同じだ。
「じゃあ、俺がお詫びに何かするから!!それで許してくれよ……」
三人から怒られて、さすがに参っているのか犬のようにしゅんとして、エースさんがそう言った。何が欲しい?肉か?と聞かれてリサさんにたたかれている。私も肉は遠慮したい。
「なんでもですか?」
「本人がそう言ってるんだからそうなんだろ」
なんでもと言われたら言われたで困るな、と苦笑いすればイゾウさんはうんと難しいことでも言ってやれ、と笑った。難しいことってなんだ。
一日じっとしてください、とかはきっとエースさんにはしんどいし、マルコさんは休めそうだけれど結局守られそうにないし、何もいらないはきっと本人が引かないだろうし。
しばらく考えていると、ぽっとヴァントさんのことを思い出した。ああ、そうか。これにしよう。
「エースさん、何でもいいんですよね」
「おう!いいぞ!!」
言ってみろ!と黒くてキラキラ光る目にごめんなさい、と謝りつつ、私は一つお願いした。
「私を親父さんに合わせてください」
「いいぞ!」と言うエースさんの笑顔と、ひきつった笑みを浮かべた三人が対称的だった。
「怪我は?」
船に戻ってやはり船に戻っていたイゾウさんの第一声はそれだった。まっすぐに引かれた唇はやや不満げで、それは私に向けられているものではないけれど、離れてしまって悪かったな、と思った。でも謝ると「謝るのはお前ェさんじゃねえ」と言われてしまったからもう言えないけれど。
ちらっと横を見ると頭にたんこぶを重ねて涙目のエースさんが正座をしていて、その前には仁王立ちのマルコさん。
あの後、エースさんに腕を引かれ全力で走っていたらマルコさんが迎えに来てくれたのだ。空から腕を鳥のように変化させて降りてきたときはすごくびっくりしたけれど、とても揺らめく青がとても綺麗だった。聞けばマルコさんも能力者なのだとかで、とにかくもお怒り半分、呆れ半分ながらに私を背に乗せて船まで戻ってくれたのだ。ちなみにエースさんは「自力で戻れ」とその場で一発殴られて(すごい音がした)走って戻ってきた。
エースさんも私も怪我はないし大丈夫だとエースさんを援護したのだけれど、どうやらマルコさんとイゾウさんはすっきりしないようで。
どうしたものか、と苦笑いしていればぐいっとイゾウさんに腕を引かれた。
「……葉巻の匂いがするな」
「おわっ!?」
すん、と鼻を近づけられそういわれたかと思うと、バサバサと服をはたかれた。そのたびに着物の袂が揺れるから白檀の匂いと葉巻の匂いが混ざる。結構はたかれたが満足するまで匂いが落ちなかったらしく、イゾウさんはなぜか不満顔。
「店にでも入ったか?」
「いえ、たぶん人に会ったのでそれでですね」
人?と聞き返されたのでたぶん海軍の、と答えればばっと視線がエースさんへ。エースさんは言いづらそうに頬を掻いていて、でも二人の視線に耐えかねたのか口を開いた。
「野犬だ。白猟のスモーカーと、部下の女に会った」
「……はぁ、本当に馬鹿野郎だねい」
どうやら会って欲しくない人だったようで、マルコさんは額に手を当てて溜息をついた。
「会ったらまずかったですか?」
「基本的に海軍に会ってもいいことはねェからな」
イゾウさんも呆れているようだったが怪我がねえならまあいい、とぽすぽす私の頭を撫でた。
「やっぱり離れるべきじゃなかったな」
「休憩してますって言ったのは私ですから」
「担げばよかったぜ」
「やめてくださいよ……」
離れてしまったのはそれこそ私のせいだから気にしないでくれ、と言うつもりで言ったのに、そう言えばすぐに楽し気な笑みを浮かべて本気か冗談かを口にしてくるので困る。でもその冗談の後に「今度海軍に会ったときは一般人のふりをしろ」としっかり助言してくるところはイゾウさんらしい。
「ユリトちゃん!」
ぼすんと後ろから飛びつれて、たたらを踏んだ。飛びついてきたのはリサさんだ。
イゾウさんが支えてくれたから顔面から甲板に突っ込むことはなかったが、危なかった。身長差がかなりあるから支えるのは無理なのだ。
けがはない、と言えばリサさんはほっとした表情をした。かなり心配してくれていたようで、申し訳ないなと思えば「あなたが謝ることじゃないのよ」とまた言われてしまって思わず笑ってしまった。ここの船の人たちはみんな優しい。
「エース隊長が悪いんですからね!」
「悪かったって!!」
女は強しはこの世界にも共通なのか、ぷりぷりと怒るリサさんにエースさんは両手を合わせて必死に謝り倒している。リサさん曰く、女の買い物を邪魔した罪は重いのだそうで。いや、私は休憩してたんですけど、とは言わない。女が怖いのは女も同じだ。
「じゃあ、俺がお詫びに何かするから!!それで許してくれよ……」
三人から怒られて、さすがに参っているのか犬のようにしゅんとして、エースさんがそう言った。何が欲しい?肉か?と聞かれてリサさんにたたかれている。私も肉は遠慮したい。
「なんでもですか?」
「本人がそう言ってるんだからそうなんだろ」
なんでもと言われたら言われたで困るな、と苦笑いすればイゾウさんはうんと難しいことでも言ってやれ、と笑った。難しいことってなんだ。
一日じっとしてください、とかはきっとエースさんにはしんどいし、マルコさんは休めそうだけれど結局守られそうにないし、何もいらないはきっと本人が引かないだろうし。
しばらく考えていると、ぽっとヴァントさんのことを思い出した。ああ、そうか。これにしよう。
「エースさん、何でもいいんですよね」
「おう!いいぞ!!」
言ってみろ!と黒くてキラキラ光る目にごめんなさい、と謝りつつ、私は一つお願いした。
「私を親父さんに合わせてください」
「いいぞ!」と言うエースさんの笑顔と、ひきつった笑みを浮かべた三人が対称的だった。