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Smoker

「飴の方が美味しいと思いますけど」

 そんなことを言ったのは中将の葉巻の本数が異常だった時だったと思う。私が遠回しに美味しくないと言った葉巻をふかしながら眉をひそめる中将に確か「まあ試しにどうぞ」とその無骨で大きな手に半ば無理やり飴玉を握らせたのだ。厳つい成人男性に、キャンディの包み。こんなに似合わないものはないな、と笑いそうになったのを覚えている。

 私がいつも腰に下げている小瓶の中でカラカラ音を立てるのは食べられるまあるい宝石。コロンと一つは口の中。きらきら色んな色を輝かせているそれは甘くて、じんわり体を溶かすような至福を与えてくれる。私は本当の宝石なんかよりよっぽど価値があると思うのだがどうだろうか。

 まあ、戦闘中に舐めているのは私もどうかと思うが。

 正面の男を切り捨てた瞬間後ろから悲鳴が上がり、見れば男が1人白煙に捕まっていた。

「ボケっとするな!!」

 白煙の中心にいる中将に怒られているのにどうしても上がってしまう口角。

コロリと舌で飴を転がした。

 中将は絶対に下っ端を捨てない。それがどう言うことか知らない人は多いけれど、それは私だけが知っていればいいことで。

 優しい白煙に援護されながら面倒な海賊達を出来るだけ一撃で仕留めていく。その最中に気づいた死角。きらりと鈍い嫌な光は私の至福を噛み砕かせた。

 響く銃声。ガラスの割れる高い音。

 中将の見開かれた目に割れたガラスと色とりどりの宝石が映っていて、ああ、とても綺麗だと思った。

「ご無事ですか、スモーカー中将」

 割れたのは飴玉が入っていた小瓶。弾丸が中将を狙っていると勘付いて、とっさにそれで受け止めたせいでまあるい宝石は四方に飛び散ったが、振り返って優しい白煙がそのままなことに安堵する。

「なんで庇った」
「おそらく海楼石の弾丸です」

 能力者をわざわざ死角から狙うということは十分そう考えられる。何か言いたげな中将だったが私に向けて口を開くことはなく「たしぎ!」と相方の名前を呼ぶと一瞬で残党を捕まえてしまった。

 全員捕縛し足元に散らばった飴玉をもったいないなと眺めているとふと落ちた影。中将だろうと顔を上げた瞬間口に何かを放り込まれて。ころり。

「…飴ですか?」
「毒を部下に盛ると思うか?」

 口に広がるのは甘酸っぱいレモンの味。いつか中将に渡した飴も確かレモン味だったような。ユラユラ揺れる葉巻の煙を見て、コロンと口の中で飴玉を転がした。

「やっぱり飴の方が美味しいと思いますね」

 そう言えば中将は葉巻をもみ消し、突然しゃがんだかと思えば、落ちていた飴玉を数個拾ってそのままぽいと口に入れた。
 がりがりと飴とそれ以外の砕ける音が。

「な、にやってるんですか…?」

 腹が減っていたのか、いやそんなはずない。食い意地が張ってるとも聞いていない。飴が欲しかったなら、今度あげますよ?と慌てる私の頭にぽすり。手袋を外した手の温度。

「いい動きだった」

 くれた言葉はそれだけだ。けれどそれは確かな賞辞。私はそれに「ありがとうございます!」と答えて、踵を返した中将を追いかけた。


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