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Shanks

「お揃いですね」

 そう笑った瞬間のお頭の顔と言ったら死んだ方が良かったかもと思うぐらいには怖かった。普段温厚な人が怒ると怖いというのは本当だというのはできれば身を持たずに知りたかったななんて。

「腕だけか」
「はい」

 どさどさ、と無意識に放っているのだろう凄まじい覇気で敵が倒れていくのに目もくれずお頭が私に確認をしつつぐっと布で止血をしてくれた。激痛が走りうめき声が漏れる。けれど、お頭には平気だと伝えたくてすぐに息を吐いて笑みを浮かべれば逆効果だったのかお頭の眉間にますますシワが寄ってしまった。

 激しい戦闘で左の二の腕から先が飛んだ。

 油断していたわけではないから実力不足。それに言い訳はない。正直痛すぎて気絶もできないし、脂汗は出るしで気分は最悪だが、お頭が来てくれたというだけでなにもかもどうでもよくて。

「お揃いですね」

 軽率にそう言ってしまったのは悪いと思う。けれどもそうでも言わなければ、私は弱いから、腕を、利き腕を失ってまで海賊ができる自信がなかったのだ。

 本当に死を覚悟するほどの殺気、いやむしろ静けさか。なんでもいいがとにかくめちゃくちゃ怖いお頭を止めたのは副船長だった。副船長はただ「お頭」と言っただけだったけれど、それで大きなため息とともに今にも殺されそうな空気は発散した。

 ほうっと無意識に息を漏らした私の頬を大きな手のひらが覆い、それに従って霞む目を必死にあげれば強い強い目に射抜かれて。私は、ああ、と思った。この船に、この人に命を預けて正解だったと。

 すっかり元の調子に戻ったお頭が、いつものようなニカッとした笑みを見せてくれて。

「片腕ねェと不便な事も多いが、無くてもなんとかなるもんだ」

 起きたら教えてやるよ、という言葉にやっとで私も屈託無く笑えば、トンと首に軽い衝撃。

「寝とけ」

 強くて優しい気遣いに逆らう理由などない。遠のく意識の中で私は再び気高く勇壮な赤に誓った。


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