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Shanks

その赤は高潔か

赤は高潔だ。

「ンなこと言うのはお前だけだぜ」

大笑いしながらお酒を煽るお頭は機嫌が良く、その髪とお揃いに頬も染めている。少し離れたところで副船長がため息をついているけれどまあ……飲むのはやめないだろうな。

「真っ赤な血みたいで気持ち悪りィと思う奴の方が多いんじゃねェか?」
「会って話してみれば酒好き女好きのただのオープンエロオヤジですけどね」
「だっはっは!」

酒場にいるのは幹部と私を含めた下っ端の何人か。久々の停泊。たまには羽を伸ばせとみんな自由に出かけているのだ。
お頭が羽を伸ばせ、というときは少人数で飲みたい時だ。つまり少し静かに飲みたいということを指すというのに、不敬にも外の気配が少し揺らめいたから立ち上がりかければ、すいっと横から手が伸びて来てそれを制した。

「少しぐらい名誉挽回ってな」

キザにもウインクを決めた瞬間、その動作に似つかわしくないほどエグい覇気が酒場を駆け抜け外へ飛んだ。一瞬の酒場の静寂。それを飾ったのは外でなにかが大量に倒れる音で。

「どうだ?惚れ直したか?」

なくなった気配に、無邪気な笑顔。酒で顔は真っ赤で褒めろ褒めろと言う雰囲気は子供のようなのに、腰に絡みついてくる腕は大人のそれで私はぺチリとはたき落とした。

「つれないな」
「そうですか?」

にやっと笑うお頭の髪を1束掬い取って口付ける。それからはたき落した手も掬い取って、その甲に軽くキスを。

「敬愛はしていますよ。これ以上ないほどに」
「ありがてェ話だが、やっぱりつれねェじゃねェか」

言いつつ「だっはっは!」と笑ったお頭が一瞬笑いを収めたかと思うと、素早く私の唇を掠め取った。

高潔な赤。それは彼の持つ、髪、唇、血、そしてそれを通わせている体。即ち彼の存在そのもの——彼に比べて私は強くもないし美しくもない。だから触れさせていなかったというのに。

温かい大きな手が頬を滑った。眼に映るのは余裕を纏った、こちらを挑発するような笑み。

「海賊に高潔は似合わねェよ」


だから早く染まっちまえ。


どぷんと赤に落とされた。「これでお前も真っ赤だぞ」とお頭は笑った。
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