Haruta
ごめん
「雨ってハルタくんに似合うね」
黄緑の合羽を着た彼女はくるりと振り返った。カエルがモチーフなのか、時折目元まで隠れるフードには口と目のような飾りが付いている。いい歳してそんな合羽、と思わなくもないがなんとなくまあいいかとも思えて。
「それって褒めてるの?」
「うーん、私としては」
「だとしたら君ってめちゃくちゃ褒めるの下手くそだよ」
「あはは!ハルタくんもね」
一歩踏み出せばぱしゃり。割と強く降っている雨は地面に溜まり水たまりができている。彼女は避けもせず、むしろ積極的にそこへ足を踏み出すからもう足元は泥だらけ。女の子なんだからもっと気にすればいいのにと思うが、この雨の中傘もささず、合羽も着ずに船を出てきた自分に言えたことではない。
どんよりとした空は僕の心の様だし、降り注ぐ雨はそれを徐々に流して行く様でちょっとムカつく。いや、そのために船から出てきたんだけどさ、冷静になればなるほど何してるんだろうって思って。
「頭冷えた?」
彼女がぱっとこちらを向いた。僕はため息ひとつ。
「君って本当にデリカシーないね」
「あった方が良かった?」
「ムカつくことに無い方が気持ち悪くなくていいよ」
「良かった」
ぱしゃぱしゃと音を立てて、彼女が僕寄ってきた。顔を覗き込むように見上げられたかと思えば、白くて小さな手がまるで小動物に触れるかのように優しく伸びてきた。雨で頬に張り付いていた髪をそっと指先で避けられてそれからゆっくりと濡れた頬を手のひらで包まれる。
「帰りましょう、隊長」
みんな待っています、と言う彼女の手を取る。ぎゅっと握れば彼女はちょっと驚いた顔をした。
「馬鹿面」
「それは隊長が……」
「隊長は手を繋いだりしないよ」
あーあ、怒られるのかなぁ。小言で終わってくれるかなぁ。くだらない口喧嘩の終わりはどんなものだろう。船に着くまでね、と歩き出した僕は少し憂鬱。でも、ぱしゃりと鳴った足元と、君の「はい!」と言う能天気な声にちょっとだけ笑った。
「雨ってハルタくんに似合うね」
黄緑の合羽を着た彼女はくるりと振り返った。カエルがモチーフなのか、時折目元まで隠れるフードには口と目のような飾りが付いている。いい歳してそんな合羽、と思わなくもないがなんとなくまあいいかとも思えて。
「それって褒めてるの?」
「うーん、私としては」
「だとしたら君ってめちゃくちゃ褒めるの下手くそだよ」
「あはは!ハルタくんもね」
一歩踏み出せばぱしゃり。割と強く降っている雨は地面に溜まり水たまりができている。彼女は避けもせず、むしろ積極的にそこへ足を踏み出すからもう足元は泥だらけ。女の子なんだからもっと気にすればいいのにと思うが、この雨の中傘もささず、合羽も着ずに船を出てきた自分に言えたことではない。
どんよりとした空は僕の心の様だし、降り注ぐ雨はそれを徐々に流して行く様でちょっとムカつく。いや、そのために船から出てきたんだけどさ、冷静になればなるほど何してるんだろうって思って。
「頭冷えた?」
彼女がぱっとこちらを向いた。僕はため息ひとつ。
「君って本当にデリカシーないね」
「あった方が良かった?」
「ムカつくことに無い方が気持ち悪くなくていいよ」
「良かった」
ぱしゃぱしゃと音を立てて、彼女が僕寄ってきた。顔を覗き込むように見上げられたかと思えば、白くて小さな手がまるで小動物に触れるかのように優しく伸びてきた。雨で頬に張り付いていた髪をそっと指先で避けられてそれからゆっくりと濡れた頬を手のひらで包まれる。
「帰りましょう、隊長」
みんな待っています、と言う彼女の手を取る。ぎゅっと握れば彼女はちょっと驚いた顔をした。
「馬鹿面」
「それは隊長が……」
「隊長は手を繋いだりしないよ」
あーあ、怒られるのかなぁ。小言で終わってくれるかなぁ。くだらない口喧嘩の終わりはどんなものだろう。船に着くまでね、と歩き出した僕は少し憂鬱。でも、ぱしゃりと鳴った足元と、君の「はい!」と言う能天気な声にちょっとだけ笑った。