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Haruta

<愛情表現>
※ほんのり現パロです

「ハルタ先輩おはようございます!大好きです!」
「はいはい、ありがとう」

満面の笑み。僕を見てぱっと華やぐ彼女。朝っぱらから校門で盛大な告白を受ける僕は適当な返事をしつつそこを抜ける。一緒に登校しているイゾウがため息をついているが僕は無視。

「彼女にぐらいちったァ愛想持たねえのかい」
「彼女を見てから言ってよね」

彼女は僕が返事をする限り、嬉しそうな顔をするのだ。試しに僕が一度振り返ってやれば、気づいた彼女がぱっと。僕はほらね、と横目で見てやった。花でも飛んでるんじゃないかと思うほど幸せそうな空気にイゾウは二度目のため息を落とした。言いたいのは「そうじゃねェ」といったとことろか。

踵を返して校内へと再び足を動かせば、おはようございます!と背中からまた声が。彼女は委員会の仕事なのか毎朝校門の前で挨拶をしてる。満面の笑みでの挨拶はどの生徒にも向けられるが、返事をしてだらしなく緩んだ顔が見られるのは僕だけ。
だって彼女は僕の彼女なんだから、僕だけなんて当たり前でしょ。

『ハルタ先輩好きです!付き合ってください!』

そう言われたのは4月2日。
彼女は剣道の部活のマネージャーで僕は部長。といっても僕は、部内では性格悪いとかきついとか生意気だとか言われてるような部長だから、彼女から告白される意味が分からなくて「エイプリルフールは終わったけど?」なんて返したのをよく覚えてる。そしたら彼女は「知ってます!だからです!」なんて言ってさ。だからって、だからなんだったのか僕も未だに知らないんだけど。

ちょっと馬鹿でぽわぽわ花を飛ばしてるような彼女。ちなみにマネージャーとしてはすっごく優秀。僕の何を見て好きだなんて思ったのか知らないけど、見る目なさすぎでしょ?

でもだから、僕は「いいよ」って告白を受けたんだよね。

だって可愛いでしょ。僕は嫌われ者。彼女は比較的人気者。きっと女同士で恋愛話した時に僕が好きだなんて言ったら反対されただろうに諦めなくて。
彼女は普通に可愛い部類の顔だからすこーし顔のいい男に告白されることもあったみたいだけどそれも断っていたらし。しかも断り文句は「ハルタ先輩が好きなので」だったなんて笑ってしまう。
言われた男の心は瀕死だよね。もしかしたら死んでたかも。だって好きな女の子がさ、嫌われ者で有名な男に取られるんだよ?でも力でもずる賢さでも敵わないから狸寝入りするしかないなんて、僕なら腹を切りたくなるね。

可愛くて健気、面白さもごーかく。

「俺達から見りゃあのお嬢さんにベタ惚れだって分かるけどな、お嬢さんには伝わってねェだろ」
「はは。余計なお世話だよ」

階段を登りつつ、イゾウのぼやきを笑い飛ばす。分かってないな。いや当たり前か。だって僕があの子の彼氏なんだもの。他の男より彼女のことが分かっているのなんて当然でしょ?

「愛情表現なんて人それぞれだよ。彼女は毎日小さな愛情をカゴいっぱいにくれる。でも僕はそれを自分でやるのはすっごくめんどくさいんだよね」

教室に入った僕はイゾウに「窓から彼女をみてて」と言った。
教室の窓からは校門が見える。もちろん彼女も。僕はスマホのメッセージアプリを開くと短くメッセージを送った。
送り先はもちろん彼女。スマホに連絡が来たのに気づいた彼女がメッセージを見た彼女のか、遠巻きでも分かるぐらいに慌てて、それからこちらに気づいたらしく、ぺこぺことお辞儀のようなことをし始めた。僕はくすくす笑って、満足したから席に着く。

「何を送ったんだ?」
「大したことじゃないよ」

そう言って見せた画面にイゾウは胸焼けしたとも言いたげな顔で「ごちそーさん」と言って僕に背を向けた。

あはは。やっとで分かったみたい。

愛情表現なんて人それぞれ。僕は毎日少しずつあげるのはめんどうだから、「ありがとう」と好意のお礼はその都度言って、僕からの気持ちは好きな時に、好きなだけあげるのだ。

『いつもありがと、僕もだーいすきだよ』

今日は少しだけ多かったかななんて、僕は少し笑った。
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