炎の記憶
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「さ、すけ……さすけ……」
一個下の運営委員の後輩の顔つきでは無い。
現実離れした、死線の淵を見てきた、傷だらけの魂を思い起こされる、そんな顔つきをしている。
佐助自身が記憶を取り戻して、顔馴染みと再び出会った時。それにこの朱音と初めて会った時にもひっそり抱いた『いつか記憶を取り戻してくれたら』という思い。
決して誰にも、打ち明けることはしなかったが、少しでもそんな願望を抱いたのがいけなかったのだろうか。
「……馬鹿…っ、何やってんの…」
咄嗟の言葉と裏腹に、あの浮ついた考えを後悔したくなる。
記憶の回復は想像以上に朱音を心身を蝕んだ。一度でも十分な壮絶な痛みにまた虐げられてしまった。
こんな思いをさせたくなかったと、泣きたい気持ちに押されるまま、佐助は朱音の頬に手を宛てがった。だから望んではいけないと、何度も考えてはいたのだが。
「またそうやって、ボロボロ泣いてさ…」
「泣いてません!……さすけ!」
懐かしい言い回しに、本当に記憶が戻ってしまったのだと実感していると、朱音がふらつきながら佐助に抱きついた。
そのまま声を上げて泣き出してしまい、佐助は身体を強ばらせながらも朱音を抱き締め返した。思い出さないよう、もっと己に出来る事があったのではないかと、後悔に苛まれる。
「さすけ、さすけ…!良かった…!会いたかった……っ」
「………!」
『会いたかった』
正気を取り戻して真っ先に口にしたのは、痛みの記憶を上回る程の想い。
血塗れの世界で、理性が崩壊するのを留めた存在………それが佐助であるのだと。
苦痛を超えてでも、それ以上に己の事を想い続けてくれていたのだと。佐助は朱音の背中に回した腕の力を少しずつ強めていく。
後悔に押し潰されそうな一方で、心がじんわりと疼く。
「………ああ。俺様も」
短い肯定の中には、言い知れぬ程長い長い時間を経た想いが宿る。
それはもう、目の前の大切な人に真っ直ぐに伝わる。