炎の記憶
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※16話 佐助視点
遠い視線の先に捉えた。
何気ない足取りで歩いていく朱音の姿が見えた。
だが振り返る事なく、一人で裏山に近い校門から出ていってしまった。
学園祭運営委員として後夜祭も取り仕切りの仕事があるはずだ。そうでなくとも、このタイミングで裏山の方へ行く理由があるとは思えない。
どうにも彼女らしくない違和感がある。この位置では声を張り上げても届かないため、佐助は走り出した。
*
部活のランニングで立ち入る事は度々あったが、日が沈んだ後に来るのは初めてだ。
背の高い木々が生い茂り、電灯も無い場所。
夜目の記憶を思い出すようにイメージすると比較的早く目が慣れた。
(ちょっとした思い出し恩恵、だね)
大して浸る間もなく、佐助は進み続ける。
夜目があってもこれだけ大きな山では見失いかねない。
耳を澄ませて音を探す。
音がする方へ、物音のする方へ。
人の足跡で踏み固められた道を辿りながら、視線を彷徨わせる。
ガサリ、と音が揺れた方へ視線を向けた。
その先に探していた姿があった。
道を少し外れた先に朱音が倒れていた。
木の葉が敷き詰まる上に顔まで伏せているが、細く呼吸をしているのがわかった。
「大丈夫?」
足早に近づいた佐助が声を掛けたが返事はない。朱音の身体を抱え起こすと、額に玉のような汗をかいており、表情は苦痛に染まっていた。
「……あつい、………、つ………」
うわ言のように漏れた言葉は真冬の夜とは正反対のものだった。
違和感が強まる中、朱音の意識を覚まそうと佐助は声を掛け続ける。
「妹ちゃん、……朱音、ちゃん…」
慣れない呼び名に舌心地が悪いがそうも言っていられない。激しく揺らさないように気をつけながら肩や額を叩くが、呻くばかりで意識は戻らない。
「………あ、つ…、……痛、い……」
寝言のような浮ついた口振りでは無い。今まさに炎の中にいるかのような声色に、嫌な予感が芽生えていく。佐助の焦りの感情が大きくなっていく。ジリ……、と懐かしくもおぞましい空気感に周囲が満たされていく。
剥き出しの生。生命の奪い合いの最中にいるような緊迫感。散々身に馴染んだものではあるが、それは記憶ので中の話だ。実際にこの場に敵はいないが、今にも襲いかかられそうなヒリつく感覚は確かに在る。
(まさか……、)
改めて意識を失っている朱音を見る。
嫌な予想が、嫌な感覚が、佐助の全身を支配していく。
「わたしが……殺、し……」
他に想定しようがない。
彼女から決して聞きたくなかった言葉をまた耳にした。
今すぐ起こさないといけない。取り返しがつかなくなる。
絶句している間に佐助の腕を、弾かれたように動いた朱音の両手が握るように押さえつけた。
ギリ、ギリ、と手加減のない、本気の圧迫がかけられる。
それでも意識は戻っていないようで、朱音は座り込む姿勢で佐助の腕をどんどん締め付けていく。平穏に日々を過ごしていればまず感じることのない激痛に思わず佐助の表情が歪む。
朱音の顔は伏したまま。だがその手から、気配から、紛れもない本物の殺意が流れ込んでくる。
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