遺された時間
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場がシンと、静まり返った。
硬直した朱音の頭に手を伸ばした幸村は穏やかに……愛おしげに撫でている。
「ちょ、ちょっと待ったぁああッ!お、お触り禁止ッ!」
突然明かされた事実の衝撃で動けなくなっている朱音の元へ、佐助が割り入った。
朱音の身体を己の方へ引き寄せるように幸村の手から離すと、恥じらう余裕もなくギュッ!と腕の中にしまい込んだ。
その様子を見るや否や、幸村は声を上げて笑い始めた。さながら狙った通りの反応が見られて満足そうだ。
「佐助が不甲斐無いようなら、今生は俺がそなたを護り抜こうぞ。心の端にでも留めておいてくれ…………これは冗談ではないからな、佐助」
「〜〜〜ッ……まじかよ……っ」
これでは立場が普段と逆転してしまっている。佐助はどう返したらよいか決めあぐねる内に、ついつい朱音を抱き締める力が強まっていく。
「さ、さすけ、はずかしい……」
「旦那の発言の方が恥ずかしいと思うけど!?」
「それもそうなのですが……!」
「若いな佐助ェ〜〜〜っ!」
「うっさいおじじ!」
腹を抱えてからかう幸村に、佐助は本気で殺意に近い感情を覚えるが、生命のやり取りの伴わぬ何とも平和な問題にどう出るべきかすぐに決められない。
腕に埋もれる朱音も同じく戸惑っているようだが、それでもそっと笑顔を浮かべ、佐助に気づかれないように身体を預けている。
春には『あんたを取られたくない』と余裕げに言ってみせたはずだが、この想定以上の恋敵?の出現に今は取り繕うゆとりがないようだ。
「それほど本気なのだろう?偽る事を得意とした忍が、今は見る影もないな」
「…………うっさ〜……」
「良き事よ。佐助がここまで弛んだのも、朱音のお陰だ。佐助を任せたぞ」
「は、はい!でも……幸村も、一緒がいいです……皆で、これからも…!」
「ちょっと!この流れでそれ言うのは駄目だろ!拗れるッ!」
「え?え??」
「許してやれ、朱音。こやつもまだまだお年頃なのだ」
「こっ……!覚えてろよホント……っ!」
…………と、なんとも賑やかな回顧となって、真の再会を果たした。
貫禄を備えてしまった『最年長』の幸村に、暫く2人は翻弄されそうだ。
戦の記憶を抱え生きていく。
逃れられぬ業は確かに、全員の魂に存在している。
きっかけがあれば、負の側面に引きずり落とされるリスクは今生常に付き纏うはずだ。
そうならないように、互いに寄り添い、息を合わせてこれからの人生を歩んでいく。
戦の世とはまた違った困難もこれから訪れるかもしれないが、心を明かせる相手がいればきっと乗り越えられると。
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