体育祭
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元転入生にとって初めてにして最後の体育祭は、準備期間から不測の事態が発生した事により疲れきってしまった。
うら若き者達からの好奇心を躱しながら、生徒会役員としての業務をこなし、クラスの選抜種目に応援合戦と盛りだくさんのイベントに律儀に全力で取り組んでいたら、いつの間にか全プログラムが終わり日が沈んでいた。
学園祭の時は忙しいながらも楽しいと感じる瞬間が殆どだったために、今回こんなにも苦労するとは思っていなかった。やはり己が生徒会役員を引き受けるのは分不相応だったのかもしれない。そう考えながら、一人で歩いていた所に声が割り込んで来た。
「さぷらーいず!………てね?」
顔を上げた先、夜の闇を照らす学園内の外灯に照らされた人物は想定外で、しかも学園指定のジャージを着て立っているものだから、また幻を見ているのかと思った。
呆然とする朱音の元に、ゆったりとした足取りで近づいてくる。
「話は聞いてるよ。俺様に相談してくれないなんて、……えーと、こういうのなんて言うんだっけ……あ!ジェラっちゃうぞ〜?」
「な、なぜ…しかも、その格好…」
「どんな方便使われたか知らないけど、ここでお待ちしてました〜お姫様?って呼ぶと怒っちゃうっけ?」
理解が追いつかない朱音を他所にいつもどおりの笑顔で話し続けるのは、この二日間何度も思い浮かべた相手だ。
こちらの事情はお見通し、得意げな表情と慈しみの眼差しがそう語っているようだ。
「さすけ…、」
「は〜い、俺様です。直接会うのは先月ぶりだね」
「こ、来ないで!来ちゃだめです!」
「はぁ?」
途端に手を突き出して制止の懇願をしてきた朱音に佐助は面食らう。かつては毎日顔を合わせていたのだから、ひと月でも今の感覚では十分久しい。それが余計に感情を波立ててしまうのだ。
朱音はまた俯いてしまい、喉がキュ、と締まりそうになるのを堪えながら意図を伝える。
「だ、だめ………学園でもう泣かないって決めてるんです……!今、さすけに会ったら……」
「えぇ〜?もう来ちゃったし…」
「そもそも、後夜祭の参加は学内関係者だけで、卒業生は含まれません…!そんな格好してても…!」
「ハイハイ、……ったく、相変わらずお堅いこって」
「だから来ちゃだめですって…!今は、ほんとに、」
笑って受け流しながら近付いてくる佐助に、朱音は距離を取り続ける。
ジリジリと攻防戦が続くが、おしゃべりさんな恋人は交渉を続ける。
「でも特別許可、降りてるんだなぁこれが」
「特別…?」
「間に合ったら超特例で後夜祭に来てもいいってさ」
「誰がそんな事…」
「なんと現生徒会長さん」
「は……!?」
予想外の名前が出てきて、思わず朱音の顔が上がる。疲労と驚愕が入り交じった顔付きに佐助は堪え切れず噴き出した。
「有り得ません、あの竹中さんがそんな…!」
「風来坊が聞いてくれたんだよ。おたくも心当たりがあるんじゃない?」
ポケットから取り出した端末を手首で揺すりながら説明する佐助。
熱中症の件以来、半兵衛とは殆ど会話をしていない。例の噂に過敏になっていたため必要最低限の報告だけして、後は避けるように行動してしまっていたというのに。
『初対面』の時から散々ギクシャクしてきた、他でも無い竹中半兵衛が…?と腑に落ちず、朱音の眉間に皺が寄る。だが確かに、音響の様子がおかしい気がするから確かめに行くようにと、グラウンドから離れる指示を出したのも彼だ。
「嫌がっていようが目の前の困ってる人間をほっとけない。でも気に入らない事には素直に怒る。ほんと、ド正直なんだから」
呆気に取られていると佐助が間近に来てしまった。朱音は尚も下がろうとするが…。
「ちょっと〜!まだ説得できないのかい、お忍び君!」
浮かれた大きな声が割り込んで来た。振り返るまでもないが、反射的にそちらを向くと、近くの植え込みの影に満面の笑みを浮かべた慶次がいた。肩に乗る夢吉も一緒に片手を口元に当てて、態とらしいポージングを取っている。
「しょーがないでしょ、この子ガンコなんだから」
「ったくloverの癖に甲斐性ねぇな」
「お、もう俺らも出ちまうのか?」
「まあまあ、これ以上長引くとキャンプファイヤーが終わってしまうからな。ちょっと巻いていこうか」
『ギュン!ギュンギューン!』
「そうですそうです!早くグラウンドに行かなきゃですよ、朱音ちゃん!」
「さっさとしろ、私も謙信様の元へ戻れないじゃないか」
「……佐助…」
「げぇ〜、なんか野次馬多くない?」
ひょいひょいひょいと、次々に木や建物の影から姿を見せた顔馴染み達に、佐助は苦笑し、朱音はビシリと凍り付いている。
政宗、元親、家康に忠勝、鶴姫、かすが……それに、幸村。今では日常の大切な友人達だ。
硬直している隙に後ろから抱き締めて、遂に佐助が朱音を捕まえた。必然朱音は引き剥がそうともがくが、諸々知ったる忍様相手に勝てるはずが無い。
公然ハグを目にした在校生の面々の反応は思春期相応それぞれに、大半はヒュー!と甲高い声をあげている。
「こ、こんな人前でっ!!」
「だって皆急げって言ってるしさ」
「いやーー!!破廉恥、この破廉恥ッ!」
「はいはい、旦那2号。さ、ちゃちゃっと踊りに行くぜ」
「な、ならここで!グラウンドには行きません!」