トザワ
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ぶつり、とまた一つ。
眠る少年に絡みつこうとした黒い影を蒼白い光が弾いた。
「大丈夫か〜い?お嬢さん」
「はい、わたしは大丈夫です!けど、ちびちゃんの熱が、やっぱり引かなくて…」
大雨の中を心許ない傘を共に歩く老人。その足元、薄暗い影の中からの返事は清純にして必死なものだった。
予想以上に若い姿をしていた生者とも死者とも取れる少女は、今は老人の影の中に座り込んでいる。その胸に抱えられた幼い少年は夜通し高熱に苦しんでいたそうで、老人に出会った頃にまた力尽きて眠りについている。
誰にも頼れず途方に暮れていたようだが、老人にひとまず助けてもらってからも、少女はずっと逼迫した表情で少年を抱きしめている。
大丈夫か、と老人が問いかけたのは複数の意味があった。熱が下がらない少年の事であったり、度々少年に絡みつこうとする死兆の影に蒼白い光で対抗している事であったり、そもそも常人では数瞬と持たないはずの『闇の者』の影の中に長らく潜っていて心身平気なのかなど、様々だ。
地上の人間からしたら大雨の中ひとりで歩く老人の姿しか見えず、影の中にいる存在と会話している様子は独り言のように見える事だろう。
「だいぶ外も明るくなってきたよ。道も整ってきてるし、その内人里に出られるかもしれんよ」
「ほ、本当ですか!?」
老人の希望的観測に、顔は見えずとも少女が安堵しているのがわかった。
訳の分からない存在だが、ひどく素直な反応ばかりだ。世間知らずの如く、得体の知れない老人へ誠意を持って接する少女に箱入り娘のような印象を抱く。
「もうちょっと歩いてみるよ。お嬢ちゃんは寒かったりしてないかい?散々濡れてただろ?」
「わたしは平気です!この中、真っ暗ですが全然寒くないので快適なんです。どうやっているんですか?」
「俺様はかっちょいい忍者だからね。所謂忍術ってやつさ、ニンニン!」
「すごいです!」
快適って感想は初めてだわ、なんて面白がる類の笑顔を浮かべる老人。蒼白い光を纏う少女は老人の忍術とやらに興味津々のようだ。
やはり推定死人しては清らかな気配を纏っている。
雨に紛れて再び老人の足元から潜り込んだ小さな邪影を、少年に届く前に少女の光が弾いた。
繰り手と思われる少女は無意識に行っているようだ。
朗らかな物腰とは対照的に、絶対なる『護り』の意思が瞬いているように老人には感じて取れた。