忘れ物の日
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「佐助、いるか?」
足音と共に、校門で待たせているはずの幸村の声がした。
忘れ物ひとつに時間をかけ過ぎたようだ。
扉を開けて幸村が武道場に入ってきた。
「旦那……」
「どうした、その様なところで立ち竦んで。手拭いはあったのか?」
「……あ、いや、これから更衣室取りに行くとこ。ちょっとぼーっとしてて……」
佐助の隣にいる朱音は幸村からは見えていないようだ。目配せをすると朱音は承知しているように頷いた。干渉は叶わなくても幸村の顔が見られて嬉しそうだ。
にっこり微笑んだまま、朱音の身体が透明に近づいていく。今回の無茶も限界のようだ。
「…っ、………、」
「どうした?やはり今日は調子が悪いのか?」
姿が見えていない幸村の前で会話をするのは良くない気がして、佐助はもどかしい思いに陥る。
『優しいんですから、本当に。ありがとうございます、さすけ』
緩やかに手を振りながら朱音の姿は完全に見えなくなった。
会いたい。待ってる。伝えたいことは全部言った。けれど最後まで一歩引いたような物腰は変わらなかった。心残りのようにズンと鈍い感情が疼く。
「ここで待っておれ。俺が見てくる」
狼狽えるような様子の佐助を心配した幸村が早足で更衣室へ向かい、すぐに手拭いを見つけて戻ってきた。
「ごめん……世話かけたね、旦那」
「家まで付き添おうか?近所であるし、」
「や、そこまでは……、……いや、今日だけ…お願いしようかな」
「うむ、いつでも遠慮無く頼れ!」
取り繕う事もなく、素直に項垂れる佐助の背中を幸村はトンと、軽く叩いた。
この真っ直ぐで何事も正面から受け止める変わらぬ性格に佐助は安心する。無闇に詮索せず、今はただ寄り添う幸村に改めて感謝する。
幸村が側にいるからこそ、佐助は一人あの時代の記憶を持っていても真っ当に生きていられる。だからこそ、もう少しくらいなら待ち続けようとも思うのだ。
***
「そういえば……夢…?の中で、わたしの髪、長かったような…」
リビングに出現した謎の枯葉達を兄と片付け、その後は特段変わりなく一日を過ごした朱音は寝る準備をしているところだ。
改めて今日の不思議な長い夢の様な出来事を思い返している。
ショートヘアを摘みながら小さな彼を思い出す。
「せめて一緒にほら穴まで戻りたかったな…、」
鮮明に覚えている夢に感情移入してしまう事は珍しくないが、夢特有の突然の目覚めに後味の悪さを感じずにはいられない。
また眠れば彼に会えるだろうか。彼に寂しい思いをさせてしまっているかもしれない。
「ちびちゃんに、また会えますように…!」
両手を合わせ枕元に祈ってから布団に潜った。